景品表示法違反とは?罰則やポイントを弁護士がわかりやすく解説

  
監修者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家

景品表示法とは?

「景品表示法(けいひんひょうじほう)」とは、「不当景品類及び不当表示防止法」という名前の法律のことです。

名前が長いので、「景品表示法」と呼ばれています。もっと短く「景表法(けいひょうほう)」と呼ばれることもあります。

景品表示法は、「不当表示規制(ふとうひょうじきせい)」「景品規制(けいひんきせい)」という2種類の規制を定めています。

景品表示法がどんな法律か、2種類の法規制とはどんなものかなど、詳しい内容をこちらの記事にまとめています。ぜひご参考になさって下さい。

景品表示法は、消費者に対するビジネスを行っている企業(会社や個人事業主)をターゲットとした法律です。

つまり、「不当表示規制」も「景品規制」も、消費者向けビジネスを行っている企業に対する規制なのです。

したがって、あなたの会社(またはあなた自身)が消費者に対するビジネスを営んでいる場合は、景品表示法の定めているルールにしたがって行動しなければなりません。

企業が景品表示法のルールに違反してしまうと、さまざまな処分を受けることもあります。

この記事では、弁護士が景品表示法の違反について詳しく解説します。

景品表示法に違反した行動をとってしまわないよう、ぜひご参考になさってください。

 

 

景品表示法違反の件数の推移ー違反件数は意外に多い!?

景品表示法違反は、どのくらいの頻度で起きているのでしょうか。

企業が景品表示法に違反した場合、中央省庁のひとつである「消費者庁」という官庁や、都道府県などによって取り締まりを受けます。

違反の程度が軽ければ注意や指導を受けるだけで済むこともありますが、重大な違反や消費者への影響の大きい違反をおかしてしまった場合には、消費者庁や都道府県から「措置命令」という処分を受けることがあります。

さらに、企業が景品表示法違反によってもうけた利益の一部を国に支払わせる「課徴金納付命令」が課されることもあります。

景品表示法に違反して「措置命令」や「課徴金納付命令」などを受けてしまった企業の数をみてみましょう。

2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
国(消費者庁)による処分 措置命令 13 27 50 46 40
課徴金納付命令(※1) 1 19 20 17
都道府県による処分 措置命令 3 1 8 9 15

引用元:景品表示法に基づく法的措置件数の推移(令和3年1月31日現在)|消費者庁ウェブサイト

※1:2015年以前は課徴金納付命令の制度はありませんでした。

この表やグラフからわかるように、近年、景品表示法に違反して措置命令や課徴金納付命令を受けた企業の数が急激に増加し、その後、高い水準を保っていることがわかります。

例えば、2019年には、1年間で合計55の企業が、景品表示法に違反したことを理由に措置命令を受けています。

平均すると、1か月あたり4回以上の措置命令が出されたことになります。

また、課徴金納付命令を受けた企業の数も2019年の1年間で17件となっており、平均すると、おおむね2か月あたり約3社が課徴金納付命令を受けていることがわかります。

措置命令や課徴金納付命令を受けるレベルまではいかなくとも、行政庁から注意や指導を受けるレベルで収まった景品表示法違反のケースは、さらに多くあったものと思われます。

このように、景品表示法違反は、企業にとって、近年ますます身近で重要な問題となっています。

特に一般消費者を対象としてビジネスを行っている企業は、その業種を問わず、また会社組織であるか個人事業主であるかを問わず、景品表示法に違反しないよう注意が必要です。

うっかり違反してしまう前に、自分たちの行動が景品表示法違反にならないよう、あらかじめ景品表示法の制度をしっかり理解しておきましょう

景品表示法の概要についてはこちらの記事にもわかりやすいまとめがあります。あわせてご覧ください。

 

 

景品表示法に違反する場合とは?

景品表示法による2種類の規制とは?

景品表示法という法律は、ひとつの法律で2つの領域に規制をかけています。

その2つの規制とは、「不当表示規制」と「景品規制」です。

不当表示規制

「不当表示規制」とは、企業が消費者に対して「不当な表示」をすることを禁止するルールです。

「不当な表示」とは、おおむね「不適切な広告」という意味だと考えていただくと理解しやすいです(後で正確に説明します)。

つまり、企業が不適切な広告をしたときは、景品表示法の違反になる可能性があるということです。

景品規制

次に、「景品規制」とは、企業が消費者に対して「過大な景品」を渡すことを禁止するルールです。

「景品」とは、いわゆる「おまけ」とか「粗品」とか「プレセント」(お客さんを引き寄せるため本来の商品とは別の物を渡すというイメージ)のことです(こちらも後で正確に説明します)。

そして、「過大な景品」とは、その「景品(おまけやプレゼント)」の価値が高すぎることをいいます。

つまり、企業がお客さんに対して価値が高すぎる景品を渡すことも、景品表示法に違反になる可能性があるのです。

景品表示法が定める2種類の規制「不当表示規制」と「景品規制」の概要については、こちらにもわかりやすくまとめていますので、ぜひあわせてご覧ください。

 

「不当表示規制」と「景品規制」ーどっちの違反に気を付ければいい?

それでは、消費者を対象としてビジネスを行っている会社は、「不当表示規制」と「景品規制」のどちらの違反に気を付けるべきでしょうか。

結論としては、どちらの規制にも気を付けなければなりません

消費者をお客さんとするビジネスを行う企業であるならば、どんな業種であるかを問わず、また会社の大小(あるいは法人か個人企業主か)を問わず、「不当表示規制」も「景品規制」も、どちらのルールも適用されるからです。

どちらに違反しても、景品表示法違反となってしまいます。

景品表示法の2種類の規制と違反の関係

法律の名前 規制の種類 規制の対象 違反した場合
景品表示法 不当表示規制 表示(広告、宣伝、告知など) どちらも景品表示法違反になる!
景品規制 景品(いわゆる「おまけ」など)

 

不当表示規制への違反とは

では、景品表示法の定める2種類の規制のうち、「不当表示規制」について解説していきます。

不当表示規制は、企業による「不当な表示」を禁止するルールです。

不当表示規制についてはこちらの記事でも概要をまとめていますので、ぜひあわせてご覧ください。

「表示」とは?

不当表示規制は企業による「不当な表示」を禁止していますが、「表示」とはあまり聞きなれない言葉です。

「表示」とは何のことでしょうか。

「表示」とは、次の3つの条件をすべて満たすものをいいます(景品表示法第2項第4項)。

  1. 顧客を誘引するための手段として、
  2. 事業者が自己の供給する商品又は役務(サービス)の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う
  3. 広告その他の表示

参考:「表示に関するQ&A」Q1|消費者庁ウェブサイト

もう少し砕けた表現にすると、「表示」とは次の3つにすべてあてはまるもの、ということになります(※2)。

  1. 企業がお客さんを呼び寄せるために行う
  2. その企業がお客さんに売っているモノやサービスの内容、あるいはモノやサービスを購入する際の条件などに関する
  3. 広告、宣伝、告知など

※2 消費者庁ウェブサイト「表示に関するQ&A」Q1の記載をもとに、わかりやすい表現に改めました。

こう考えると、景品表示法の不当表示規制の対象となる「表示」とは、とても広い範囲をカバーしている言葉であることがわかります。

会社がお客さん集めのために自社の製品・サービスについて行う宣伝、広告、告知などは、基本的にすべて「表示」に該当するといえるでしょう。

「表示」の具体例

  • テレビCM
  • ラジオCM
  • 新聞の折り込みチラシ
  • 街角でくばる広告つきポケットティッシュの広告
  • レストランの店頭にあるプラスチック製のサンプル
  • お店の中に貼ってあるPOP広告
  • インターネット上の製品広告ページ
  • 通販ウェブサイトの商品紹介ページ
  • 製品のパッケージに書かれたイラストや文字
  • お店で口頭で行う商品説明や呼び込み

これらの具体例は、どれも、一般的には

  1. 企業がお客さんを呼び寄せる手段として、
  2. 自社がお客さんに対して売っているモノ・サービスの内容や、購入の条件などに関する
  3. 広告、宣伝、告知など

にあてはまるといえそうですから、これらは「表示」に該当するということになります。(※3)

映像、音声、画像、文章など、どんな方法であっても「表示」に該当する可能性がありますので注意が必要です。

※3 実際には、これらの具体例の中にあるものでも、「表示」の3つの条件に当てはまらないものもあり得ます。ここでは、一般的に「表示」の3つの条件に当てはまることが多いものとして具体例を列挙しています。

「不当な表示」とは?

さて、「表示」というのが何を意味するか、上記で解説しました。

ただ、不当表示規制は、企業による「不当な表示」を禁止するルールです。

では「不当な表示(不当表示)」とはなんでしょうか。

「不当表示」とは、「表示」に該当する広告、宣伝、告知などの中でも、
「優良誤認表示」にあたるもの
「有利誤認表示」にあたるもの
のいずれかをいいます(※4)。

※4 ただし、特別にこの2つ以外の不当表示もあります。詳しくは下記「ワンポイント」にて解説いたします。

景品表示法の不当表示規制は、企業が「不当な表示」をすることを禁止するルールですから、企業が「優良誤認表示」か「有利誤認表示」のどちらかをしてしまうと、その時点で景品表示法違反となります。

(もちろん、「その他」の不当表示をした場合も景品表示法違反です。)

不当表示規制 優良誤認表示
有利誤認表示
(その他特別な不当表示)

 

優良誤認表示について

ではまず、景品表示法の不当表示規制の2つのタイプのうち、「優良誤認表示(ゆうりょうごにんひょうじ)」について解説します。

「優良誤認表示」は、法律の文章(景品表示法の条文)では次のように書かれています。

優良誤認表示の法律の規定
(優良誤認表示とは)
商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる」表示(景品表示法第5条第1号)

参考:景品表示法|e-gov法令検索

これでは少しわかりにくいので、シンプルな表現にしてみましょう。

まず、「優良誤認表示」は、企業が行う「表示」のうち、商品やサービスの内容(つまり、商品・サービスそのものの性能、品質、内容、企画など)に関する表示を対象としています。

そして、「優良誤認表示」とは、そのような商品やサービスの内容に関する表示であって、次の①、②の2つのタイプのどちらかにあてはまるもののことをいいます。(※5)

①企業が売っている商品やサービスの内容(品質、性質、規格など)について、実際の内容よりも著しく優良であると示す表示

具体例

例えば、ある衣料品店A社が、自社で売っている商品は本当はカシミヤが80%のセーターなのに、お店の売場に「カシミヤ100%セーター」という店内広告を出していた場合

(解説)
カシミヤ80%か100%かは、セーターという製品の内容(品質や性質)です。

A社がお店に表示した「カシミヤ100%セーター」という広告を見れば、消費者は、「これはカシミヤ100%のよいセーターだな」と信じるでしょう。

しかし、実際にそのセーターはカシミヤ80%ですから、A社の店内広告の内容が実際のセーターの内容よりも、よいものになっています

このような場合には、優良誤認表示になる可能性があるということです。

 

②企業が売っている商品やサービスの内容(品質、性質、規格など)について、(本当は違うのに)競合他社の商品・サービスよりも著しく優良であると示す表示

具体例

例えば、家電メーカーB社が自社のエアコンのテレビCMに「この技術を用いた商品は日本で当社のものだけ」と表示していたが、本当は競争業者である家電メーカーC社も同じ技術を用いたエアコンを販売していた。

(解説)
あるすごい技術がエアコンに使われているかどうかは、エアコンという製品の内容(品質や性能)です。

消費者が、A社の「この技術を用いた商品は日本でA社のものだけ」というテレビCMを見れば、消費者は、「これは日本でA社だけの技術が使われているから他社のエアコンよりよいエアコンなのだな」と信じるでしょう。

しかし、実際にはその技術はほかの家電メーカーB社も採用しており、本当はA社のエアコンは他社のエアコンよりも別によいものではなかったわけです。

このような場合には、優良誤認表示になる可能性があるということです。

※5 消費者庁ウェブサイト「表示規制とは」の内容の一部をわかりやすさを重視して改変しています。

(優良誤認表示ー2タイプ)

優良誤認表示 企業が売っている商品やサービスの内容についての 「表示」であり(つまり広告、宣伝、告知などであり) ①実際の商品・サービスの内容よりも著しく優良であると示しているもの
②競合他社の商品・サービスよりも著しく優良であると、本当は違うのに示しているもの

 

このような「優良誤認表示」は、景品表示法で禁止される「不当な表示」のひとつです。

景品表示法の「不当表示規制」は、企業が「不当な表示」をすることを禁止するルールですから、企業が「優良誤認表示」を行ってしまった場合は、景品表示法違反となってしまいます。

 

優良誤認表示の違反事例

では、実際の優良誤認表示の違反事例を紹介します。

こちらは、いわゆるゲームガチャに関する広告が優良誤認表示だと判断されたケースです。

今回問題となった広告には、掲載されている55体のモンスターがすべて「究極進化」の対象になるようかのような画像が表示されています。

しかし実際には、この55体の中に「究極進化」の対象にならないモンスターもあったのです。

そのため、この広告が優良誤認表示であると判断されたものです。

(以上、消費者庁平成29年7月19日付ニュースリリースの内容をもとに作成しました。)

 

-ワンポイント-
本当のことを表示しても景品表示法違反!?優良誤認表示の特別なケース:不実証広告規制(景品表示法第7条第2項)

これまでに解説しましたとおり、優良誤認表示とは、表示(広告など)に書いてある商品やサービスの内容が、実際の商品やサービスの内容よりも、とてもよさそうに見える(「著しく優良」)場合のことでした。

消費者庁は、ある企業が優良誤認表示をしているのではないかという疑いを持ったときは、調査を行います。

その調査の結果、消費者庁が、「その企業が本当に優良誤認表示をしていた(つまり景品表示法違反であった)」と証明できるような材料を手に入れることができた場合に限り、違反企業に対して措置命令などの処分を出すのが普通です。

しかし、優良誤認表示には特別なパターンがあります。

この特別なパターンのことを「不実証広告規制(ふじっしょうこうこくきせい)」といいます。

不実証広告規制のパターンでは、消費者庁は、「この企業は優良誤認表示を行っているのではないか」と疑いを持ったときに、その疑われた企業に対して、「その表示が本当であることを示す証拠資料を出しなさい」と求めることができます。

資料の提出を求められた企業が、これを無視して資料を提出しなかったり、資料の提出はしたけれどもその資料がX社の表示が本当であることを示すようなものでなかった場合には、消費者庁は、特に調査などすることなく、ただちにX社に対して措置命令などの処分を出すことができます。

具体例

例えば、ある食品会社X社が、ダイエット用食品を販売していたとしましょう。

X社は、そのダイエット食品のインターネット広告に「1日2回、1か月飲み続けるだけで3キロやせます!」と表示していたとしましょう。

優良誤認表示は、実際の商品の内容よりも著しく優れているように見える表示のことですから、X社の広告が優良誤認であるかどうかは、X社のダイエット食品に、本当に1日2回を1か月続けて3キロやせる効果があるかどうかがポイントです。

普通の優良誤認表示のパターンの場合、消費者庁は、X社のような広告を見つけたときは、X社のダイエット食品に本当に表示どおりの効果があるかどうかを調査して、X社の広告が優良誤認表示であるかどうかを判断します。

しかし、不実証広告規制のパターンの場合、消費者庁は、自分で調査をするのではなく、X社に対して、「そのダイエット食品に、表示のとおり1日2回を1か月続けたら3キロやせるという効果があることを示す資料を出しなさい」と求めるのです。

そして、X社がそのような資料を出さなかったり、資料を出したとしてもその資料がX社のダイエット食品に表示のとおり1日2回を1か月で3キロやせるような効果があるという証拠にならない物であった場合は、消費者庁は、自分で調査することなく、X社を景品表示法違反として、すぐに措置命令などの処分を出すことができるのです。

ということは、もしX社が本当に1日2回を1か月続けるだけで3キロやせる画期的な食品を発明していたのだとしても、資料を出さなければ景品表示法違反になる、ということになります。

本当に違反があるかどうかを調査する普通の優良誤認表示のパターンを使うか、あるいは不実証広告規制のパターンを使うかは、消費者庁が裁量で決めてよい(=そのときの事情を見ながら消費者庁が自分で決めてよい)ことになっています。

これまでのところ、消費者庁は、このような不実証広告規制のパターンを、特に健康、ダイエット、環境などに関する商品の広告・宣伝に対してよく使っています

不実証広告規制の対象となると、広告に自社の商品の本当の性能を記載していた場合でも、消費者庁に対して資料を出せなければ、それだけで景品表示法違反になってしまいます。

逆にいえば、自社が持っている資料で証明できる商品の効果以上のことを宣伝してしまうと、景品表示法違反になりやすいということです。

自社製品の広告を出す場合には、その性能や効果がきちんと手元の資料で証明できるものであるか、確認することが必要です。

以上、優良誤認表示の中でも特別なパターンである不実証広告規制に関するワンポイントでした。

 

有利誤認表示について

次に、景品表示法の不当表示規制の2つのタイプのうち、「有利誤認表示(ゆうりごにんひょうじ)」について解説します。

「有利誤認表示」は、景品表示法の条文で次のように定められています。

有利誤認表示の法律の規定
(有利誤認表示とは)
商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示(景品表示法第5条第2号)

参考:景品表示法|e-gov法令検索

やはり法律の条文ではイメージがわきにくいですから、シンプルな表現にしてみます。

まず、「取引条件」という言葉を整理しておきます。

「取引条件」とは、モノやサービスそのものではなく、モノやサービスが企業から消費者に売られるときの価格、送料、商品引き渡しの時期、商品引き渡しの方法、包装のしかたなど、売り手・買い手の間でモノ・サービスが売られる際の条件のことをいいます。

「有利誤認表示」とは、この「取引条件」に関する不当表示です。

具体的には、「有利誤認表示」とは、次の2つのタイプのどちらかにあてはまるもののことをいいます。(※6)

①取引条件について、実際のものよりも、一般消費者にとって著しく有利であると一般消費者が誤認するような表示

具体例

ある家電量販店A社が、「先着100人だけがデジタルカメラを割引価格で購入できます」という広告を出していたが、実際には、人数に関係なく全員に同じ価格で販売していた。

(解説)
「先着100人だけが割引価格で買える」という広告を見た消費者は、今すぐ買えば、普通に買うよりも安い値段でデジタルカメラを買えると考え、「価格」という取引条件の面でとてもお得で有利だと信じるでしょう。

しかし、実際には人数に関係なく100人を超えてもみんな同じ価格で同じデジタルカメラを買えるというような場合、その広告が有利誤認表示になり得る、ということです。

 

②取引条件について、競合他社の取引条件よりも自社の取引条件の方が一般消費者にとって著しく有利であると一般消費者が誤認するような表示

具体例

携帯電話会社X社と携帯電話会社Y社がライバル関係にあって、X社が「当社の月額基本料はY社の半額!」のような宣伝をしたが、実際には、X社の月額基本料はY社とほぼ同じだった。

(解説)
X社による「当社の月額基本料はY社の半額!」という広告(「表示」)を見た消費者は、Y社で携帯電話を契約するよりX社で契約した方が「価格」という取引条件の面でとてもお得で有利だと信じるでしょう。

しかし、実際にはX社の月額基本料金はY社とほぼ同じだったわけで、X社の広告は実際とは違っていた、ということになります。

このような場合、X社の広告は有利誤認表示になり得る、ということです。

※6 消費者庁ウェブサイト「有利誤認とは」の内容の一部をわかりやすさを重視して改変しています。

(有利誤認表示ー2タイプ)

有利誤認表示 取引条件についての
(モノやサービスそのものではなく、モノやサービスが企業から消費者に売られるときの価格、引き渡しの時期、引き渡しの方法、包装のしかたなど、売り手・買い手の間でモノ・サービスが売られる際の条件についての)
「表示」であり
(つまり広告、宣伝、告知などであり)
①実際のものよりも、一般消費者にとって著しく有利であると一般消費者が誤認するようなもの
②取引条件について、競合他社の取引条件よりも自社の取引条件の方が一般消費者にとって著しく有利であると一般消費者が誤認するようなもの



「有利誤認表示」も、景品表示法で禁止されている「不当な表示」のひとつのタイプです。

したがって、企業が「有利誤認表示」をしてしまった場合には、景品表示法違反となってしまいます。

 

有利誤認表示の違反事例

では、実際の有利誤認表示の違反事例を紹介します。

キャンペーン価格に関する広告が有利誤認表示と判断された事例です。

今回問題となった広告の画像の左側には、いわゆるウイルス対策ソフトについて、「初夏のお得なキャンペーン30%OFF」、「実施期間:2017年7月2日(日)まで」として、「標準価格8,208円(税込) 今なら2,462円お得! → 30%OFF 特別価格5,746円(税込)」のような表示がされています。

しかし、実際には、そのウイルス対策ソフトが「標準価格」とされている8,208円で売られたことはいちどもなく、いつでも5,746円での購入が可能だったのです。

そのため、この広告が有利誤認表示であると判断されたものです。

景品表示法違反の事例については、こちらのページでさらに詳しく解説しております。

(以上、消費者庁平成30年3月22日付ニュースリリースの内容に基づき作成しました。)

 

優良誤認表示と有利誤認表示の違いは?わかりやすく比べてみよう

以上のように、「優良誤認表示」も「有利誤認表示」も、「不当な表示」として景品表示法によって禁止されており、企業がこれらを行うと、景品表示法違反になることを解説しました。

この2つは、名前もよく似ていますし、内容も複雑なので、ここで両者を比較して違いを確認しておきましょう。

(優良誤認表示と有利誤認表示の比較)

不当表示規制※7
優良誤認表示 企業が売っている商品やサービスの内容についての 「表示」であり(広告、宣伝、告知など) ①実際の商品・サービスの内容よりも著しく優良であると示しているもの
②競合他社の商品・サービスよりも著しく優良であると、本当は違うのに示しているもの
有利誤認表示 取引条件についての
(商品やサービスそのものではなく、商品やサービスが企業から消費者に売られるときの価格、引き渡しの時期、引き渡しの方法、包装のしかたなど、売り手・買い手の間で商品・サービスが売られる際の条件についての)
「表示」であり(つまり広告、宣伝、告知など) ①実際のものよりも、一般消費者にとって著しく有利であると一般消費者が誤認するようなもの
②取引条件について、競合他社の取引条件よりも自社の取引条件の方が一般消費者にとって著しく有利であると一般消費者が誤認するようなもの


※7 不当規制表示には、優良誤認表示と有利誤認表示の2つがおもなものですが、この2つ以外にも不当表示規制になる類型のものがあります。詳しくは下記の「ワンポイント」で解説しています。

このように比較してみると、優良誤認表示と有利誤認表示は、どちらも「表示」を対象にした規制であることがわかります。

一方、

  • 優良誤認表示は、企業が売っている商品やサービスの内容そのものに関する表示を対象とするルール
  • 有利誤認表示は、商品やサービスの内容そのものではなく、商品やサービスが企業からお客さんに売られる際の条件(取引条件)に関する表示を対象とするルール

という違いがあることもわかります。

不当表示規制は複雑であるため、日々のビジネスの中で景品表示法違反をおかさないように、ルールの内容をしっかりと把握し、自社のビジネスにとってピンポイントで適切な対応をとれるようにしておきましょう。

 

その他の不当表示規制ー優良誤認表示と有利誤認表示以外にも不当表示規制がある!

ここまで、景品表示法の不当表示規制の2本柱である優良誤認表示と有利誤認表示について解説してきました。

しかし、じつは、景品表示法の不当表示規制はこの2本柱だけではありません

これまでの歴史の中で、優良誤認表示と有利誤認表示の2本柱だけではカバーしきれない部分でも企業による不当な表示が消費者を困らせていた領域があったため、そのような領域に対して、特別に、2本柱以外の不当表示規制が作られたのです。

ここでは、それら特別な不当表示規制のうち、主なものを解説します。

自社のビジネスにあてはまりそうなものがないか、念のためチェックしておきましょう。

原産国の不当表示

商品の原産国を表示する場合の規制です。

業種を問わず、商品の原産国について不当な表示をすると、景品表示法違反となります。

例えば、次のようなケースは、原産国の不当表示として景品表示法違反となる可能性があります。

  • 日本産の商品を、一般消費者から見て日本産であるとわかりにくくするような表示
    例:日本産のチーズのパッケージにフランスの国旗が大きくついている場合
  • 外国産の商品を、一般消費者から見てどの国が原産であるかわかりにくくするような表示
    例:アメリカ製のバッグの広告に日本語で「ローマからやってきた」のように表示している場合

おとり広告規制

いわゆる「おとり広告」は、「不当な表示」に該当するものとされており、禁止されています。

企業が実際に売る商品を持っていないとか、商品は持っているけど売るつもりがまったくないなど、消費者がその商品を買える可能性がないのに、消費者に対してあたかも買えるかのような表示をすることは、おとり広告になります

例えば、次のようなケースは、おとり広告として景品表示法違反になる可能性があります。

  • 「ただいまキャンペーン中!アップルウォッチ11,111円」という広告を出したのに、店にアップルウォッチを準備していない場合
  • 「PS5入荷!」という広告を大々的に出したが、実際にはPS5が1台しか入荷しておらず、広告を見た人全員が買えないことがわかっている場合

このようなおとり広告規制は、業種を問わず適用されます。(※8)

※8 ただし、不動産業界に対してはおとり広告の特別なルールが定められています。

その他の特別な不当表示規制

上記のほか、次のような特別な不当表示規制もあります。(この記事では解説を割愛します。)

  • 無果汁の清涼飲料水等についての表示
  • 有料老人ホームに関する不当な表示

 

景品規制への違反とは

ここからは、景品表示法の定める2種類の規制のうち、「景品規制」について解説していきます。

景品表示法の2種類の規制と違反の関係

法律の名前 規制の種類 規制の対象 違反した場合
景品表示法 不当表示規制 表示(広告、宣伝、告知など) どちらも景品表示法違反になる!
景品規制 景品(いわゆる「おまけ」など)

景品規制は、企業による「過大な景品」を禁止するルールです。

企業が消費者に対して「過大な景品」を配ると、このルールに違反したことになり、景品表示法違反となります。

企業が消費者向けのキャンペーンなどをするときは、景品規制に違反しないためには、次のチャートに沿って判断をするのがよいでしょう。

こちらの記事にも景品規制の概要をまとめています。ぜひあわせてご覧ください。

あわせて読みたい
景品規制とは?
まず確認、「景品」とは何だろう?

景品表示法の景品規制のルールによって規制される「景品」(※9)とはなんでしょうか。

景品表示法の条文では、次のようになっています。

※9 景品表示法では、正確には「景品類」といいます。ここでは、わかりやすさを優先して「景品類」の代わりに「景品」という言葉を使って解説していきます。

景品表示法第2条第3項

この法律で「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む。以下同じ。)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。

法律の条文のままではわかりにくいので、少しブレイクダウンしてみますと、「景品」とは次の3つの条件のすべてに当てはまるもののことをいいます。

(1) お客さんを引き寄せる手段として
(2) 企業が自社の商品・サービスの販売に付随してお客さんに提供する
(3) 物品や金銭など経済上の価値のあるもの

具体例

  • 紳士服店が、お客さんに来店してもらうために来店者にプレゼントするマグカップ
  • 自動車販売店が、お客さんに来店してもらうキャンペーンの一環で、車の買った人の中から抽選で1名にプレゼントする旅行券
  • 商店街にあるたくさんのお店が、お客さんに来てもらうため共同で行う商店街年末キャンペーンで、お客さんに福引をしてもらってその結果に合わせてプレゼントする賞品(ティッシュやハワイ旅行)

このような具体例は、いずれも、上記の3つの条件のすべてに当てはまっているといえそうです。

したがって、景品表示法の「景品」に該当することになります。

キャンペーンなどを企画するときは、まず、自社がお客さんに提供する「景品」があるかを確認しましょう。

 

景品の提供方法(配り方)もチェック!3種類の方法がある

さて、STEP1では、景品規制の対象となる「景品」を確認しました。

景品表示法の景品規制は、企業による「過大な景品」を禁止するルールです。

「過大」とは、「多すぎる」ということです。

では、どのラインを超えたら「過大な景品」、つまり「多すぎる」景品になるのでしょうか。

景品表示法では、「景品」の提供方法(配り方)について、次3種類のタイプを定めています。

  • 共同懸賞(きょうどうけんしょう)
  • 一般懸賞(いっぱんけんしょう)
  • 総付(そうづけ)

そして、企業が「景品」を提供する方法が、その3タイプのうちのどれに該当するかによって、「過大(多すぎ)な景品」になるラインが変わります

ですので、景品規制に違反しないためのSTEP 2として、自社のキャンペーンでお客さんに「景品」を提供する際に、自社が3種類のうちどの提供方法(3種類)を用いるのか、確認しましょう

景品規制で定められている景品の配り方は次のとおりです。

自社のキャンペーンや企画がどれに該当するか、チェックしてみましょう。

規制の対象 「景品」の配り方のタイプ 内容 具体例
景品規制 景品 懸賞 共同懸賞
  • 偶然性(くじなど)
  • 優劣(クイズの正解者など)

などによって景品を提供すること。
ただし、これを複数の企業が共同して行うものが「共同懸賞」となります。

  • 商店街の店舗が合同して行う福引
  • 複数の旅行会社が共同して行う景品プレゼントキャンペーン
一般懸賞
  • 偶然性(くじなど)
  • 優劣(クイズの正解者など)

などによって景品を提供すること。
ただし、これをひとつの企業が単独で行うものが「一般懸賞」となります。

  • デパート会社が自社だけで行う福引
  • クレジットカード会社が自社だけで行う、利用者の中から出抽選で〇〇名をテーマパークにご招待
総付(そうづけ) 上記の「懸賞」以外の方法で一般消費者に景品を提供する場合は、すべて「総付」になります。
  • 商品を買った人全員に景品をプレゼント
  • 来店した方全員に景品をプレゼント
  • 先着〇〇名様に景品をプレゼント



自社が行うキャンペーンの「取引の価額」を確認しましょう!

次に、景品規制に違反しないためのSTEP3では、自社が景品の提供をして行うキャンペーンの「取引の価額(とりひきのかがく)」を判断します

「取引の価額」は、比較的難しい判断です。

「取引の価額」は、下記の表に書かれているケースごとに異なりますので、次の表をご参照のうえチェックしてみてください。

ケース 取引の価額 具体例
取引の価額 お客さんの購入金額に応じて、お客さんに渡す景品の内容や価値が決まる場合 お客さんの購入金額 5000円以上お買い上げのお客様は福引を1回ひけます
→「取引の価格」は5000円
購入してくれたお客さん全員に、(購入金額に関係なく)景品を渡す場合 次のどちらか(※10)
・100円
・売っている商品・サービスの中でいちばん安いものの価格
当店の商品をどれでも購入してくれたお客様に記念品をプレゼント
→「取引の価格」は100円か、その店で売っているいちばん安い商品の価格
購入したお客さんだけでなく、店に来てくれた人全員に一律に景品を渡す場合 100円 来店してくれた方全員に粗品をプレゼント
→「取引の価額」は100円

※10 ただし、売っている商品・サービスの中で一番安いものの価格が100円より安いときは、取引の価額はその一番安い商品・サービスの金額になります。100円とすることはできません。

自社がキャンペーンをするとき、「取引の価額」を判断するのはちょっとイメージがつかみにくいかもしれません。

上記の表や、こちらの消費者庁のウェブサイトも参考にされてください。

参考:景品に関するQ&A|消費者庁ウェブサイト

判断に困るようであれば、景品表示法に詳しい弁護士に相談するのもよい方法です。

 

景品の価値の上限を確認しよう!

さて、STEP 3まで確認できたら、自社がお客さんに提供してよい景品の上限額を確認します。

景品の上限額は、景品の提供方法(STEP 2で確認したもの)と取引価額(STEP 3で確認したもの)によって決まっています。

企業がこの上限額を超える価値の景品を提供すると、「過大(多すぎ)な景品」となって、景品表示法違反となります。

景品1つの価値の上限だけでなく、提供する景品全体の価値についても上限金額がありますのでご注意ください。

景品規制に違反しないための判断の具体例

具体例

例えば、3万円以上の高級な衣料ばかりを取り扱っている高級服飾店があったとしましょう。

このお店が、「店の商品10万円以上をお買い上げのお客様の中から抽選で3名に、8万円の価値のあるダイヤモンドをプレゼントする」というキャンペーンを企画したとしましょう。

このお店では、このキャンペーンに関する売上は1000万円を予定しています。

 

STEP 1

まずSTEP 1として、「景品」があるかどうかを確認します。

このケースの場合、ダイヤモンドは「景品」にあたります(STEP 1に書かれた判断基準をご覧ください)。

STEP 2

次に、STEP 2として、景品の提供方法が3タイプのうちのどれにあたるかを確認します。

今回は、ほかのお店と共同ではなく単独で、「抽選」という偶然性を使って景品を提供するお客さんを決めるというキャンペーンですから、STEP 2の表を見ると、3タイプのうち「一般懸賞」にあたることがわかります。

STEP 3

次に、STEP 3として「取引の価額」を調べます。

今回は、「10万円以上お買い上げのお客様の中から抽選」ということですから、お客さんの購入額に応じて景品が決まるケースです。

したがって、STEP 3の表を見ると、「取引の価額」は、お客さんの購入額になります。

今回の場合は、10万円が「取引の価額」ということです。

STEP 4

ここまできたら、STEP 4として景品の上限額を調べることができます。

景品の提供方法は「一般懸賞」、「取引の価額」は10万円です。

STEP 4の表に照らし合わせてみると、「一般懸賞」の「5000円以上」のところがあてはまります。

したがって、

  • 景品1個の上限額は10万円
  • 商品全部の総額の上限額は、キャンペーンによる売上予定額の2%

ということになります。


まず、今回の景品であるダイヤモンドの価値は8万円ですから、景品1個の上限額10万円の範囲内におさまっています。

景品1個の価値としてはセーフです。

次に、景品全体の総額の上限値を考えてみます。

お店が今回のキャンペーンで予定している売上は1000万円です。

景品全体の総額の上限値は、キャンペーンによる売上予定額の2%ですから、景品全体の総額の上限値は20万円ということです。

ところが、今回の景品全体の総額は、8万円の価値のあるダイヤモンドが3個ですから、24万円ということになって、上限値である20万円を超えてしまいます。これはアウトです。

以上のように考えてみると、このお店がこのキャンペーンを行ってお客様にダイヤモンドを提供することは、景品表示法違反になることがわかります。

ですので、このお店はこのキャンペーンの企画を考え直した方がよいでしょう。

このように、企業がキャンペーンなどを計画するときは、事前に上記のような検討を行って、景品規制の違反(=景品表示法の違反)にならないように注意しましょう。

 

-ワンポイント- オープン懸賞

景品表示法の景品規制の対象となるのは、「景品」をお客さんに提供する場合です。

そして、上記のSTEP 1で説明しましたように、「景品」とは、次の3つの条件の全部にあてはまるもののことです。

(1) お客さんを引き寄せる手段として

(2) 企業が自社の商品・サービスの販売に付随してお客さんに提供する

(3) 物品や金銭など経済上の価値のあるもの

逆にいえば、この3つのうち、ひとつでもあてはまらないものがある場合は「景品」に該当しませんので、景品規制の対象外になります。

例えば、あるウェブ通販企業が、「インターネット上でエントリーした方の中から抽選で3名様に賞品をプレゼント」のような企画をしたとします。

この企画は、「インターネット上でエントリー」すれば参加できる点に特徴があります。

つまり、消費者は、この企画に応募するためにお店に来店する必要もありませんし、何か商品を買う必要もありません。

ただ「インターネット上でエントリー」すれば、誰でも応募できるのです。

このようなケースでは、この懸賞は、企業が売っている商品やサービスとは切り離されて行われているといえます。

つまり、企業が自社の商品・サービスの販売に「付随して」お客さんに景品を提供しているのではなく、自社の商品・サービスの販売とは切り離して景品を提供しているのです。

したがって、このような懸賞は、上記の3つの条件のうち、(2)にあてはまりません。

このように、「景品」の3条件にひとつでも当てはまらない形で行われる懸賞のことを「オープン懸賞」といいます。

景品規制の対象となる「景品」に該当するのは、上記の3つの条件の「全部」にあてはまる場合ですから、(2)にあてはまらないオープン懸賞は、景品規制の対象外になります。

景品規制の対象外ということは、景品の金額に上限がないということです。

つまりオープン懸賞については、懸賞の商品の金額には上限がなく、いくらでも高い賞品を設定してもよいのです。

 

 

景品表示法に違反した場合の罰則とは?事業への影響は?

さて、ここまで、景品表示法の2つの規制である「不当表示規制」と「景品規制」のルールを解説してきました。

もし企業が景品表示法に違反してしまった場合、どんな不利益があるでしょうか。

違反の度合いがそれほど高くなく、消費者に対する害が少ないなどの事情がある場合などには、景品表示法に違反しても、消費者庁や都道府県から指導を受けるだけで済むケースもあります。

しかし、一方で、違反の度合いによっては、違反した企業に対して景品表示法に基づく処分や刑罰が課されることがあります。

景品表示法では、景品表示法に違反してしまった企業に対し、3種類の処分や刑罰を定めています。

その3種類とは次のとおりです。

① 措置命令(景品表示法7条1項)
② 課徴金納付命令(景品表示法8条1項)
③ 刑事罰(景品表示法36条など)

①「措置命令」- 行政庁から命令を受ける

措置命令とは、行政庁(消費者庁や都道府県)が、景品表示法に違反した企業(つまり、不当表示規制に違反したり景品規制に違反したりした企業)に対し、命令を出すことです。

命令の内容は、「景品表示法に違反する行為をやめなさい」という命令(差止めの命令)や、「再び景品表示法に違反しないようにするために、会社の業務を改善しなさい」という命令などがあります。

企業が景品表示法に違反したときは、このような「措置命令」を受けることがあります。

行政庁から命令を受けることは企業にとってたいへん重いことです。

命令にしたがうために迅速な対応をとらなければなりません。

企業にとって負担が大きいといえるでしょう。

さらに、命令を受けるだけでなく、措置命令を受けた企業の名前と違反の内容が、消費者庁のウェブサイトで公表されてしまいます。

積み上げてきた企業のブランドや信頼に悪影響が生じるかもしれません。

措置命令は、「不当表示規制」に違反した場合も「景品規制」に違反した場合も、どちらの場合でも課されることがあります。

 

②「課徴金納付命令」 – 違反によって稼いだ利益の没収

景品表示法の不当表示規制に違反した企業には、行政庁(消費者庁)から、「課徴金納付命令」が出されることがあります

課徴金納付命令とは、「不当表示規制に違反してもうけた利益の一部を国に納めなさい」という命令のことです。

違反企業が国に支払うお金のことを「課徴金」と呼びます。

企業が不当表示規制に違反した表示をして、消費者にたくさんの商品を売り、お金をもうけた場合、そのもうけは景品表示法に違反する行為から得た利益といえます。

そこで、国が違反企業から「課徴金」としてその利益を取り上げる、というイメージです。

課徴金の金額は、不当表示規制に違反した表示を出していた期間に、その違反表示に関して得られた売上の3%とされています。

これは「売上」の3%ですから、企業にとっては経済的に大きなダメージになることがあります。

なお、課徴金納付命令の対象は「不当表示規制」の違反だけです。

「景品規制」の違反には、課徴金納付命令が課されることはありません。

 

③「刑事罰」- 犯罪として処罰される

「刑事罰」は、検事によって起訴され、刑事裁判を経て、裁判所が有罪判決を下せば、犯罪として処罰されるものです。

企業が景品表示法に違反しても、すぐに刑事罰になるわけではありません。

ただし、行政庁から①の措置命令や②の課徴金納付命令を受けたにもかかわらず、その命令を守らなかったり、無視したりすると、「刑事罰」として、2年以下の懲役または300万円以下の罰金という刑罰に処せられることがあります(景品表示法36条)。

違反に対する処分 どんな処分? どんな場合に課される? 処分の内容
措置命令 行政庁による処分 景品表示法違反をした場合
  • 差止めの命令 – 「違反行為をやめなさい」
  • 違反をもういちど起こさないための命令 – 「こういう点を改善しなさい」
課徴金納付命令 行政庁による処分 景品表示法違反のうち、不当表示規制をした場合 「違反で稼いだ売上の3%を国に納付しなさい」という命令
刑事罰 刑事裁判を経て判決 措置命令や課徴金納付命令を守らなかった場合
  • 2年以下の懲役

または

  • 300万円以下の罰金



以上のように、企業が景品表示法に違反してしまった場合、企業が被るであろう不利益の大きさは無視できません。

景品表示法に違反するリスクを普段から低減しておくことが重要になるでしょう。

以上、景品表示法に定められている、景品表示法に違反した企業に対して課される処分や刑罰を解説しました。

 

-ワンポイント- 適格消費者団体による差止請求

企業が不当表示規制の違反となる「優良誤認表示」や「有利誤認表示」をしてしまったとき、「適格消費者団体」という団体から、特別な形の訴訟を提起されることがあります。

一般に、民間vs民間で行われる訴訟のことを「民事訴訟」といいます。(これに対して、国(政府を代表する検察庁)vs容疑者で行われる犯罪と刑罰に関する訴訟は「刑事訴訟」です。)

民事訴訟は、本人vs本人で行われるのが普通です。

例えば、交通事故の被害者が、加害者(車を運転していた人)に対して、治療費や慰謝料の支払いを求めて行う民事訴訟では、被害者・加害者という、その問題の「本人」どうしの間で裁判が行われます。

したがって、加害者の近所の人とか被害者の親戚とかが本人の代わりに民事訴訟をすることはできません。

しかし、景品表示法には、この原則とは異なった特別な形の民事訴訟が定められています。

それが、「適格消費者団体による差止請求」です。

「適格消費者団体」とは、消費者を守るための活動をしているNPO法人などで、政府から認定を受けているものをいいます。

適格消費者団体の一覧は、消費者庁のこちらのウェブサイトをご覧ください。)

適格消費者団体は、企業が景品表示法の違反行為である優良誤認表示や有利誤認表示を行っているときは、その企業を相手として、「違反行為をやめなさい」という判決を求める民事訴訟(差止請求訴訟)を起こすことができます

これを「適格消費者団体による差止請求」といいます(景品表示法30条)。

例えば、ある企業が、顔用のクリームを売っていたとします。

この企業が、本当はそのクリームにそんな効果はないのに、「このクリームを使うと3か月で必ず顔のシミが消えます」という表示をしていたとしましょう。

これは、「優良誤認表示」になりそうです。

普通の民事訴訟であれば、本人どうしの間でしか裁判ができません。

したがって、この企業に対して一消費者が民事訴訟を起こすことができるのは、実際にそのクリームを使って害が出たなど、その消費者が企業との間の紛争問題の「本人」になった場合だけです。

しかし、景品表示法が定めている民事訴訟に関する特別なルールによって、適格消費者団体は、企業との紛争問題の「本人」になっていなくても、企業に対して「優良誤認表示をやめなさい」という判決を求めて民事訴訟を起こせることになっているのです。

つまり、企業が優良誤認表示や有利誤認表示をしてしまったときは、行政からの処分を受ける可能性があるだけでなく、適格消費者団体からの差止請求によって、民事訴訟を提起される可能性もあるということになります。

民事訴訟を提起された場合には、企業は、訴訟対応をしなければなりません。

一般に、訴訟対応をするのは、その訴訟に勝っても負けても、いずれにしても企業にとって重い負担になります。

なお、適格消費者団体がこのような裁判を起こすことができるのは、企業が「優良誤認表示」か「有利誤認表示」を行った場合だけです。

その他の景品表示法違反の場合は、このような特別な形の民事訴訟は認められていません。

 

 

景品表示法違反はどのように発覚する?違反した場合の調査の流れ

すでに解説しましたように、企業が景品表示法違反をした場合、行政庁から措置命令などの処分を受けることがあります。

では、行政庁はどのようにして企業の景品表示法違反を知り、どのような流れで処分を決めるのでしょうか。

景品表示法違反の取り締まりを担当しているメインの行政庁は、消費者庁です。

さらに、都道府県(場合によっては公正取引委員会)も、景品表示法違反の取り締まりを行います。

一般に、企業が景品表示法に違反してしまい、措置命令などの処分を受けることになるまでに、次のような経緯をたどります。

行政庁は企業による景品表示法違反にどうやって気づくの?

では、消費者庁などの行政庁は、企業による景品表示法違反があったことをどうやって知るのでしょうか。

第一に、行政庁が自分で違反に気づくことがあります。

消費者庁などの行政庁は、企業による景品表示法違反から消費者を守るのが役目ですから、企業による景品表示法違反にはいつも目を光らせています。

その活動の中で、行政庁が自分で企業の違反を見つけることがあるのです。これを「職権探知」といいます。

第二に、消費者から行政庁に対して企業による景品表示法違反の情報が提供されて、それによって行政庁が企業の景品表示法違反を知る、ということがあります。

例えば、消費者庁は、このようなウェブページを設けて、景品表示法違反の情報提供を国民に広く呼び掛けています。

景品表示法の相談・被疑情報の受付窓口|消費者庁ウェブサイト

インターネットのオンラインフォームを利用したり、郵送や電話による情報提供もできます。

これを使えば、誰でも消費者庁に対して企業による景品表示法違反を通報できるのです。

以上のような方法で、消費者庁などの行政庁は企業による景品表示法違反を知ります。

消費者は誰でも情報提供をすることができますから、企業が景品表示法違反をしてしまった場合に、行政庁の目から違反を隠すのは難しいといえるでしょう。

そのためにも、日ごろから景品表示法違反にならないように常に気を付けておくことが大切です。

 

景品表示法違反の調査の流れ

行政庁が景品表示法違反を知ると、必要に応じて調査を始めます。(必ずしも全部の案件について調査を行うわけではありません。)

調査開始から、措置命令や課徴金納付命令が出されるまでの流れは、消費者庁の次のウェブサイトに記載されています。

いちど目を通しておくのがよいでしょう。

景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか?|消費者庁ウェブサイト

 

 

景品表示法違反とならないために企業が押さえておくべきポイント

景品表示法違反にならないために、企業が押さえておくべきポイントをあげていきます。

まずは規制の内容をしっかりと理解する!

企業が景品表示法違反にならないようにするためには、何よりもまず、景品表示法によって企業に対してどのような規制が課されているか、正しく理解することが大切です。

これまで解説してきましたように、景品表示法は、「不当表示規制」と「景品規制」という、異なるものを対象とした2種類の規制を設けています。

「不当表示規制」は「表示」を対象とした規制であり、「景品規制」は「景品」を対象とした規制です。

ここをしっかりと理解しておかなければ、自社がいつどのような場合に景品表示法に気を付けなければならないか、判断がつかなくなってしまいます。

法律の名前 規制の種類 規制の対象
景品表示法 不当表示規制 表示(広告、宣伝、告知など)
景品規制 景品(いわゆる「おまけ」など)

企業は、自社のビジネスを進める中で、

  • 「表示」(広告、宣伝、告知など)
  • 「景品」(おまけ、粗品、プレゼントなど)

このどちらかを行う場合には、必ず景品表示法に違反しないかの確認をするようにしましょう。

また、「不当表示規制」と「景品規制」は、その内容がまったく違います。

さらに、「不当表示規制」には、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」の2つの大きなカテゴリがあり、名前は似ているのに、内容は異なっています。

このように、景品表示法の詳細はたいへん複雑ですので、この記事をご参考にしていただき、また、消費者庁のウェブサイトなどもご覧になって、規制の中身をしっかり理解していきましょう。

【参考】
消費者庁ウェブサイト「表示に関するQ&A」:
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/representation/

消費者庁ウェブサイト「景品に関するQ&A」:
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/premium/

景品表示法の規制をよく知ることで、景品表示法違反の回避に役立てることができるはずです。

 

「事前の検討」を絶対に忘れずに!違反は後から取り消せません

企業が消費者向けの「表示」(広告、宣伝、告知など)をするときや、消費者に対して「景品」(おまけ、粗品、プレゼントなど)を提供するような場合、自社の計画やプランが景品表示法に違反する可能性がないか、必ず事前にしっかりと確認しましょう

例えば、ある企業が事前に不当表示規制に違反する可能性があるかどうか確認せずに広告を出してしまい、その後で、その広告が「優良誤認表示」などに該当するものであったと気づくことがあります。

しかし、後で気づいても、自社がすでに景品表示法違反をしてしまったという事実を取り消すことはできません

「景品」についても同様です。

自社の景品が景品表示法違反になるかどうかを事前にあまり確認せずにお客さんに「景品」を提供してしまい、あとで「過大な景品」だったとわかったような場合には、自社が景品表示法に違反したという事実はもう取り消すことができません。

特に、セールやキャンペーンをする場合は、お客さんへの宣伝告知のために「表示」をすることになるでしょうし、お客さんへの特典として「景品」を提供することも多いでしょう。

このような場合は、キャンペーンを実施する前に、あらかじめ「不当表示規制」と「景品規制」の両面から、自社の計画が景品表示法に違反していないかを確認しておきましょう。

 

「うっかり違反」も景品表示法違反!わざとじゃなくても違反ですー
日ごろから会社みんなで景品表示法への意識向上を

企業がわざと景品表示法の「不当な表示」や「過大な景品」を行った場合には、当然、景品表示法違反となります。

しかし、じつは、企業がわざと景品表示法に違反した場合だけでなく、景品表示法のことをよく知らないまま、違反とはまったく気づかずに「不当表示規制」や「景品規制」に違反した場合にも、やはり景品表示法違反となってしまうのです。

「知らなかった」ではすまされないのが景品表示法違反です。

そのため、普段から企業全体で景品表示法に関する意識を高めておくことが大切です。

特に、広告やプロモーション活動を担当する部署には、定期的に講習会を実施するなど、景品表示法に関する正しい知識と高い意識を持ってもらうようにしましょう。

 

「お客さんの視点で考える」ことが大切!消費者に対して誠実な姿勢で!

景品表示規制の中でも表示規制は、企業が出した広告、宣伝、告知などの「表示」をお客さんが見た時に、お客さんがどのように感じるかがポイントです。

わざとお客さんに誤解を与えて商品を買わせようとする広告はもちろんいけませんが、わざとでなくとも、自社の広告がお客さんから見て誤解を招きやすいものであったり、お客さんが実際の商品よりもよいものだと思い込んでしまう可能性があるなどの場合は、その広告が不当表示規制の違反になってしまう場合がありえます。

景品表示法(不当表示規制)違反のリスクを減らすには、お客さんの立場から、わかりやすく、誤解のないような表示をこころがけることが大切です。

 

景品表示法に詳しい弁護士に相談!

景品表示法は、違反すると厳しい処分が課される可能性もあるため、消費者向けのビジネスを営む企業にとっては重要度の高い法律です。

一方で、今まで解説してきましたように、景品表示法による規制の内容は複雑で、簡単ではありません。

判断に迷ったときには、景品表示法に詳しい弁護士にアドバイスを求めるのもよい方法です。

キャンペーンなどを企画したときは、自社の企画が景品表示法に違反している可能性がないか、弁護士に意見を求めることもできます。

また、日ごろから社員の景品表示法に対する意識を高めるため、必要であれば、弁護士に社内講習会の講師の依頼を相談することもできます

迷ったら早めに景品表示法に詳しい弁護士に相談してみるのもよいでしょう。

 

 

まとめ

景品表示法違反について、まとめます。

  • 景品表示法は2種類の異なる規制を定めている。どちらに違反しても景品表示法違反!
法律の名前 規制の種類 規制の対象 違反した場合
景品表示法 不当表示規制 表示(広告、宣伝、告知など) どちらも景品表示法違反になる!
景品規制 景品(いわゆる「おまけ」など)
  • 不当表示規制は「優良誤認表示」と「有利誤認表示」の2本柱。さらに、この2つ以外に特別なタイプの不当規制表示にも注意!
  • 「優良誤認表示」は企業が売る商品・サービスの内容を実際よりもよく見せる表示(※11)。企業が優良誤認表示を行うと、景品表示法違反に。
  • 「有利誤認表示」は企業が売る商品・サービスの内容そのものではなく、お客さんがそれを買うときの価格など、取引の条件に関して実際よりもよく見せる表示(※11)。
    企業が有利誤認表示を行うと、景品表示法違反に。
  • 景品規制は、企業がお客さんに提供する景品の上限額を定めている。景品の価値が上限額を超えたら景品表示法違反。
  • 景品の上限額は、景品の提供の方法によって異なる。自社が景品の提供をどの方法で行うのか確認しよう。
  • 景品表示法に違反した企業には、措置命令、課徴金納付命令、刑事罰などの処分を受ける可能性が。処分を受けた企業は公表される!
  • 処分を受けた企業の数は大幅増加して高止まり。景品表示法は企業にとって無視できないリスク。
  • 処分を下すのは消費者庁などの行政庁。企業による景品表示法違反は、一般消費者からいつでも消費者庁などに通報できる
  • 景品表示法違反をしないためには、日ごろから規制の内容をよく知っておくこと。キャンペーンや広告など、行動する前に必ず景品表示法違反の可能性を確認しよう。「うっかり」でも違反になる!
  • 判断にまよったときは景品表示法に詳しい弁護士のアドバイスを!

※11 わかりやすさを優先して簡略な表現をしています。正しい内容はこの記事の前半、及び景品表示法をご参照ください。

以上、景品表示法の違反について解説いたしました。

この記事が企業のみなさまのお役に立ちますと幸いです。

 

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