弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

支払督促(しはらいとくそく)とは、未払い代金や貸付金の回収を目的とした、簡易裁判所を通した法的督促手続きです。
この制度は、スムーズに行けば、通常の裁判よりも手続きが簡単で、費用や時間も抑えられる点が特徴です。
ただし、相手の対応や書類の不備によっては、手続きが進まなかったり、通常訴訟に移行するリスクもあるため注意が必要です。
この記事では、支払督促の仕組み、申立ての流れ、費用、書類の書き方、異議申し立てがあった場合の対応までを、弁護士が詳しく解説します。
※裁判所から「支払督促」が届いて焦って来られた方は、「よくある質問(届いた方向け)」をご覧ください。
目次
支払督促とは

支払督促(しはらいとくそく)とは、お金を払ってもらえない相手に対して、簡易裁判所を通じて支払いを求める手続きのことです。
たとえば、「貸したお金が返ってこない」「売掛金の支払いがない」といった場合に、裁判所から相手に対して支払いを命じる文書を送ってもらう制度です(民事訴訟法382条以下)。
「支払督促」という言葉だけを聞くと、単に相手に催促することと思われがちですが、ここでいう支払督促は、法律に基づいた正式な手続きを指します。
つまり、「相手が約束を守らず、お金を払ってくれない状態(債務不履行)」のときに使う、債権回収のための法的手段です。
債務不履行についての解説は、以下のページをご覧ください。
参考:支払督促|裁判所
債権者が知っておくべき「支払督促」の4つの特徴

支払督促とはどのような手続きであるか、まずは特徴に沿って制度の概要をご説明します。
①債権者からの申し立てでスタート
支払督促は、債権者が簡易裁判所の書記官に対して申し立てることによって開始します(支払督促の申立て 第386条)。
引用元:民事訴訟法|電子政府の総合窓口
②裁判所には行かない「書面審査のみ」で判断
支払督促の申立てがあると、裁判所の書記官がこれを審査し、支払督促を発するかどうかを判断します。
書記官とは、裁判所で裁判手続きの事務を行う職員のことです。
判断するのは裁判官ではなく裁判所の書記官ですので、通常の裁判とは異なり証拠調べ(証拠を確認する手続のことです。)は行われません。
あくまで提出された書類に不備がないかといった形式的な内容だけが審査されます。
つまり、債権者が提出した申立書や請求内容をもとに、法律に則って機械的に支払督促を発するかどうかが決まるのです(支払督促の発付等 386条)。
③相手から異議が申し立てられると通常の裁判(民事訴訟)へ移行
支払督促は、債権者の一方的な主張に基づいて裁判所から送られるものです。
そのため、相手(債務者)が「納得できない」「支払う理由がない」と考えた場合は、届いてから2週間以内に「異議申し立て」ができます。
この「異議申し立て」があると、支払督促の手続はそこで終了となり、通常の民事訴訟に移行します。
この時点で、債権者は相手を訴えたのと同じ扱いになり、正式な裁判が始まります。
④異議が出なければ仮執行宣言へ移行
一方、相手方が2週間以内に異議を申し立てなければ、債権者は「仮執行宣言(かりしっこうせんげん)」を申し立てることができるようになります。
これは、「このまま支払わなければ、相手の財産を差し押さえますよ」という警告のようなものです。
仮執行宣言を申し立てると、書記官は仮執行宣言付きの支払督促を債務者に送達します。
これに対しても債務者は異議を申し立てることができ、異議が申し立てられれば、同じく民事訴訟へと移行します。
他方で、仮執行宣言付きの支払督促に対しても異議が申し立てられなければ、法的には裁判を起こして勝訴判決を得たのと同じ扱いとなり、相手の財産を差し押さえるなどの強制執行を申し立てることが可能になります。
支払督促と督促状との違い
実務では、支払督促の手続きをとる前に「督促状(とくそくじょう)」というものを送付することがあります。
名前に同じ「督促」とつきますが、その中身と法的な効果はまったく異なります。
- 督促状
「期限が過ぎているので支払ってください」と促す、単なる私的な「手紙」にすぎません。これ自体に相手の財産を差し押さえるような法的な強制力は一切ありません。
- 支払督促
簡易裁判所という国家機関を通じて行う正式な法的手続きです。放置した相手に対して、強制的に財産を差し押さえる強力な力を持ちます。
督促状は自社で作成して送ることも可能ですが、あくまで法的根拠のない「手紙」であるため、相手に無視されてしまうケースも少なくありません 。
そこで実務上は、代理人弁護士名で督促状を発出する手法が多く使われています。
弁護士名で届くことにより、相手方に「これ以上無視すると、本当に裁判や差し押さえ(支払督促)へ移行する」という強い心理的プレッシャーを与えられるため、任意の回収率を劇的に高める効果が期待できます。
督促状についての詳しい解説は、以下のページをご覧ください。
通常訴訟ではなく支払督促を選ぶメリット
手続きが簡易かつ迅速である
支払督促は訴訟ではありませんので、訴状を作成する必要がなく、簡単な申立書等の提出によって行うことができます。
また、明らかに理由がないと認められる場合以外は支払督促が発せられますので、裁判のように権利の存在を証拠によって立証する必要がありません。
このように、支払督促の手続きは訴訟と比較してかなり簡易的なものになっています。
また、支払督促は書面審査だけで判断されますので、裁判のように期日が開かれることもなく、2週間の間に相手から異議が出なければ仮執行宣言の手続きへと進むことができます。
事件によって期間にかなりの幅はあるものの、通常の民事裁判であればどれだけ短くても半年から1年程度を要することがほとんどです。
訴訟手続きと比較してみると、支払督促は迅速性の点からも優れた制度と言えるのです。
確定すれば勝訴判決と同等の効力が発生する
以上のように、支払督促は訴訟と比べて簡易的な手続きであるにもかかわらず、最終的に確定すれば、裁判をして勝訴判決を得たのと同等の効力を生じます。
第三百九十六条 仮執行の宣言を付した支払督促に対し督促異議の申立てがないとき、又は督促異議の申立てを却下する決定が確定したときは、支払督促は、確定判決と同一の効力を有する。
引用元:民事訴訟法|電子政府の総合窓口
支払督促は手続きが簡易的になっているものの、それと引き換えに効力の面で不十分ということはありません。
このように、効果の面で妥協する必要がない点も、支払督促の大きなメリットです。
費用が比較的安価
訴訟などの法的手続きを裁判所に申し立てるときには、所定の費用がかかりますが、支払督促については、民事訴訟を提起する場合と比較して半額で済みます。
異議申し立てにより訴訟に移行すると残りの半額を納めることにはなりますが、当初の段階での費用が抑えられるのは支払督促のメリットといえます。
申し立てる前に押さえるべき支払督促のデメリット
支払督促は、簡易迅速な債権回収の手段ではありますが、利点ばかりではありません。
金銭等の給付を求める場合に限られる
支払督促の利用条件の項目でご説明したとおり、支払督促は、金銭の支払い等を求める場合に限って利用できます。
支払督促は書記官が書面審査だけで判断するため簡易迅速である反面、請求内容が複雑なものについては対応できないのです。
相手の「異議申し立て」一発で通常訴訟へ強制移行する
支払督促を利用する上で、最も警戒すべき最大のデメリットです。
支払督促は債権者側の一方的な言い分だけで発付されるため、相手(債務者)には強力な反論の権利が与えられています 。
相手が通知を受け取ってから2週間以内に「督促異議」を申し立てると、支払督促の手続きはその時点で強制終了し、自動的に通常の民事裁判(通常訴訟)へ移行します 。
実務上、この異議申し立てには以下のようなリスクがあります。
正当な理由がなくても異議を出せる
通常の裁判で反論するには、「商品は不良品だったから払わない」といった筋の通った法的な理由が必要です。
しかし、支払督促の異議は「とにかく不服がある」と一言書いた書類を出すだけで成立してしまいます。
相手にしてみれば、放置すると財産を差し押さえられてしまうため、「時間稼ぎのために、とりあえず異議を出して裁判に持ち込む」という対応をとるケースが非常に多いのです。
かえって時間と手間がかかる事態に
簡単で早いと思って支払督促を選んだのに、異議を出されて裁判に移行してしまった場合、「最初から通常の裁判を起こしていた場合よりも、解決までにかえって余計な時間がかかってしまう」という本末転倒な結果を招きます。
「証拠なし」で申し立てるのは極めて危険
支払督促自体は書類審査のみなので、手元に証拠が少なくてもスタートできます。
しかし、異議が出されて通常の裁判に移った瞬間、契約書や請求書などの明確な証拠を出して立証できなければ、債権者側が敗訴してしまう危険性があります。
したがって、「相手が100%こちらの請求額を認めており、反論してくる見込みが極めて低い」と言い切れるケース以外では、支払督促の選択は慎重になるべきです。
移行した訴訟は相手方の管轄で
支払督促は、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てるため、異議申し立てにより訴訟に移行した場合、引き続き相手の管轄地の裁判所で裁判することになります。
金銭の請求では、請求する債権者の側の住所地に管轄があることも多いです。
そのため、はじめから訴訟を提起していればこちらの管轄で行えた裁判であっても、支払督促を選択したばかりに、相手の管轄で裁判を進めなければならないことになりかねないのです。
相手方の所在地がこちらに近接していれば問題はありませんが、遠方での訴訟に対応しなければならない可能性がある点は、支払督促のデメリットのひとつです。
支払督促をするための条件

支払督促は、簡単な手続きで債権を回収できる可能性がある制度ですが、利用するに当たっては、下記のように条件があります。
金銭等の給付に限る
支払督促は債権を実現するための手段のひとつですが、「支払」と題されているとおり、金銭や有価証券(小切手など)、または代替物の給付を目的とする場合に限って利用できます。
第三百八十二条 金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求については、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促を発することができる。ただし、日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限る。
引用元:民事訴訟法|電子政府の総合窓口
代替物とは、同種のものが市場にいくらでもあって、数量さえ指定すれば債務の対象が特定できるものをいい、「米100キログラムを引き渡せ」といった請求がこれに当たります。
支払督促が書面審査だけの簡易的な手続きであることから、対象と数量だけ指定すればそれで債務の内容が確定できるような、シンプルな請求の場合にのみ利用できるということです。
なお、支払督促できる金額に上限はなく、「請求がいくら以内でないと支払督促は利用できない」といった制限はありません。
債務者が日本国内にいて居場所が知れていること
支払督促は、債務者が日本国内にいて、かつ所在が明らかになっていることが利用の条件となります。
民事訴訟法382条中の、「日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限る」という箇所が、これを表しています。
「公示送達」とは、相手方が所在不明である場合に、公示、すなわち裁判所の掲示板に掲示することで、通知などを送達したものとみなす制度をいいます。
通常の人は裁判所の掲示板を確認することはしないため、実際に送達されているわけではないのですが、「所在不明で郵便が送達できないから手続きが前に進まない」という事態を回避するため、公示によって送達があったものと扱うことができる場合があるのです。
ただし、申立て側の言い分だけで債権を確定させる効果のある支払督促において、送達すら公示によって済ませることを認めると、債務者は異議を申し立てる機会が一切ないまま強制執行を受けることになってしまいます。
そこで債務者の異議申立ての機会を保障するため、支払督促においては、「日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合」、すなわち相手方の所在が判明しており、支払督促を正しく送達できる場合に限って利用できるものとされているのです。
請求に理由がありそうにみえること
最後は、申立人の請求に理由がありそうにみえることです。
厳密には、「請求に理由がないことが明らかなとき」には、支払督促の申立が却下されるということになっています。
第三百八十五条 支払督促の申立てが(略)申立ての趣旨から請求に理由がないことが明らかなときは、その申立てを却下しなければならない。(略)
引用元:民事訴訟法|電子政府の総合窓口
およそ法的に成立し得ない主張を申し立てたような場合がこれに当たると考えられますが、弁護士に依頼するなどして支払督促を申し立てれば、この要件に引っかかることは基本的にはないと考えられます。
支払督促の流れ
支払督促の手続きは、前半の支払督促と後半の仮執行宣言の手続きに分けて考えることができます。
前半の支払督促手続きによって権利の存在を明らかにして、明らかになった権利を後半の仮執行宣言の手続きで実現させるという流れです。
まず仮執行宣言のない支払督促を発出し、相手方から異議が出なければ仮執行宣言を付した支払督促を発するという「2周」の構造になっていることをご確認ください。

①支払督促の申立てをする
相手が支払いをしてくれず、支払督促の手続を進めたいと考えた場合、まずは裁判所に支払督促の申立てを行います。
申立ては、申立書を作成して、簡易裁判所に提出します。
②支払督促を相手に送る(送達)
支払督促の申立てを裁判所に行うと、裁判所で書類に問題(不備)がないか確認します。
その確認の結果、不備がなければ、支払督促を相手に送ります。
これが「送達」という手続で、相手が裁判所からの郵便を受け取ることが必要です。
受け取りが一定期間内でなされない場合には、住所調査を裁判所から求められるため、対応して、送達の手続を進めていきます。
③2週間以内に異議がない場合:仮執行宣言の申立てをする
相手が支払督促を受け取ってから2週間以内に裁判所に異議を申し出ない場合、次のステップに進みます。
支払督促を申し立てた側で、裁判所に仮執行宣言の申立てを行います。
④裁判所は仮執行宣言付支払督促を相手に送る
仮執行宣言の申立てを行うと、裁判所は仮執行宣言が付けられた支払督促を改めて相手に送ります。
この書面も同じく、相手が裁判所からの郵便を受け取ることが原則求められます。
送達が完了すれば、2週間の間に異議が出るかどうかを待つことになります。
⑤2週間以内に異議がない場合:強制執行が可能
仮執行宣言を相手に送って、2週間以内に異議が出されない場合には、給料や財産の差押えができるようになります。
2週間以内に異議が出た場合:訴訟に移行
他方で、2週間以内に相手から異議が出た場合には、通常の裁判に移行します。
支払督促を申し立てた側は、通常の裁判の場合に提出する訴状に代わって準備書面という書面をまず提出しなければなりません。
支払督促の申し立て方法と必要書類
支払督促のおおまかな流れはつかんでいただけたでしょうか。
支払督促の手続きは、簡易裁判所に対して申し立てることによって開始します。
ここからは、実際に支払督促を申し立てる方法について解説します。
支払督促の申立ては、申立書その他の必要書類を、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に提出して行います。
支払督促の申し立てに必要な書類・実費
支払督促を始めるにあたり、まずは以下の書類や実費(収入印紙・切手)を準備します。
- 支払督促申立書(+当事者目録・請求の趣旨及び原因)
「誰が」「誰に」「いくら請求するのか」を記載した、手続きのメインとなる書類です。
- 申立手数料(収入印紙代)
裁判所に納める手数料です。通常の裁判(通常訴訟)の半額の金額の収入印紙を申立書に貼付します
(※具体的な金額は支払督促の費用で解説します)。
- 郵便切手(郵券)
裁判所から相手方に書類を「特別送達」という厳格な郵便で送るための切手代です。
相手方が1人であれば、おおむね1,000円強の切手が必要となります。
- 登記事項証明書(法人のみ)
申立人(あなた)、または相手方(債務者)が「法人(会社)」である場合に必要となります。
法務局で事前に取得(実費約600円)しておきます。
提出先(管轄)
裁判所は全国各地に存在しており、それぞれが決められた区域を管轄しています。
支払督促を申し立てる場合、書類の提出先は「相手方の住所地を管轄する簡易裁判所」になります。
すなわち、まず相手方の住所地を確認した上で、その住所地を管轄する簡易裁判所を特定する必要があるのです。
管轄については、こちらでご確認ください。
参考:裁判所の管轄区域|裁判所
提出方法
申立書等の必要書類がすべてそろい、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所を特定したら、これをその簡易裁判所に提出します。
提出は、直接持参するほか、郵送やオンラインでの提出も可能となっています。
オンラインで提出する場合は、裁判所の「督促手続オンラインシステム」を利用します。
支払督促申立書の書き方【テンプレート付】
支払督促の申し立ては、「支払督促申立書」に、「当事者目録」と「請求の趣旨及び原因」を別紙として添付したものを提出して行います。

支払督促申立書のテンプレート(Word形式、PDF形式)を無料でダウンロードいただけます。
支払督促にかかる費用・手数料一覧
【請求金額別】裁判所に納める申立手数料(収入印紙代)
支払督促を申し立てるには、申立ての手数料がかかります。
メリットのところでご説明したとおり、支払督促の手数料は、通常の民事訴訟に比べれば半額となります。
たとえば、100万円を請求する場合、民事訴訟であれば手数料は10,000円ですが、支払督促では5,000円となります。
実際に納める手数料は請求金額によって変わります。
下表は、請求金額別の民事訴訟と支払督促の手数料(収入印紙)を一覧にしたものです。
| 請求金額 | 民事訴訟の手数料 | 支払督促の手数料 |
|---|---|---|
| 10万円 | 1,000円 | 500円 |
| 50万円 | 5,000円 | 2,500円 |
| 100万円 | 10,000円 | 5,000円 |
| 200万円 | 15,000円 | 7,500円 |
| 300万円 | 20,000円 | 10,000円 |
| 500万円 | 30,000円 | 15,000円 |
500万円を超える場合は、下記の裁判所ホームページでご確認ください。
参考:裁判所ホームページ
また、支払督促の郵送等に使用するための郵便切手を、合わせて提出する必要があります。
納付額は相手方の人数によって変動しますが、相手方が1人であればおおむね1,000円強の切手が必要となります。
弁護士費用
支払督促を弁護士に依頼した場合、弁護士費用も発生します。
弁護士費用は依頼する弁護士や請求する金額によっても変わってくるため一概には言えませんが、請求金額が極端に高額な場合を除けば、通常は高くても数十万円程度の範囲に収まると考えられます。
また、法律事務所によっては、初回の相談については無料で対応している事務所も存在します。
支払督促は簡易的な手続きとはいえ、訴訟に移行する可能性もある手続きですから、費用面も含めて、まずは弁護士にご相談されることをおすすめします。
自分でできる?支払督促のポイント
「自分でできる」が、書類の記載ミスに注意
支払督促は、先ほど解説したとおり、裁判所は基本的に書類の不備について確認するのみで相手に書類を送り、相手が異議を出すかをみるという手続です。
そのため、事前に準備をすれば、裁判に比べると自分でできる手続といえるでしょう。
しかしながら、支払督促には記載しなければならないことが決まっています。そのため、書類の記載ミスには注意が必要です。
書類の不備が続くと、裁判所が相手に書類を送るという次のステップに進めません。
また、相手の所在については確認をしておく必要があります。相手が書類を受け取らないと送達が完了せず、同じく手続が進みません。
少しでも不安を感じたら、専門家である弁護士に相談するのがよいでしょう。
まずは交渉を試みる
交渉は、当事者同士の話し合いによって債権の回収を図るものです。
交渉の場合、最終的には相手方の自発的な支払いを待つしかないため、効果の面では法的な手段と比べて見劣りします。
しかし交渉で解決すれば、時間的にも金銭的にも負担を最小限にとどめることができ、この点は交渉の大きなメリットといえます。
また、交渉は当事者同士の話し合いですので、相手方の状況に応じて柔軟な解決を図れるという自由度の高さもポイントです。
法的手続きとなると、どうしても「対決姿勢」の様相を呈しますので、債権回収の際のファースト・チョイスとしては、まずは交渉から入るのが良いケースが多いといえそうです。
強制執行を見据えた上で債権回収を試みる
当事者同士の交渉には以上のようなメリットがある反面、相手方のスタンスに依存するところが大きく、支払いの意思が見られない場合に強制力に欠けている点が難点でもあります。
そこで、任意に支払われない場合に備えて、強制執行を見据えつつ対応を進めることが重要になってきます。
相手方の財産に対して強制執行をかけるためには、「債務名義」と呼ばれる法的な根拠が必要となります。
具体的には、民事裁判を起こして勝訴判決を得たり、今回ご紹介した支払督促手続きを完了したりといったことによって債務名義を取得することによって、はじめて強制執行が可能となります。
相手方の協力によってスムーズな支払いを受けられるというケースばかりではありませんので、債権回収の際には、強制執行も見据えて対応していくことが重要となるのです。
支払督促を利用するかの判断ポイント
支払督促についてメリット・デメリットをご紹介しましたが、「結局訴訟とどちらがいいのかよく分からない」という方もいらっしゃるかもしれません。
以下に支払督促の手続きを選択する際の視点を整理しますので、ひとつの考え方ではありますが、参考になさってください。
| 支払督促を検討すべきケース | 訴訟手続を検討すべきケース |
|---|---|
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債権回収に強い弁護士に相談する
ここまでご説明してきた手順に従って申し立てれば、支払督促の手続きをご自身で遂行することも不可能ではありません。
しかし、訴訟ほどではないとはいえ、支払督促を申し立てるに当たっては、必要な書式を整えたり、管轄を判断したりといった専門性が求められる場面があります。
特に支払督促には、相手方から異議が申し立てられると手続きが即民事訴訟に移行するという特徴があります。
これらのことを考慮すると、支払督促については債権回収に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
支払督促の段階から弁護士に依頼しておけば、その後異議が申し立てられて訴訟に移行したとしても、引き続き対応をまかせることができます。
弁護士としても、早い段階から訴訟を意識して案件に関与できますので、訴訟に移行した場合の対応が非常にスムーズなものとなります。
また、債権がうまく回収できない事態がしばしば生じるようであれば、弁護士との顧問契約を検討されるとよいでしょう。
法的なトラブルが生じてから弁護士を探し始めたのでは、対応の遅れにつながりかねません。
顧問弁護士がいると、債権回収だけでなく、その他の法律問題についても気軽に相談できます。
顧問弁護士の必要性について、詳しい解説は以下のページをご覧ください。
支払督促についてのQ&A
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支払督促の2週間の数え方を教えて下さい
相手方が異議を申し立てることのできる「2週間」とは、督促の送達を受けた日の翌日から数えて2週間となります。
「初日不算入の原則」といって、送達を受けた当日は1日に満たない端数として切り捨てのような扱いとなるためです(民法140条)。
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支払督促が送達できないときはどうなる?
支払督促が正しく送達できなかった場合、再送達の申請をすることになります。
支払督促では公示送達が使えませんので、休日や就業場所への送達などを試み、それでも送達できなければ、「付郵便送達」によって送達します。
付郵便送達とは書留郵便を利用した送達であり、郵便を発送した時点で、有効な送達があったものと扱われます。
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支払督促に異議を申し立てられた後でも、和解の可能性はある?
支払督促に異議を申し立てられた後であっても、和解の可能性はあるといえます。
支払督促に異議を申し立てなければ、相手方は裁判で敗訴したのと同じことになってしまうため、請求を争う場合だけでなく、「請求内容は認めるが支払いの時期だけ相談させてほしい」といった趣旨で異議が申し立てられることもあるのです。
異議によって手続きは訴訟に移行することにはなりますが、必ずしも和解の可能性がなくなるわけではないといえるでしょう。
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裁判所から突然「支払督促」が届いたのですが、無視してもいいですか?
無視をすると支払い督促が確定し、強制執行されるリスクが高まります。
支払督促の内容に「身に覚えがない」「支払い義務がない」と考えるのであれば、無視はせず、異議を申し立てるようにしましょう。
まとめ
このページでは、支払督促について、その意味やメリット・デメリット、手続きの流れなどを解説しました。
記事の要点を、最後に整理します。
- 支払督促とは、簡易裁判所を利用した債権回収手続きのことである
- 支払督促の手続きにおいて、督促を受けた相手方が異議を申し立てると、督促手続きは終了して自動的に訴訟へ移行する。
- 支払督促に対して相手方から異議が出ない場合、勝訴判決を得たのと同等の効果となり、相手方の財産に対する強制執行が可能となる。
- 支払督促は、訴訟に比べて費用的にも時間的にも負担が少ないが、異議申し立てによって訴訟に移行すると、かえって負担増となることもある。
- 支払督促は債権回収に強い弁護士に依頼することが効果的であり、弁護士との顧問契約も検討するとよい。
弊所には、企業法務に注力する弁護士で構成される企業法務部があり、債権回収に苦慮されている会社を強力にサポートしています。
債権回収でお困りの方は、お気軽にご相談ください。




