弁護士コラム

ベンチャー法務における優先配当株の活用のポイント

ベンチャー法務

ベンチャー法務における種類株式の活用方法について、当事務所企業法務部ベンチャー法務チームの弁護士が解説します。

事業資金確保の必要性

お金企業が成長するために、事業資金は必要不可欠です。

特に創業間もないベンチャーの場合、急成長する過程で、設備投資、人件費等の莫大な資金が必要となる場合は多くあります。

したがって、事業資金を迅速に調達しなければなりません。

しかし、創業間もないベンチャーは、十分な収益をあげていなかったり、経営が不安定であったりケースが大半です。

そのような企業に対して、貸付や投資という形で事業資金を提供すると、後々回収できないリスクは大です。

そのため、投資家でもベンチャーへの投資に対しては消極的です。

ベンチャーとしては、資金調達のために、投資家が「リスクを取ってでも投資したくなる条件」を提示しなければならないのです。

そのようなベンチャーの投資において、実務上、活用を期待されるのが種類株式です(会社法108条)。

会社法は、通常の株式とは「異なる種類の株式」として9つを規定しています。

ここでは、「剰余金の配当を受ける権利」についての種類株式の活用をご紹介します。

 

優先配当

ビジネス会社法は、剰余金の配当を受ける権利について、通常の株式とは異なる種類の株式の発行を認めています。

したがって、例えば、普通株式に先んじて、一定額の配当を優先的に確保できる株式(優先株式)を発行することが可能です。

なお、劣後的取扱いを受ける株式を発行することもでき、これを劣後株式といいます。

 

優先株式の発行要領

会社が優先株式を発行するときは、以下の内容について、原則として定款で定めなければなりません(会社法108条2項1号)。

①当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法
②剰余金の配当をする条件
③その他剰余金の配当に関する取扱いの内容
④発行可能種類株式総数

ただし、配当を受けることができる額その他法務省令で定める事項については、当該種類の株式を初めて発行する時までに、株主総会等(※)の決議によって定める旨を定款で定めることができます。

この場合はその内容の要綱を定款で定めなければなりません(同法108条3項)。

※取締役会設置会社は株主総会又は取締役会、清算人会設置会社は株主総会又は清算人会

参加型と非参加型

配当優先株を発行する際、参加型と非参加型かを決定します。

参加型とは、所定の優先配当金が優先株主に対して支払われた後、会社が普通株主に利益配当するとき、優先株主もさらに利益配当が受けられるタイプです。

これに対して、非参加型とは、所定の優先配当金を越えては、優先株主に配当は行われないタイプです。

例えば、「A種優先株式1株年100円」の場合、参加型は優先株主が1株100円を受け取り、さらに利益配当があれば余分に受け取ることができ、非参加型は100円しか受け取れません。

累積型か非累積型か

配当優先株を発行する際、累積型と非累積型かを決定します。

累積型とは、ある年度における優先株式への配当額が所定の優先配当金額に満たない場合、未払分を翌年度以降に累積して繰り越すタイプです。

これに対して、非累積型とは、実際に配当額が所定の優先配当金額に達しない場合、不足分を切り捨て、翌期以降に繰り越さないタイプです。

 

ベンチャー法務での活用の是非

創業段階におけるベンチャーは、前記のとおり、収益をあげることが困難な状況です。

また、仮に、収益が上がっていたとしても、迅速な成長し、IPOを目指すことが通常であるため、事業資金に回すことの方が重要です。

競合したがって、投資家も、実際の配当を期待してはいないでしょう。

とはいっても、普通株主への配当を牽制するという意味はあると考えます。

また、投資において、実際の配当は期待していないため、仮に、ベンチャーで優先配当株を発行する場合、非参加型、非累積型としてかまわないと思われます。

以下は、配当優先株を発行し、非参加型、非累積型とした場合の定款の記載例です。

【記載例】

第◯条(優先配当)
会社は、毎年3月31日の最終の株主名簿に記載または記録されたA種優先株式を有する株主(本定款においてA種優先株主という。)またはA種優先株式の登録株式質権者(本定款においてA種優先登録株式質権者という。)に対し、普通株式を有する株主(本定款において普通株主という。)または普通株式の登録株式質権者(本定款において普通登録株式質権者という。)に先立ち、次に定める額の金銭による剰余金の配当(かかる配当により支払われる金銭を本定款において優先配当金という。)を行う。

A種優先株式 1株につき年100円

2 ある事業年度において、A種優先株主またはA種優先登録株式質権者に対して支払う金銭による剰余金の配当の額が優先配当金の額に達しないときは、その不足額は翌事業年度以降に累積しない。

3 A種優先株主またはA種優先登録株式質権者に対しては、優先配当金を超えて剰余金の配当は行わない。

 

 

 


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