弁護士コラム

企業のブランド戦略

マーケティング
執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家

ブランドとは

マーケティングでは、よく「強いブランド構築が大切だ。」と耳にします。

では、ブランドとは何でしょうか。

もともと、ブランド(Brand)という言葉は、牛の焼印が語源となっています。
フィリップ・コトラーは、ブランドを次のように定義しています。

個別の売り手もしくは売り手集団の商品やサービスを識別させ、競合他社の商品やサービスから差別化するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたもの。
では、ブランドは顧客や企業にとって、どんな効果があるでしょうか。
様々な効果が考えられますが、マーケティング的に重要なものは下表のとおりです。

顧客にとっての機能  企業にとってのメリット
①識別機能
購買までの時間・コストを節約できる
①差別化できる
他との違いをシンプルに伝えられる
②品質保証
購買時のリスクが低くなる
②ロイヤリティを獲得できる
結果として収益安定に繋がる
③意味付け
ブランドに自己投影できる
③利益率を高められる
プロモーション依存度を低くし
プレミアム価格を設定できる

 

ブランド・エクイティ

ブランドを考える上で、重要な概念の一つに、ブランド・エクイティがあります。
これは、ブランドを企業が持つ「無形の資産」と捉える考え方です。

ブランド・エクイティをとらえるときは、ブランド認知、知覚品質、ブランド連想、ブランド・ロイヤリティの4つの要素に分解し、それぞれの要素がどのように価値向上に貢献するかを整理することが有益です。

ブランド・エクイティ

 

①ブランド認知

これは、そのブランドが「どの程度知られているか」、「どのように知られているか」、を指す要素です。

法律事務所を例にあげてみましょう。

ある企業が労働問題について、弁護士に相談したいと考えたとき、2つの事務所が近くにあったとします。一つは名前を聞いたことがあるが、もう一つはまったく聞いたことがない。その場合、通常は聞いたことのある事務所に相談するはずです。

しかし、認知度が高ければそれでいいというわけではありません。その事務所が労働問題については、労働者側の事務所として認知されていれば、企業の相談はないでしょう。
したがって、認知度だけではなく「どのように知られているか」という視点も大切です。

 

②知覚品質

これは、顧客がある製品やサービスを知覚できる品質や優位性です。

・パフォーマンス(車の場合、加速性、操縦性、安全性、速度、快適性など)
・付加機能(洋服の紫外線防止や形状安定など)
・信頼性(不良品や故障の少なさなど)
・耐久性(強度など)
・付加サービス(アフターサービス、保証)

 

いくつかの製品やサービスを比較したとき、顧客はこれらの知覚品質が高いと思われるブランドを好みます。

 

③ブランド連想

これは、顧客がそのブランドに関して連想できるすべてのものを指します。

例えば、ベンツのブランド連想は、製品カテゴリー(自動車)だけでなく、製品特性(高級車、高い技術力、優れた耐久性など)、関連する地名・歴史(ドイツ、ドイツ文化に根付く規律・品質へのこだわり)、顧客像(エグゼクティブ)、便益(社会的地位の高さの証明)などがあげられます。

特に、製品自体の差別化が困難で、かつ、多くのブランドなどが存在するカテゴリーにおいては、ブランド連想は重要です。

 

④ブランド・ロイヤリティ

これは、顧客がブランドに対して、どの程度忠誠心または執着心をもっているかという要素です。
ロイヤルティが高いほど、顧客は他のブランドにスイッチしにくいため、企業は安定的な収益を得やすくなります。

もっとも、ブランド・ロイヤルティにはいくつかの段階があります。

A 特に不満はなく、他のブランドを探す理由がない。
B 満足しているし、他のブランドに切り替えるには時間やコストがかかる。
C 愛着がわいており、他に変えにくい。
D そのブランドに惚れ込み、ユーザーであることを誇りに思っている。

 

安定性や競合に対する優位性は、下の段階へ行くほど強くなります。

ビジネスのイメージ画像自社のブランドのファンを増やし、またその度合を強化することがブランド・エクイティの向上につながります。

熱狂的なファンは、企業の安定的な売上げや利益に直接的に貢献するだけでなく、そのブランドのあるべき姿に愛情と強い意見を持ち、ブランドにとって重要な示唆を与えてくれます。

したがって、ブランド・ロイヤリティは、ブランド・エクイティの要素の中できわめて重要といえます。

 

強いブランドの育成方法

強いブランドを育成するには、ブランド・エクイティの構成要素を強化していく必要があります。

ブランド認知やブランド連想は、パブリシティ、広告、ホーム・ページ、イベント等、広範囲に及ぶ直接的・間接的な接点によって築かれます。

ただ、インターネットが普及した現在においては、広告を主体とした一方的、かつ、過度な情報提供ではなく、そのブランドらしさを定義し、体現する仕組みを持つことが重要です。

企業によっては、ブランド・ステートメントを作成しているところもあります。これは企業理念に近いものですが、ブランドのミッション、価値観、ポジショニングなどを明文化したものです。

ブランド・ステートメントは、当たり障りのない文句を並べるのではなく、そのブランドの存在意義やあるべき姿をしっかりと示していることがポイントです。

著名なマーケティング戦略家である、アル・ライズとローラ・ライズは、ブランディングには22の法則があると述べています。以下、その法則をご紹介します(ブランディング22の法則)

1 ブランドの力はその広がりに反比例する。

2 フォーカスを絞り込むとき、ブランドは強力になる。

3 ブランドが誕生するのは広告ではなく、パブリシティによってである。

4 いったん誕生したブランドは、その健康を維持するために広告を必要とする。

5 ブランドは消費者の頭の中に自分の言葉を所有する努力をすべきである。

6 あらゆるブランドの成功のカギを握るのは本物訴求である。

7 品質は重要だけれど、ブランドは品質だけで築かれるものではない。

8 リーディングブランドはブランドではなく、カテゴリーを振り込むべきである。

9 結局のところブランドとは名前のことである。

10 ブランドを破壊する最も簡単な方法は、あらゆる商品にそのブランド名をつけることである。

11 カテゴリーを築くには既存ブランドが他の競合ブランドの参入を歓迎する必要がある。

12 失敗に至る1番の近道はブランドに総称的な名前をつけることである。

13 ブランドはブランドであり、企業は企業である。両者の間には大きな違いがある。

14 ブランディングによって構築されたものがサブブランドの導入によって破壊される場合がある。

15 第2のブランドを発進させるには時と場所を選ばなくてはならない。

16 ブランドのロゴタイプは目にフィットするようにデザインすべきである。両眼にである。

17 ブランドは競合とは反対の色を使うべきある。

18 グローバルなブロンド構築に国境はない。ブランドに国境があってはならない。

19 ブランドは一夜では築かれない。成功な年単位ではなく、何十年単位で測定される。

20 ブランドは、ごく希に、そして最新の注意を払えば変更できることがある。

21 どんなブランドにも永遠の生命はない。多くの場合、安楽死がベストな答えである。

22 ブランドの最も重要な側面は一つのものを追い求めるひたむきさである。

 

 


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