事業承継

  
執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

中小企業における事業承継とは何か

握手中小企業において、自ら立ち上げた又は先祖代々継いできた事業を後世まで残していきたいと考える経営者の方は少なくないと思います。

しかし、実際に事業承継のためにどのようなことをする必要があるのか、その方策として具体的に何か行っているかと聞かれると、その答えに窮する経営者は少なくないでしょう。

事業承継のためには、下記のことを考え、対策をとる必要があります。

① 後継者選びと後継者教育
② 後継者以外の者との調整
③ 財産承継時の税負担の軽減
④ 事業用財産の分散防止
⑤ 債務・保証・担保の承継
⑥ 資金調達

弁護士

これら6つの対策については、どれも重要であり、どの対策についても一朝一夕にできるものではありません。つまり、事業承継をするためには何年もかけて様々な対策をとる必要があるのです。

そのため、余裕を持った事業承継をするためには、経営者として、後継者に引き継ぎたいと考える時期を決め、その時期から遡って10年以上前から対策を講じるべきです。

 

事業承継の現状とステップ

事業承継について、現状とステップを把握しておくことは、事業承継の対策を講じるに際して参考となるため、詳しく説明します。

事業承継の現状

まず、現状については、中小企業庁が平成28年12月に公表した事業承継ガイドラインにおいて、以下のことが挙げられています。

弁護士① 後継者確保の困難性
② 親族外承継の増加

つまり、現在では親族内で後継者を確保するのが難しくなっており、親族外を含めて後継者を決める作業が必要となる場合が多いといえます。

この場合、株主である親族や、後継者以外の関係者との調整に時間がかかることも多く、早期の事業承継対策の必要性がより高いといえます。

事業承継のステップ

前記の事業承継ガイドラインでは、以下の事業承継に向けたステップを挙げています。

解説図

これらのステップはあくまで目安ですが、このステップを見ても分かる通り、まずは事業承継をするために準備するべきであることを認識してもらうことが第一歩なのです。

事業承継の準備については、経営者が60歳を超えたころには始めるべきと言われていますので、経営者の皆様には、念頭に置いていただければと思います。

次は、第2のステップの経営状況や経営課題等の把握です。

これは単に事業承継準備と言っても、その準備ですべきことは会社の現状や今後の見通しにより異なるものであるため、適切な事業承継準備を行うためには現状分析などをすることは重要です。

そして、第3のステップが、経営改善です。

事業承継をするにしても、それまでに経営を改善し安定した経営をしておかなければ、事業を承継する者は見つからず、承継したとしても苦労をするだけです。

そのため、事業承継にあたっては、現在の経営状況を見直していくとともに、改善を図っていくことも必要になります。

業績が悪く、財務状況が悪い場合には、民事再生手続きを用いたり、私的整理を行ったりするなどの法的な手法を用いることも考えるべきです。

第4ステップからは、事業承継の具体的な方策を考え、実行することになります。

これについては、具体的な方策について、以下で検討します。

 

事業承継のための方策

事業承継のためには、前述の視点・対策が必要となりますので、改めて6つの視点を挙げておきます。

ポイント① 後継者選びと後継者教育
② 後継者以外の者との調整
③ 財産承継時の税負担の軽減
④ 事業用財産の分散防止
⑤ 債務・保証・担保の承継
⑥ 資金調達

後継者選びと後継者教育

事業承継で最も重要となってくるのが、後継者選びと後継者教育です。

なぜなら、後継者によって事業が継続できるかどうか、今後の事業がどういった方向に進んでいくのか全く異なるといえるからです。

この後継者選びで陥りがちなこととしては、経営者が自分の想いだけで後継者を決めてしまうことです。

経営者としては、自らが選んだ人に事業を承継してほしいと思うのは当然ですが、その選ばれた人が事業の承継についてどのように考えているのか、他の親族や従業員に対してどのように説明を行っていけばよいのかといったことをしっかりと考える必要があります。

また、選んだ後継者が、後継者としての能力・経験を十分に備えているのか、備えていないとすれば、能力・経験をどのように育んでいけばよいのかを考えることも重要です。

時間と記録特に能力・経験は短期間で身につくものではなく、最低でも数年、できれば10年程度かけて身に着け、後継者としての素地を得ることをしていくべきでしょう。

特に社内での教育については、後述の従業員の理解を得るためにも必要ですし、その事業の理念や現状などをしっかりと把握することで、不足のない後継者として育っていくことになります。

つまり、「後継者との対話」と「後継者の社内外での教育」をしっかりと時間をかけて行う必要があるのです。

後継者以外の者との調整

後継者以外の人との調整も重要となってきます。当然、取引先などとの調整は大事ですが、それ以上に大事なのが現経営者以外の同族株主や、従業員との調整です。

特定の親族を後継者としている場合には、それ以外の親族に対してどうしてその人が後継者なのか、今後他の親族はどのように会社へ関わっていくかを説明・相談する必要があるでしょう。

また、従業員は、急にこの人が次期経営者と言われても、そう簡単には受け入れられないことも少なくありません。

このような場合、後継者の社内教育を通して、従業員からの理解を得ることが重要です。

財産承継時の税負担の軽減

税財産承継時の税負担の軽減については、経営者として注意して行っている人は多いと思いますが、以下の制度の利用が考えられます。

● 暦年贈与
● 相続時精算課税贈与
● 非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予・免除制度
● 小規模宅地等の課税価格の特例

暦年贈与や小規模宅地等の課税価格の特例については、用いやすい制度ですし、誰でも簡単に節税できる手法です。詳しくはこちらをご覧ください。

税法とお金相続時精算課税贈与については、贈与する財産が値上がりすることが想定されている場合には節税になる制度ですが、値下がりする場合などには節税対策としては機能しないため、しっかりと税理士や弁護士と相談して利用を考えるべき制度です。

非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予・免除制度については、承継するのが株式会社の場合に用いることのできる制度ですが、平成29年の改正によって使い勝手がよくなりましたので、検討すべき制度と言えます。

詳しくは、こちら「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例」の概要をご覧ください。

事業用財産の分散防止

人材もそろい、節税対策をしても、事業用財産が分散しては、事業は成り立たなくなってしまいます。

そのため、事業用財産が後継者に承継されるようにする必要があるのです。

ア)贈与又は売買

一番簡単なのは、経営者から後継者に対して事業用財産や株式を生前に贈与したり売却したりする方法です。
この方法は簡単ですが、課税関係を考える必要性は高いので、税理士や弁護士と相談しながら行うべきでしょう。
また、株式や財産をただ渡してしまうと、現経営者が経営に関われなくなるといったような不安が残るかと思います。

イ)遺言や信託

手続上記の場合では、現経営者が経営権を維持することは難しくなります。そういった場合には、遺言や信託といった制度を利用することも考えるべきでしょう。
遺言によって、死んだ際に承継されるようにしたり、信託によって、自己の経営権を維持しながら確実に後継者に財産を遺すことができるようにすることも可能です。

ただし、遺留分には気を付けなければなりません。遺留分に配慮しないと、他の相続人から遺留分減殺請求をされ、結局財産が分散してしまう結果となりかねません。
遺留分対策としては、推定相続人で話し合いができるのであれば、経営承継円滑法に基づく遺留分に関する民法特例を用いることも有益でしょう。詳細は下記をご覧ください。

債務・保証・担保の承継

話し合い債務については、事業承継時に後継者へ引き継ぐのが通常ですが、引き継ぐ際には、金融機関等の債権者の同意が必要となるので、後継者を交えての金融機関等との話し合いが必要となります。

この場合、金融機関によっては、経営者の保証について解除してくれることもありますので、一度金融機関に相談に行くことをおすすめします。仮に解除してもらえなかったとしても、今後金融機関等と付き合いをしていく後継者が金融機関等と信頼関係を構築する場ともなり得ます。

一方、後継者に引き継ぐとはいっても、債務が多いのでは事業が立ち行かなくなる可能性が高まりますから、事業を承継するまでには、なるべく債務を圧縮するための努力をしていくことが欠かせません。

資金調達

お金後継者が資金調達することは、円滑な事業承継のためには不可欠です。

金融機関からの借り入れや、後継者候補の役員報酬の引き上げなどをして資金調達することが一般的と言われています。

事業承継のためには、法律上、税務上の問題をはじめ、様々な視点からの長期的な準備が必要となることは、すでにお伝えしたとおりです。

これらの問題を解決するためには、弁護士、税理士をはじめとした士業の役割も重要となってきます。

当事務所は、他士業との連携もとっておりますので、まずは一度当事務所にお問い合わせください。

経営権を獲得するための株式取得策については、こちらをご覧ください。

 

 

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