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旭川医大にのみ約14億円の賠償責任ー電子カルテシステム納入遅延訴訟

IT法務

旭川医大にのみ、約14億円の損害賠償を認める

札幌高裁は、8月31日、旭川医大への電子カルテシステム納入が遅れたことを巡り、旭川医大(発注者)とNTT東日本(受注者)が互いに損害賠償請求をしていた事件で、一審判決を変更し、旭川医大にのみ約14億円の支払いを命じました。

第一審(旭川地裁平成28年3月29日判決、平成23年(ワ)99号)では、「本件プロジェクトが頓挫するに至った大きな要因は、開発工数が被告の処理能力を超えていたという点」にあるとし、「今後一切の開発要望を出さないことを意味する」「仕様凍結合意の後に」旭川医大が開発要望を出したことは、この合意に反すると認定していました。

しかし、「そもそもシステム開発過程においては、ユーザ側から、本来ベンダが開発義務を負うものではない項目について開発(カスタマイズ)が要望されることはしばしばみられる事態である。」としたうえで、「システム開発の専門業者である」NTT東日本としては、「自らの処理能力や予定された開発期間を勘案して、これを受け入れて開発するのか、代替案を示したり運用の変更を提案するなどして」旭川医大に開発要望を取り下げさせるなどの適切な対応を採って、開発の地帯を招かないようにすべきであ」って、NTT側が「その責任の大半を負うべきものである。」と結論付けていました(もっとも、過失相殺を認め、旭川医大:NTT=2:8)。

裁判所これに対し札幌高裁は、「医大が契約や合意に反し、大量の追加要望を出したことでシステム開発が遅れた」としてNTT側の責任を否定し、「医大はシステムがほぼ完成していたのに、一方的に解除した」として、医大側の請求を棄却しました。

第一審の認定事実によると、旭川医大は、本件のプロジェクトは平成21年9月24日の運用開始を目標に、平成20年11月以降から検討が行っていたものの、平成21年3月になった時点でもカスタマイズの要望を出しており、さらに仕様凍結合意がなされた同年7月7日以降にも開発要望を出し続けていたようです。

 

システム開発においての注意点

IT企業

システム開発を行うにあたり、ベンダとユーザとの間には協力義務があります。

協力義務についてはこちらをご参照ください。

システムの構築に関する技術的なことは専門家にしかわからないものですが、ユーザはどのようなシステムを求めるのか、それが可能なのか、ユーザもベンダに対して十分配慮しなければなりません。

大病院の電子カルテなど、病院経営を支える根幹にも関わるシステムの導入については、病院内で足並みを揃えることが重要かつ容易ではない課題だったといえます。

裁判所の民事手続きもIT化が開始されましたが、大規模な新システムの導入時には、ユーザ側の負担(いわゆる「慣れが必要」といった類のもの)はやむを得ないものでしょう。

裁判所の民事手続きのIT化についてはこちらをご覧ください。

現時点では、旭川医大が上告するのか明らかではありませんが、今後の動向に注視しておく必要があります。

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