弁護士コラム

CAPMを使って株主資本コストを求める

ファイナンス
執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家

DCF法において、フリー・キャッシュフローを現在価値に割引く割引率は、加重平均資本コスト(WACC))を使用します。

WACC=株主資本コスト×Eレシオ+負債利子率×(1-t)×Dレシオ

 

投資のイメージ画像なお、WACCについてくわしくはこちら「WACC(加重平均コスト)とは、」をごらんください。

上記の式のパラメータにおいて、最も算出するのが難しいのが株主資本コストです。

この算出には、はっきり言って正解はないと思えます。

 

CAPM(キャップエム)とは

ファイナンスの世界では、一般には、CAPM(Capital Asset Pricing Modelの略で、「キャップエム」と呼ばれています。)が用いられています。

これは、簡単に言えば、「投資家はリスクが高いほど、期待(要求)するリターンが高い」という理論です。次の式で表されます。

株主資本コスト(rE)=リスクフリー・レート(R(f))+ベータ(β)☓マーケット・リスク・プレミアム(R(p))

 

以下、説明いたします。

指標名 説明
リスクフリー・レート(R(f)) リスクフリー・レートは、10年物国債利回りを使うのが一般的である。

 

ベータ(β) ベータは、個別資産の市場全体(マーケット・ポートフォリオ。TOPIXなど)に対する感応度をいう。

ベータは、ブルームバーグなどのサイトで、値が公開されている。

対象会社が非上場会社の場合、類似公開会社のベータ(β)を参考とする。

マーケット
リスク
プレミアム(R(p))
投資家の期待する株式に対するリスクプレミアム。

マーケット・リスク・プレミアムは、投資家が資金を安全な(リスクフリー)資産から、リスク資産に向ける際に要求する超過収益率のことを意味している。マーケット・ポートフォリオ(TOPIXなど)の期待利回りから無リスク資産の利回り(国債利回りなど)を差し引いて求める。

すなわち、国債よりどれだけ高い利回りを提供できるかを示すものである。

 

仮に、国債の利回りが2%、マーケット・リスク・プレミアムが4%であるとすると、β=1.5の資産の期待利回りは、以下のようになります。

2%+1.5×4%=8%

 

ここで注意が必要なのは、この8%は、これくらいのリスクを取れば8%程度の利回りが期待されているにすぎず、この利回りが保証されているわけではないということです。

 

 


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