取締役を解任したい【弁護士が解説】

  
監修者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家


取締役の解任とは

解任って何?辞任や退任とどう違うの?

「取締役の解任」とは、会社が取締役を任期の途中で辞めさせることをいいます。

取締役のやめ方には、「退任」、「辞任」、「解任」の3種類があります。

「取締役の退任」は、取締役が任期を最後まで満了して、取締役の役目を終えることをいいます。任期が満了した取締役は、自動的に取締役でなくなります。

「取締役の辞任」とは、取締役が任期の途中で自発的に取締役を辞めることをいいます。

これらに対し、この記事で解説する「取締役の解任」とは、会社の方が取締役を任期の途中で辞めさせることをいいます。

 

取締役の任期って何?

上の解説の中に取締役の「任期」という言葉が出てきました。

取締役の「任期」とは、取締役のタイムリミットです。

どんな取締役にも任期があり、任期が切れるとその人は取締役でなくなります(これが、上記で説明した「退任」です。)。

取締役の任期は、通常は選任の日から2年間(※1)です。ただし、会社の定款でもっと短い任期を定めていたり、会社によっては任期が10年になっていたりすることがあります。

いずれにしても、ほとんどの場合、取締役の任期は会社の定款に明記されています。

まずは自社の取締役の任期を知るために会社の定款を確認してみましょう。

(※1) もっと正確にいうと、取締役の任期は原則「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」です(会社法332条)。

 

取締役の辞め方のまとめ

取締役の退任
取締役が任期を最後まで務めて取締役の役目を終え、自動的に取締役でなくなる
取締役の辞任
取締役が任期の途中で自発的に取締役を辞める
取締役の解任
会社の判断で、取締役を任期の途中で辞めさせる

 

取締役の解任は「いつでも」できる!

取締役の解任は、株主総会の決議によって「いつでも」することができます。

取締役の「退任」は、取締役の決められた任期が満了したときにだけ発生します。

取締役の「辞任」は、取締役のほうから「辞める」と言ったときにだけ発生します。

しかし、「取締役の解任」は「いつでも」可能です。

会社が取締役を解任したいときは、どんなタイミングでも、「取締役の解任」をすることによって取締役を辞めさせることができます。

優秀な人材だと思って会社の取締役になってもらった人なのに事業遂行の能力がまったくないことが明らかになった場合や、取締役が不祥事を起こしてしまい会社のビジネスに悪影響が出そうな場合など、会社として、その取締役を今すぐに辞めさせたい場合があります。

このような場合は、会社は、取締役の解任を検討することになります。

 

取締役の解任の手続・流れ

取締役を解任したい!どうすればいい?

取締役を解任するには、株主総会を開いて、解任したい取締役について「解任の決議」をします(会社法339条1項)。

 

法律のルールにしたがって手続を進める!

株主総会で「取締役の解任の決議」をすれば、会社は取締役を解任する(=辞めさせる)ことができます。

ただし、法律のルールをきちんと守って手続を進めることが大切です。

もし、解任の決議までの手続に不備(不備のことを法律用語で「瑕疵(かし)」といいます)があると、解任が無効になるリスクがあります。

以下で、取締役の解任の決議までの流れを解説します。

 

取締役の解任の決議までの流れ

※株式会社には、取締役会がある会社と、取締役会のない会社があります(取締役会のある会社を「取締役会設置会社」といいます。)。

上記の流れは、取締役会のある会社を想定しています。取締役会のない会社の場合は、手続に少し違いがあります。

詳細については、会社法に詳しい弁護士にご相談ください。

 

 

取締役の解任の決議までの流れ―STEP1 取締役会を招集する

取締役の解任をするためには、株主総会で「解任の決議」を成立させることがゴールになります。

そのゴールに向けた第一歩として、まず、取締役会を招集することから始めます。

 

取締役会の招集手続

取締役会の招集手続は、会社法に定めるルールに沿って行いましょう。

とは言っても、特別なことは必要ありません。

普段から定期的に取締役会を開催している会社であれば、取締役の解任に向けた取締役会の招集も、普段から会社で行っている取締役会の招集と同じ手続で問題ありません。

以下は、取締役会の招集の標準的なルール(会社法で定められたルール)です。

会社法のルールによる取締役会の招集手順
誰が招集するか

会社法の標準ルールでは、取締役であれば誰でも招集手続を行うことができます(会社法366条)

ただし、一般には、会社の定款の中で取締役会の招集手続を行う取締役が定められていることも多いです。

このように定款で取締役会の招集手続を行う取締役が定められているときは、その取締役が取締役会を招集します。

 

招集の方法

取締役会を招集する取締役から、取締役全員に(監査役がいる場合は監査役にも)招集通知を送ります。

きちんと招集通知を送ったことが後々まで証拠に残るように、メールや手紙で送るのがベターです。

 

招集通知に記載する内容

取締役会の開催日時と場所を記載します。

取締役会の議題を記載する必要はありません。

例えば、「〇〇年〇〇月〇〇日〇〇時〇〇分から、当社本店会議室で取締役会を開催しますのでご出席ください」のようなもので構いません。

 

招集通知はいつ送ればよいか

取締役会の招集通知は、取締役会の開催日の1週間前までに発送する必要があります(会社法368条1項)。

この「1週間前」は、招集通知の発送日と取締役会の開催日の間に丸1週間あることをいいます。

例えば、火曜日に取締役会を開催したい場合、招集通知は、その前の週の月曜日までに発送する必要があります。

このようにすると、招集通知の発送日から取締役会の開催日までの間に、火曜日(発送日の翌日)から次の週の月曜日(開催日の前日)までの丸1週間があることになるからです。

 

アレンジされた招集手順に注意!会社の定款を読もう!

上記は、会社法による標準的な取締役会の招集手順です。

ただし、会社によっては、招集手続に独自のアレンジを加え、上記のような標準的なルールとは少し異なるルールを設けていることがありますので注意が必要です。

ほとんどの会社では、会社の定款(あるいは取締役会規則)に取締役会の招集の方法が記載されているはずです。

まずは、会社の定款や取締役会規則を確認してから、取締役会の招集を行いましょう。

 

解任の対象となる取締役にも招集通知を送りましょう!

取締役会の招集通知は、解任の対象となる取締役に対しても、きちんと送付しなければなりません。

解任の対象となる取締役であっても、株主総会で解任決議が成立するまでは取締役ですから、取締役会の招集手続も他の取締役と同じ扱いをすることになります。

解任の対象になる取締役を招集手続から除外すると、手続の瑕疵(「かし」と読みます。手続の不備のことです)となり、取締役の解任が無効になる可能性が出てきますので、注意が必要です。

 

 

解任の決議までの流れ―STEP2 取締役会を開き、臨時株主総会の招集を決議する

STEP1で取締役会の招集手続が無事に終わったら、次は取締役会を開催しましょう。

この取締役会で決議することは、「取締役の解任の決議をするための臨時株主総会を招集する」ことです。

取締役会の決議を行うためのポイントは次のとおりです。

 

取締役・監査役が取締役会に出席する方法

取締役は、取締役会が行われる場所に実際に来ることによって取締役会に出席します。

ただし、zoomなどのオンライン会議で参加することでも出席になります。

オンライン会議で出席する取締役がいるときは、取締役会の議長が、その取締役とオンラインで問題なくコミュニケーションが取れること(つまり、その取締役が実際に会場に来た場合と同等のコミュニケーションが取れること)を確認しましょう。

 

定足数の取締役の出席

「定足数」(ていそくすう)とは、取締役会が成立するために最低限必要な取締役の出席人数です。

取締役会を開こうとしても、そこに出席した取締役の人数が定足数より少なければ、そもそも取締役会を開催できません。

会社法のルールでは、取締役会の定足数は「議決に加わることのできる取締役の過半数」とされています。

定足数のカウントは少し難しいので、例を用いて説明します。

 

例1:取締役が5人いる会社の場合

この場合、取締役の数は5人で、定足数はその「過半数」ですから、定足数はその半数(2.5人)より多い人数、つまり3人ということになります。

この会社では、取締役会を開催するためには、3人以上の取締役が出席しなければならない、ということです。

取締役が1人または2人しか出席しない場合、取締役の出席人数が定足数を下回っていますから、取締役会そのものが成立しないことになります。

 

例2:取締役が4人いる会社の場合

この場合、取締役の数は4人で、定足数はその「過半数」ですから、定足数はその半数(2人)より多い人数、つまり3人ということになります。

定足数は取締役の「過半数」ですから、ちょうど半数ではダメなのです。

したがって、取締役が4人いる会社では、取締役会を開催するためには3人以上の出席が必要です。

出席人数が2人の場合、出席人数が「過半数」に足りていませんから、取締役会そのものが成立しないことになります。

このように、定足数のカウントは取締役会を成立させるために重要な意味を持っています。

会社としては、取締役が確実に出席するように、取締役と事前にしっかりとコミュニケーションをとっておくことが大切です。

なお、監査役は定足数のカウントには含まれません。

また、取締役会は、委任状による出席(後で株主総会の部分で説明します)は認められません。

 

取締役会の決議

定足数以上の取締役が出席し、取締役会を開催することができたら、その取締役会で「臨時株主総会の開催」を決議します。

取締役会の決議は、取締役会に出席した取締役の「過半数」が賛成すれば成立します(会社法369条1項)。

ここでは、取締役会に欠席した取締役は計算に入れません。

あくまで、取締役会に出席した取締役だけを対象として「過半数」を考えることに注意が必要です。

こちらも例で考えてみましょう。

 

例1:取締役が5人いる会社で、取締役会に3人の取締役が出席した場合

まず、定足数が足りているかどうかを見ます。

取締役の数が5人で、定足数はその「過半数」ですから、3人以上が出席していれば定足数はOKです。

この例では、3人の取締役が出席していますから、定足数は足りています。したがって、無事に取締役会を開催できます。

次に、取締役会の決議を成立させることを考えましょう。

取締役会の決議を成立させるには、出席した取締役の「過半数」が賛成すればOKです。この例では、会社全体の取締役の数は5人ですが、取締役会に実際に出席した取締役は3人です。(あとの2人は欠席ということになります。)

したがって、出席した取締役3人の「過半数」、つまり2人以上が賛成すれば取締役会決議を成立させることができます。

 

取締役会議事録の作成

取締役会で「臨時株主総会の開催」の決議が成立したら、取締役会議事録を作成します。

当事務所は、取締役会議事録のサンプル・雛形をホームページ上に公開しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。ぜひ、参考にしてください。

あわせて読みたい
企業法務に関する書式集
取締役会議事録作成のポイント
会社法では、取締役会を開催したら、どんな場合でも必ず取締役会議事録を作成することになっています。
取締役会議事録の作成は、普段であればあまり気にとめない単純作業かもしれませんが、取締役の解任のような紛争をはらんだケースでは、特に気を付けて正確な議事録を迅速に作成しましょう。
なぜならば、取締役会議事録は、会社が取締役の解任に向けて、会社法に基づき瑕疵(かし。不備のこと)のない手続を進めたという強い証拠になるからです。

 

 

解任の決議までの流れ―STEP3 臨時株主総会を招集する

STEP2で取締役会の「臨時株主総会の招集」の決議が成立したら、いよいよ臨時株主総会の開催を目指します。

この臨時株主総会で、取締役の解任の決議をするわけです。

まずは、株主総会の招集をしましょう。

株主総会の招集は、STEP1で行った取締役会の招集と比べて要件がやや厳格になっていますので、注意しながら進めてください。

以下は、株主総会の招集の標準的なルール(会社法で定められたルール)です。

 

会社法のルールによる株主総会の招集手順
誰が招集するか

株主総会の招集は、取締役が行います(会社法299条1項)。

会社法のルールでは、どの取締役が招集してもかまいません。

ただし、定款に株主総会を招集する取締役が定められているときは、その取締役が行います。

 

招集の方法

株主全員に、書面による招集通知を送ります。

取締役会の招集通知と違い、株主総会の招集通知は書面(紙に印刷したもの)を用意し、これを株主に送付するのが原則です(会社法299条2項)(※2)。

 

招集通知に記載する内容

(1) 株主総会の開催日時と場所、それに加え(2)株主総会の目的である事項を記載します。

「目的である事項」とは、株主総会の議題のことです。

この場合は、「取締役〇〇の解任」と記載します。

このように、取締役会の招集通知と違い、株主総会の招集通知には議題を記載する必要がありますのでご注意下さい。

株主総会の招集通知の記載要領についても、よくご相談を受けます。

このサンプルもホームページ上に公開しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。ぜひ、参考にしてください。

 

招集通知はいつ送ればよいか

株主総会の招集通知は、原則として、株主総会の開催日の2週間前までに発送する必要があります(会社法299条1項)(※2)。

この「2週間前」も、招集通知の発送日と取締役会の開催日の間に丸2週間あることをいいます。

※2 会社の種類や運営方法によって、例外もあります。会社の定款に規定があるはずですから、まずは定款を確認しましょう。

以上が会社法のルールに基づく株主総会の招集手続です。

一般には、会社の定款にも株主総会の招集手続が書かれていることが多いです。

定款で、会社法のルールと違う手続を定めている会社も珍しくありません。招集手続を行う前に、会社の定款も確認しましょう。

判断に迷うときは、株主総会の運営に詳しい弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。

 

 

解任の決議までの流れ―STEP4 臨時株主総会を開き、取締役の解任の決議をする

さて、いよいよ臨時株主総会です。

この臨時株主総会で取締役の解任を決議します。

臨時株主総会の開催に関するポイントは、次のとおりです。

 

株主総会の5つのポイント

株主の出席・投票方法

株主は、株主総会が行われる場所に実際に来ることによって株主総会に出席し、株主総会の場で議題に対して投票を行うのが原則です。

ただし、実務上は、委任状による出席も一般的に行われています。

「委任状による出席」とは、株主がある人物を代理人と定めて、その代理人に自分の代わりに株主総会に出席してもらい、投票をしてもらうことをいいます。

一般には、会社が株主にお願いし、会社の代表取締役を代理人とする委任状を作成してもらうことが多いです。

株主から会社の代表取締役を代理人とする委任状を作成してもらえば、株主総会の場において、会社の代表取締役がその株主の代わりに投票することができます。

このようにすれば、委任状を提出した株主の議決権(投票する権利のことです)を会社の代表取締役が行使できますから、会社が提案した議題を確実に可決することができます。

 

株主総会の定足数

株主総会にも定足数があります。

取締役会では、定足数のカウントに取締役の頭数(人数のことです。)を使いました。

しかし、株主総会の定足数は、株主の頭数(人数)ではなく、議決権の数を使います。

この点が、株主総会と取締役会との違いです。

取締役の解任の決議を行う株主総会の定足数は、「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数」です(会社法341条)。

「議決権を行使することができる株主」とは、多くの場合、すべての株主のことです(例外もあります)。

株主総会の定足数のカウントは少し複雑なので、次の例を使って説明します。

株主 議決権の数
A 100
B 200
C 500
合計 800

 

表のように、3人の株主(A、B、C)がいる株式会社を例とします。

A、B、Cは全員が株主ですが、持っている議決権の数がそれぞれ違います。Aは100個、Bは200個、Cは500個の議決権を持っています。

このケースで、株主総会の定足数はどのようにカウントすればよいでしょうか。

株主総会の定足数のカウントには、株主の頭数(人数)は使いません。株主の議決権だけを使います。

この会社の場合、株主の議決権の数は全部で800個です。

したがって、「過半数」は401個となります(「過半数」の考え方については、取締役会決議の部分をご参照ください)。

つまり、株主総会に出席した株主が持っている議決権の数を合計して401個以上以上であれば、株主総会を開催することができます。

例えば、AとBだけが株主総会に出席し、Cが欠席した場合、出席したAとBの議決権の数は2人分を合計しても300個ですから、過半数(401個)には足りません。

したがって、株主総会は開催できないことになります。

3人の株主のうち2人が出席していても、議決権が足りないので株主総会は開催できないことになるのです。
逆に、株主総会にCひとりが出席し、AとBが欠席した場合には、出席した株主の議決権の数は500個ですから、過半数(401個)を上回っています。

この場合には、株主総会に出席した株主がたった1人ではありますが、株主総会を開催できることになります。

 

株主総会の決議

定足数以上の株主が出席し、株主総会を開催することができたら、その株主総会でいよいよ「取締役の解任」を決議します。

株主総会で取締役の解任を決議するためには、「株主総会に出席した株主の議決権の過半数の賛成」が必要です(会社法339条1項、309条1項)。

株主総会の決議のカウントも、定頭数(人数)ではなく、議決権の数を使います。こちらも複雑なので、例をつかって説明します。

株主 議決権の数
A 100
B 200
C 500
合計 800

先ほどと同じく、3人の株主(A、B、C)がいる株式会社を例とします。株主はA、B、Cの3人で、Aは100個、Bは200個、Cは500個の議決権を持っています。

株主総会で取締役の解任を決議するために必要なのは「株主総会に出席した株主の議決権の過半数の賛成」です。

株主A、B、Cの3人全員が出席した場合を考えてみます。

A、B、Cの全員が出席していますから、「株主総会に出席した株主の議決権」は、800個になります(100+200+500)。

取締役の解任の決議には、この800個の議決権の過半数が必要です。

つまり、401個以上の議決権が賛成すれば、取締役の解任決議を成立させることができます。

例えば、株主総会の場でA(議決権100個)とB(議決権200個)が取締役会の解任決議に反対票を投じ、C(議決権500個)だけが賛成票を投じたとします(※3)。

この場合、出席株主の議決権800個のうち、反対の議決権が300個、賛成の議決権が500個ですから、賛成の議決権が「株主総会に出席した株主の議決権」の半数(400個)を超えて、過半数になっています。

したがって、取締役の解任決議は無事に成立となります。

3人の株主のうち、AとBの2人が反対し、C1人が賛成しているので、人数だけに着目すると反対派の方が多いですが、株主総会の決議は頭数(人数)によって行うのではなく、議決権を使って行いますので、このようなことが起きるのです。

会社としては、株主総会を開催する前にあらかじめ議決権の過半数を持つ株主を味方につけておけば、安心して株主総会を迎えることができます。

上で説明した委任状出席の方法を活用して、事前に議決権の過半数を持つ株主から代表取締役を代理人とする委任状を集めておくのがよい方法です。

※3 議決権の不統一行為は想定していないものとします。

 

株主総会決議の定足数や決議の特別ケースに注意!

株主総会の開催に必要な定足数の考え方や、株主総会決議の成立に必要な議決権の考え方の基本ルールは上記で説明したとおりです。

しかし、会社によっては、上記の標準的なルールとは異なる特別なルールが適用される場合がありますので注意が必要です。

ここでは、特別なルールの一例を簡単にご説明します。

どのような場合に特別なルールが適用されるのか、また特別なルールが適用される場合にはどのように手続を進めるのがよいかの判断は少し複雑ですので、株主総会に詳しい弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。

株主総会の定足数の特別ルール
会社によっては、株主総会の定足数が「過半数」ではなく、過半数より多かったり少なかったりすることがあります(会社法341条)。
株主総会決議の特別ルール
株主総会決議についても、会社によって、株主総会決議の成立に必要な議決権の数が「過半数」ではなく、過半数より多かったり少なかったりすることがあります(会社法341条)。
また、累積投票という方法で選ばれた取締役を解任するときは、株主総会の「特別決議」という特別な株主総会が必要になります(会社法339条1項7号、342条)。
株主総会の特別決議は、普通の決議よりも要件が厳しい株主総会決議のことで、一般には、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要になります。
このケースの場合は、取締役の解任が難しいといえます。

 

特別ルールの有無を知るには会社の定款や議事録を確認!
このような特別ルールが適用されるかどうかの判断は、まず定款や過去の株主総会議事録を確認することが必要です。
法律的な専門知識が細かい部分まで必要とされる判断ですので、会社の定款や議事録を弁護士に見せて専門的なアドバイスをもらうのがお勧めです。
株主総会議事録の作成

株主総会で「取締役の解任」の決議が成立したら、株主総会議事録を作成しましょう。

株主総会議事録の記載要領についてもホームページ上に公開しております。

あわせて読みたい
企業法務に関する書式集

株主総会議事録も、会社が取締役の解任に向けて、会社法に基づき瑕疵(かし。不備のこと)のない手続を進めたという強い証拠になります。

普段から日常的に作成する書類ではありますが、取締役の解任のような紛争をはらむケースでは、迅速に確実に作成しておくべきです。

 

取締役の解任が完了!

以上が標準的な取締役の解任の手続です。手間のかかる道のりですが、1ステップずつ着実にクリアしていくことが大切です。

なお、会社の規模や状況、定款の作り方の違いによって、ここで説明した標準的な手続と比べて、細かい点が異なったり、もっと簡単な手続をとることができたりする場合があります。

少しでも不安があるときは、取締役の解任について豊富な経験を持つ弁護士にアドバイスを求めることをお勧めいたします。

 

 

取締役の解任を登記する

さて、無事に取締役の解任をすることができました。

しかし、まだここで安心はできません。無用なトラブルの発生を避けるため、臨時株主総会で取締役の解任を決議したら、迅速に取締役会の登記をしましょう。

登記って何?

登記(「とうき」と読みます。より正確には、会社に関係する登記は「商業登記」といいます。)とは、会社の情報を法務局に登録することです。

日本にある会社はすべて、会社の名前は何か、会社の取締役は誰か、監査役は誰か、資本金は何円か、本店の所在地はどこかなど、会社に関する情報を法務局に登録しなければなりません。この登録のことを「登記」といいます。

登記された会社の情報は、法務局によって公開され、誰でもその登録された情報を見ることができます。

「登記事項証明書」(むかしは「登記簿謄本(とうきぼとうほん)」とも呼ばれていました)という言葉を聞いたことがないでしょうか。

登記事項証明書とは、法務局に登録された会社の情報(会社の名前、本店の所在地、取締役の名前)などが記載された、法務局が発行する証明書です。

登記事項証明書は、誰でも(会社に無関係な人でも)法務局から取得することができます。

このような仕組みで、日本のどんな会社についても、法務局に情報が登記されており、誰でも登記事項証明書を取得してその情報を知ることができるようになっています。

 

取締役の解任の場合、なぜ登記が必要?

会社の取締役が誰であるかは、法務局に登記されています。たとえば、X株式会社には、A、B、C、Dの3人の取締役がいたとします。法務局には、X株式会社の情報として、「取締役A」、「取締役B」、「取締役C」、「取締役D」の4人の取締役が登記されています。

いま、X株式会社が取締役Cを解任したとしましょう。

そうすると、X株式会社の取締役は、A、B、Dの3人になります。

そこで、登記の方も、「取締役C」の登記を消し、X株式会社の取締役が「取締役A」、「取締役B」、「取締役D」となるようにしなければなりません。

このように、会社の状況が変わって登記の内容を変更する必要が出てきたときは、会社は、自主的に法務局に登記の変更を申請しなければなりません(会社法915条1項)。

 

登記しない場合の2つのデメリット

取締役の解任をしたのに、取締役の解任の登記を申請しなかったらどうなるでしょうか。

これには、2つの大きなデメリットがあります。

デメリット1―取締役を解任したことが否定されることがある

取締役を解任したのに、その登記申請をしなかった場合、会社の登記簿には、解任したはずの取締役の情報がずっと残り続けます。

例えば、会社が取締役Aを解任した場合、Aはもう取締役でなくなりますが、会社がその登記申請をしないまま放置すると、Aの名前が会社の取締役として登記に残り続けるのです。

そうすると、誰かがその登記を見たときに(上記のとおり、誰でも登記事項証明書を取得することで登記の内容を見ることができます)、Aがまだ取締役であると信じてしまうかもしれません。

Aを会社の取締役だと信じた第三者は、会社と取引するつもりで、Aと接触するかもしれません。

このような事態が生じた場合、会社は、「もうAは解任したから当社の取締役ではない」といえなくなってしまいます(会社法908条1項)。

きちんと登記申請せず、解任した取締役の名前を登記に残し続けてしまった結果、その誤った登記の情報を第三者が信じてしまったときは、その第三者に対して「Aはもう取締役ではない」といえなくなってしまうのです。

つまり、解任の効力が一定の範囲で否定されるのです。

これはとても大きなデメリットです。

しっかりと手続をこなして取締役を解任したときは、その解任の効力を確かなものにするため、すぐに取締役の解任の登記申請を行いましょう。

 

デメリット2―会社の代表者に過料が課される

「過料」(「かりょう」と読みます。)とは、社会的にいわゆる「罰金」と呼ばれるものの一種です。

社会的にいわゆる「罰金」と呼ばれるものは、法律的に詳しくいうと、「過料」、「反則金」、「科料」、「罰金」、の4種類があります。「過料」は、この中でいちばん軽いものです。

取締役の解任をしたにもかかわらず、登記をせずに放置していると、会社の代表者個人に対する罰として、この「過料」が課されます。

過料の金額は100万円以下とされており、決して軽い罰ではありません。

幸いにも過料は前科にはなりませんが、法律違反に対する罰として課されるものですから、過料を甘くみるのは禁物です。

過料を課されないためにも、取締役を解任したら、すぐに登記の申請をしましょう。

 

いつまでに登記を申請すればよいか?

会社は、登記の事項に変更が生じたときは、2週間以内に登記をすることが義務付けられています(会社法915条1項)。

取締役の解任の場合もこのルールにしたがいます。

したがって、会社は、取締役の解任の決議をした日から2週間以内に、取締役の解任の登記を申請することが必要です。

会社が2週間以内に登記をしないと、上記のデメリット2で説明したように過料の対象になります(会社法976条1号)。

実務上は、2週間を過ぎてもすぐに過料を課されることはなく、数か月程度の遅れであれば大目に見てもらえることもあるようです。

ただ、迅速に登記申請をすることは、上記で説明したデメリット1を回避することになりますので、2週間といわず、できるだけ早く登記申請をすることが大切です。

 

取締役の解任の登記申請はどうすればいいの?必要な書類は?

取締役の解任の登記のポイントは、次のとおりです。

どこの法務局に申請する?

会社を管轄する法務局に対して申請します。法務局は日本全国にたくさんありますが、法務局ごとに管轄する地区が決まっています。

そのため、自分の会社の所在地を管轄している法務局に登記の申請をする必要があります。

 

必要な書類は?

まず、「登記申請書」が必要です。登記申請書のフォーマットは法務局のウェブサイトに見本がありますので、参考にしてください。

参考:法務局WEBサイト|商業登記の申請書様式

さらに、添付書類として次のものを法務局に提出しなければなりません。

  • 株主総会議事録(取締役の解任を決議した臨時株主総会のもの)
  • 株主リスト
  • 委任状(弁護士や司法書士に手続を依頼した場合のみ)

※「株主リスト」は、法務局が定めているフォーマットにしたがって作成するのがよいでしょう。法務局のウェブサイトをご参照ください。

 

登記申請にかかる税金は?

「登録免許税」という税金がかかります。金額は、会社の規模によって1万円か3万円です。

収入印紙を登記申請書に貼って法務局に提出することにより支払います。現金では払えません。

登記申請、じつはけっこう手間がかかる?

登記申請は、じつはけっこう手間がかかる作業です。

必要な書類をそろえても、法務局が細かいところまで審査し、不備があれば登記されません。

そうなれば、何度も法務局まで足を運ばなければなりません。

登記申請を専門家に頼めば、書類の作成から法務局への申請まで、プロが代わりに行ってくれます。

法律の専門家である弁護士も、もちろん登記の依頼をお受けすることができます。

取締役の解任の手続について弁護士にアドバイスを受けるときに、登記申請の手続をまとめて依頼することもできます。

 

 

解任した取締役には解任通知を送っておく!

解任通知とは

解任通知とは、株主総会で取締役を解任した後で、会社から解任した取締役に対して「会社はあなたを解任しましたよ」と通知する文書をいいます。

解任通知は、法律のルールだけを見れば、特に送る必要はないとされています(取締役の解任は、株主総会で取締役の解任の決議が成立した時点で有効になります)。

しかし、会社の実務上は、解任通知を送るのがよいでしょう。

なぜならば、解任された取締役が、解任を決議した株主総会に出席していなかった場合、その人は自分が解任されたことを知らない可能性があるからです。

会社から解任された取締役に対して解任通知を出し、「会社はあなたを解任しました」と通知することによって、解任された取締役が解任されたことを知らないまま引き続き取締役として行動してしまうリスクを解消できます。

解任通知は、口頭で行うのではなく、書面やメールなど、のちのちまで証拠が残る形で行いましょう。

 

解任通知の書式・サンプル

解任通知書のサンプルをこちらに用意しました。ご参考にされてください。

あわせて読みたい
企業法務に関する書式集

 

取締役を解任できない場合があるの?解任した取締役に損害賠償を請求される?!取締役の解任に踏み切る前に「正当理由」の検討を!

取締役を解任できない場合はあるの?

すでに説明したように、会社は、株主総会の決議によって、取締役をいつでも解任することができます(会社法339条1項)。

これには例外はありません。

上記で説明した手続をきちんと踏めば、会社はいつでも無条件で取締役を解任することができます。

 

解任した取締役から損害賠償を請求されることがある!

会社は取締役をいつでも自由に解任することができます。

しかし、実は解任した取締役から損害賠償を請求されることがあります。

解任した取締役から損害賠償を請求されると、裁判に発展する可能性もありますし、そうでなくても会社にとって大きなダメージになります。

以下では、解任した取締役から損害賠償を請求されないようにするためのポイントを説明します。

 

会社法のルール

改めて、取締役の解任に関する会社法の条文を確認しましょう。

解任に関する会社法の条文
(解任)
第三百三十九条 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
2 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

参考:会社法|電子政府の窓口

条文は法律独特の表現があるので、わかりやすい文章に書き直すと、このルールは次のようになります。

  1. 会社は、いつでも、株主総会の決議によって取締役(※4)を解任することができる。
  2. 解任された取締役は、会社に対し、損害賠償を請求することができる。ただし、解任に「正当な理由」がある場合は、損害賠償の請求はできない。

(※4) 取締役だけでなく、監査役と会計監査人も解任できます。

つまり、会社は、きちんとした手続を踏めば無条件で取締役を解任することができますが、「正当な理由」がないのに取締役を解任したときは、解任した取締役から損害賠償を請求されてしまうのです。

このルールをまとめると、次のとおりです。

  • 取締役の解任の手続を行った + 正当な理由がある → 取締役は解任されて取締役でなくなる + 解任された取締役は会社に対して損害賠償請求できない
  • 取締役の解任の手続を行った + 正当な理由がない → 取締役は解任されて取締役でなくなる + 解任された取締役が会社に対して損害賠償の請求ができる

 

「正当な理由」って何?どんなケースが「正当な理由」になる?

会社にとって望ましくない取締役を解任しても、その取締役から損害賠償を請求されてしまうと、会社のダメージが広がるばかりです。

取締役の解任に踏み切る前に、「正当な理由」の有無を確認することは、会社が紛争に巻き込まれないようにするためにとても重要なポイントです。

以下では、どのようなケースが「正当な理由」ありとされやすいのかを説明します。

正当な理由ありと判断されやすい例

  • 取締役が健康上の理由で取締役の職責を果たせないケース
  • 一定の事業を任せるために取締役に選任したのに、その事業を遂行する能力がまったくなかったケース
  • 会社に対して故意に(意図的に)損害を与えたケース
  • 大きなミスによって重要な経営判断に失敗したケース

正当な理由なしと判断されやすい例

  • 単にオーナーと気が合わないという理由で解任したケース
  • 経営判断上の単純なミスや失敗で解任したケース
  • 取締役に特に落ち度がないのに解任したケース

 

損害賠償の金額は?「正当な理由」が認められなかった!損害賠償が請求された!会社はいくら支払うの?

会社が取締役を解任した場合で、「正当な理由」が認められなかったときは、会社は取締役に損害賠償を支払わなければなりません。

そうならないように事前に「正当な理由」をしっかり検討するのがベストですが、残念ながら「正当な理由」が認められず、損害賠償を支払わなければならなくなった場合、会社はどのくらいの金額を支払うことになるでしょうか。

会社が支払わなければならない損害賠償の範囲は、①と②の合計額になります。

  • ①解任した取締役の残り任期分(解任した日から本来の任期満了の日までの期間分)の役員報酬
  • ②解任した取締役が任期満了まで務めたと仮定した場合の退職金(「退職慰労金」という言い方をすることが多いです。)

会社としては、取締役に損害賠償を請求され、解任した後の期間に対する報酬を支払うことは金銭的な負担になります。

やはり、取締役の解任に踏み切る前に、「正当な理由」を慎重に検討しておくべきでしょう。

 

「正当な理由」の判断は専門的な法律判断!取締役の解任に踏み切る前にプロのアドバイスをもらおう!

上記のように、会社が取締役を解任しようとする場合、「正当な理由」があると認められやすいケース、認められにくいケースには一定の傾向があります。

しかし、本当に「正当な理由」があると判断してよいのかは、ひとつひとつのケースによって細かく異なります。

なぜならば、「正当の理由」が認められそうか、認められにくそうかは、ひとつひとつの会社の歴史、現状、経営状態、解任の対象となる取締役の行動、能力、解任することとなった経緯など、あらゆる事情を総合的に考慮し、分析して、法的な専門知識に基づいた高度な判断によって行う必要があるからです。

「正当な理由」の有無は、高度な法的判断です。

会社を守るためにも、取締役の解任に踏み切る前に、「正当な理由」の有無について、取締役の解任について経験豊富な弁護士のアドバイスをもらうことをお勧めします。

 

取締役の解任と退職金の問題―解任した取締役にも退職金を支払う必要があるの?

取締役の退職金は、「退職慰労金」と呼ばれます。

会社が取締役を解任した場合、会社はその取締役に退職慰労金を支払う必要があるでしょうか?

答えは、「会社として法律的に退職金を支払う体制になっていればそれにしたがって支払う、支払う体制になっていなければ支払わない」です。

一般に、会社が取締役の退職慰労金を支払うには、退職慰労金の支払いを株主総会決議で承認する必要があります(会社法361条)(※5)。

もし、過去に会社の株主総会で取締役の退職慰労金を支払うことを決議していた場合は、取締役を解任した場合でも、解任された取締役に対して、過去の株主総会決議にしたがって退職慰労金を支払わなければならない可能性があります。

取締役の不祥事が原因でその取締役を解任したような場合は、会社としてその解任した取締役に退職慰労金を支払いたくない気持ちになりがちです。

しかし、退職慰労金は、これまでの取締役の働きに対して与えられるものとされています。

会社が取締役を解任しても、その取締役の過去の働きが消滅するわけではありません。

そのため、会社として取締役に対して退職慰労金を支払うという体制になっているならば、会社が取締役を解任しても、退職慰労金をまったく支払わなくてよいということにはならないのです。

※5 退職慰労金の支払いを定款で定めることもできます。ただし、実務上は、退職慰労金を定款で定めることはあまり行われません。

逆に、会社として取締役の退職慰労金を株主総会で承認していない場合は、取締役に対して退職慰労金を支払う必要はありません。このことは、取締役を解任した場合も、普通に取締役が退職した場合も同じです。

 

取締役の解任の訴えとは―裁判を起こして取締役を解任するルートがある?

取締役の解任のもうひとつのルート

ここまで、取締役の解任の手続と注意点を説明してきました。

取締役を解任するには、株主総会を開催して取締役の解任を決議する必要がありました(会社法341条)。

ただし、会社法には、もうひとつ、取締役を解任するルートが用意されています。

それは、「取締役の解任の訴え」というルートです(会社法854条)。

「訴え」という名前からわかるとおり、裁判を起こして取締役を解任する方法になります。

一般には、取締役の解任の訴えが必要になることはほとんどありません。

 

取締役の解任の訴え

ここでは、取締役の解任の訴えの概要をご説明します。

すでに説明したように、取締役の解任は、株主総会決議によって行います。

取締役の解任の株主総会決議には議決権の過半数が必要ですから、株主の中の多数派が結束して取締役の解任に反対票を入れると、問題のある取締役が解任されないまま残ってしまうことがあります。

会社がこのような事態に陥ったときの予備ルートとして、少数派の株主でも問題のある取締役を解任することができるよう、取締役の解任の訴えが用意されているのです。

具体的には、会社の総株主の議決権の3%以上を6か月以上保有している株主は、裁判所に対し、取締役の解任の訴えを起こすことができるとされています。

この裁判で、裁判を起こした株主が勝てば、取締役は解任されます。

 

取締役の解任の訴えが起こされた場合の会社の対応

もし、株主から取締役の解任の訴えが起こされた場合は、会社は、被告としてその裁判に対応しなければなりません。

裁判の結論は会社に大きな影響を与えますから、裁判の対応は取締役の解任について豊富な経験を持つ弁護士に代理人を依頼することをお勧めします。

 

 

従業員兼務の取締役に注意!取締役の解任をしても従業員としての地位は残る!

取締役は、会社の従業員(社員)ではありません。

従業員(社員)は、会社と労働契約(雇用契約ともいいます)を結んだ関係で、会社の指揮命令によって仕事をする立場の人です。

これに対し、取締役は、会社と委任契約を結んだ関係で、いわば経営の専門家として会社に迎え入れられた立場です。

そのため、会社の指揮命令は受けません。

このように、取締役と従業員は、会社との関係が根本的に異なっています。

しかし、会社によっては、1人の人間が1つの会社の中で取締役と従業員の双方の立場を兼ねていることが珍しくありません。

このような人のことを、「従業員兼務取締役」といいます。

会社が従業員兼務取締役について取締役の解任した場合、その人は取締役から解任されて取締役ではなくなりますが、会社の従業員としてはそのまま会社に残ります。

給与や退職金についても、取締役の地位から発生するものと、従業員の地位から発生するものをわけて取り扱う必要があります。

このように、従業員兼務の取締役を解任するときは、従業員としての地位も考慮する必要がありますので、より複雑な対応をしなければなりません。

詳しくは弁護士にご相談ください。

 

 

取締役の解任は積極的に使うべき?ほかの手段との比較検討

以上のとおり、取締役の解任について、手続と注意点を解説してきました。

取締役の解任は、会社がいつでも取締役を辞めさせることができる強力な手段だといえます。

一方で、正当な理由が認められなければ、解任した取締役から会社が損害賠償請求をされるなど、取締役の解任には無視できない大きなリスクがあります。

取締役の解任の便利さとリスクをどのように考えるべきでしょうか。

 

取締役を辞めさせたいときの選択肢―まず「辞任」や「退任」を検討する

この記事の冒頭で説明したように、取締役のやめ方には「退任」「辞任」「解任」の3種類があります。

「退任」は、取締役の任期が満了したときに取締役が自動的に取締役でなくなることです。

この「退任」には、会社が損害賠償を請求されるようなリスクはありません。

また、「辞任」は、取締役が自分から取締役を辞めることをいいます。この「辞任」にも、会社が損害賠償を請求されるようなリスクはありません。

このように、3種類の取締役のやめ方について損害賠償のリスクを考えると、会社にとって安全な方法は、取締役の「退任」や「辞任」であることがわかります。

これら2つには損害賠償を請求されるリスクがないからです。

そこで、会社として取締役を辞めさせたいと思った場合でも、まずは「退任」や「辞任」の方法が可能かどうかを検討するのがよいでしょう。

例えば、問題のある取締役を辞めさせたい場合であっても、その取締役の残りの任期があと数か月であれば、リスクをとってその取締役を解任するよりも、その取締役が任期の満了によって「退任」するのを待つ方がベターといえます。

あるいは、辞めさせたい取締役とコミュニケーションがとれる状況であれば、その取締役と話し合って、取締役の方から「辞任」してもらうのもよい方法です。

取締役の解任は、取締役の任期がまだ長く残っていて「退任」まで待てない場合や、取締役と話し合って「辞任」してもらう方法がとれない場合などに、改めて選択肢として検討するのがよいでしょう。

 

 

取締役の解任についてまとめ!

取締役の解任について、これまでの内容をまとめます。

  • 取締役の解任は、会社がいつでも無制限で取締役を辞めさせるもの
  • 取締役の解任は、株主総会の決議によって行う
  • 株主総会の決議は、手続の瑕疵(手続の不備のこと)がないように法律のルールにしっかりとしたがって進める
  • 会社ごとにアレンジされた手続ルールに要注意。手続の前に定款をしっかり確認、不安ならば弁護士のアドバイスを
  • 取締役の解任をしたら、すぐに登記申請をする
  • 解任通知を出すのも忘れずに
  • 取締役を解任したとき、「正当な理由」がなかったら、取締役から損害賠償を請求されることがある
  • なので、取締役の解任をする前に「正当な理由」があるかないかをしっかりと検討する
  • 「正当な理由」があるかないかの判断は専門的な法的判断、必要であれば弁護士のアドバイスを
  • 取締役の解任は、強力な手段だが損害賠償のリスクあり。まずはリスクの少ない「退任」や「辞任」の検討を

取締役会のない会社の場合は、手続に少し違いがあります。詳細については、会社法に詳しい弁護士にご相談ください。

以上、この記事が取締役の解任問題に直面されている企業のお役に立てれば幸いです。

 

 

企業の相談は初回無料 企業の相談は初回無料