弁護士コラム

多店舗展開だけが小売業の成長戦略ではない−小売業を取り扱う弁護士のコラム

経営戦略

小売業界の現状は、以前のコラム「弁護士が考える小売業の今後—小売業界で起こりうる法律問題」でご紹介したように、変化が激しい現代社会で激動の時代を迎えています。

その中で小売企業がどのような戦略をとるのがよいかを検討するに当たって、先日示唆を与えてくれる記事に触れました。

それは、ペンシルベニア大学ウォートンスクール教授であるマーシャル・フィッシャー氏をはじめとする経済学者の論文です。小売企業の皆様をサポートしている弁護士としても非常に考えさせられるものでした。

小売企業の多店舗展開

小売業の戦略といえば、多くの方が多店舗展開をイメージされるのではないでしょうか?

実際、日本の小売業界でも、ここ数十年の間に急成長をしてきた、コンビニエンスストアを業態とする小売企業は、とにかく新店舗を増やして、自社の影響を及ぼすことのできる市場規模を大きくするという方法で売上を伸ばしてきました。

具体的には、コンビニエンスストア大手のセブンイレブンジャパンの店舗数は、プレスリリースによれば、昭和49年の15店を出発点に、平成元年には3954店、平成10年には7732店、平成20年には1万2298店、平成28年には1万9422店となっています。

このように、小売企業としては、起業後間もない段階では、どんどん新規出店を行い、立地条件の良い場所に出店し終えると次第に条件の落ちる場所でも出店を行っていきます。

出店数が一定になると新店舗が既存店舗の売上を奪うという現象(マーシャル教授らは「カニバリ」(共食い)と表現しています。)が起こります。

弁護士そのため、店舗数が2倍になったからといって単純に売上高が2倍となっていくわけではありません。さらにいえば、利益も2倍になるわけではありません。新規出店には、賃料や内装費、宣伝広告費など大きなコストがかかるためです。

したがって、多店舗展開という戦略は小売業界で永続的に機能する戦略では決してありません。実際、先ほど例を挙げたコンビニエンスストアは、現在至るところにあり、数百メートルの範囲に複数の店舗が、しかも同じ系列のお店があるというのもよく目にする一方、閉店していく店舗も新規オープンと同じくらい見かけるようになっています。

このように考えると、小売企業が置かれた自社の状況によって、成長戦略が変わりうるということになります。

 

多店舗展開に頼らない戦略とは?

市場のライフサイクルでいうと、成長期の段階であれば、多店舗展開による自社企業の市場シェア獲得という戦略が有効ですが、成熟期を迎えている企業であれば、多店舗展開よりは既存店舗の売上を増加させる戦略をとる方が理にかなっているといえそうです。

もちろん、新規出店をゼロにするといった極端な話ではありません。採算の取れていない既存店を閉店して、新規出店をするという必要もありえるからです。しかしながら、多店舗展開=成長の必要十分条件ではないということは意識しておく必要がありそうです。

一度成功した企業が衰退していくという話は意外に多く耳にします。その理由は色々とあると思います。栄光と衰退というストーリーがマスコミなどによって報じられやすいということもあるでしょうが、過去の成功体験があるとどうしても社内にそうした空気が流れてしまい、なかなか事実を受け入れられない、そもそもその事実に気づかないということもあるでしょう。

競合

多店舗展開で成長した企業も自社のビジネスが成熟期に入っているにもかかわらず、多店舗展開の戦略を変更しないということが十分に起こり得ます。

小売業の企業の皆様をサポートする弁護士としては、単純に売上高だけを見るのではなく、既存店舗の売上高成長率といった指標も踏まえて企業の成長をサポートしてまいります。

小売企業の皆様へのサポート内容はこちらをご覧ください。

 

 


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