弁護士コラム

DCF法の基本

ファイナンス
執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家

DCF法

ヨーロッパ資産(例えば、賃貸マンション、工場、債権)の金銭的価値は、それらが将来生み出すキャッシュフローの現在価値(PV)の総和となります。

資産の金銭的価値を、それらが将来生み出すキャッシュフローの現在価値として求める方法をDCF(Discounted Cash Flow)法と言います。

例えば、利子率(割引率)を5%として、以下のキャッシュフローを3年間で生み出す場合の資産の価値をDCF法で求めてみます。

 

1年目  100万円
2年目  150万円
3年目  100万円

キャッシュフロー1

 

したがって、キャッシュフローの現在価値は317.7万円となります。

95.2万円 + 136.1万円 + 86.4万円 = 317.7万円

なお、キャッシュフローの現在価値を計算する際の書式はこちらからダウンロードできます。

 

 

永久年金型

DSF計算式1

例えば、次の事例を考えてみましょう。

イギリスは、1739年に勃発したスペイン戦争とそれに続くフランス戦争の戦費調達のために、永久債を発行しました。この債権は、イギリス政府が券面額の4%を毎年永遠に支払うというものです。

利子率(割引率)を5%として、券面額10ポンドの永久債権の現在価値を考えてみます。

この債権の毎年のキャッシュフローは、利子 = 10 × 0.04 = £0.4 です。

キャッシュフローの現在価値は、永久年金型の公式から
DCF具体例

よって、債券価格は、8ポンドとなります。

 

割増永久年金型

DCF計算式2

例えば、あるベンチャー企業の1年後のキャッシュフローが 4000万円と予想されており、今後、毎年5%の勢いで成長していく場合、この企業を買収するために適正な価格を算定します(割引率を10%とします。)。
DCF具体例2

よって、8億円が適正な価格となります。

 

年金型

DCF計算式3

例えば、ある企業が2億円で買収するか検討している状況とします。この企業では、今後、30年間、毎年2400万円のキャッシュフローが生み出されると予測した、この企業を買収すべきかを考えます(割引率を10%とします。)。
DCF具体例3

したがって、投資額(2億円)よりも高額となるので、買収すべきということになります。

 

 


カテゴリ「ファイナンス」の弁護士コラム

  • 資金繰り 弁護士 西村裕一 ファイナンス 
    企業にとって現在資金繰り対策が急務です。手元流動性という指標を参考に、自社にどの程度のキャッシュを確保していくのか、そのために銀行の融資交渉や売掛金の回収、家賃の支払猶予などの交渉を行っていく必要があ...[記事全文]
  • 弁護士 宮崎晃 ファイナンス 
    通常、ベンチャーにとって、証券取引所への上場(IPO)が大きな目標となります。上場までにベンチャーは4つのステージを経ます。 創業して初期の企業は、「シード」(種)や「アーリー」などと呼...[記事全文]
  • 株式チャート 弁護士 宮崎晃 ファイナンス 
    DCF法において、フリー・キャッシュフローを現在価値に割引く割引率は、加重平均資本コスト(WACC))を使用します。上記の式のパラメータにおいて、最も算出するのが難しいのが株主資本コストです。この算出...[記事全文]
  • 弁護士 宮崎晃 ファイナンス 
    M&Aなどでは、企業の価値を適切に算定する必要があります。企業価値を定量的に算定する方法としては、DCF法が代表的ですが、将来のフリー・キャッシュ・フローやWACCなど、複雑な予測が必要です。マルチプ...[記事全文]
  • 弁護士 宮崎晃 ファイナンス 
    M&Aなどでは、企業の価値を適切に算定する必要があります。企業価値を定量的に算定する方法としては、1つの決定的な正解があるわけではなく、さまざまな手法があります。ここでは、代表的な3つの手法について、...[記事全文]
  • 弁護士 宮崎晃 ファイナンス 
    DCF法で企業価値を算定する非上場会社等の場合、株式の時価がマーケットで公開されていません。そこで、企業価値を算定するのはやや複雑となります。ここでは、オーソドックスな手法、DCF法で算定する方法をご...[記事全文]
  • 弁護士 宮崎晃 ファイナンス 
    資本コストは、債権者へのコストと株主へのコストを加重平均することで計算できます。WACCは、株主資本コストと負債コストをそれぞれの時価で加重平均するということです。企業この値を上回る利益を上げてはじめ...[記事全文]
  • 弁護士 宮崎晃 ファイナンス 
    買収のような場面では結局いくら支払うこととなるかを把握することが重要です。支払うこととなるトータルの金額を把握するためにネット・デットをプラスします。企業価値の算定は、上場企業の場合、マーケットが価格...[記事全文]
  • 弁護士 宮崎晃 ファイナンス 
    企業は投資なくしては、企業価値を高めることはできません。投資の判断は、経営において最重要といえます。企業が投資の意思決定を行なう際の判断手法としては、正味現在価値(NPV)法と、内部収益率(IRR)を...[記事全文]
  • 弁護士 宮崎晃 ファイナンス 
    事業の価値も、DCF法を使って、その事業が将来生み出すキャッシュフローの現在価値として計算できます。予測には予測可能な期間の各年度のキャッシュフローとそれ以降の期間の価値に分け、その合計値として算出す...[記事全文]
  • 弁護士 宮崎晃 ファイナンス 
    資産(例えば、賃貸マンション、工場、債権)の金銭的価値は、それらが将来生み出すキャッシュフローの現在価値(PV)の総和となります。資産の金銭的価値を、それらが将来生み出すキャッシュフローの現在価値とし...[記事全文]
  • 弁護士 宮崎晃 ファイナンス 
    ファイナンスとは、企業がどのように資金を調達し、どのように 資金を運用していったらよいのかを考える経営学の一分野です。ファイナンスで学ぶことは「もの」の価値を評価して価格をつける技法で、ファイナンスで...[記事全文]
企業の相談は初回無料 企業の相談は初回無料