弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

誹謗中傷とは、根拠のない悪口や虚偽の事実によって、他人の名誉や社会的評価を傷つける行為を指します。
近年、インターネットやSNSの普及に伴い、誹謗中傷が多発しています。
誹謗中傷の対象は、個人にとどまらず、企業やその商品・サービスにも及びます。
根拠のない悪評やデマが拡散されることで、企業のブランドイメージが損なわれ、売上が減少したり、人材採用に悪影響が出たりするケースも少なくありません。
企業が誹謗中傷の被害に遭った場合、被害の拡大を防ぐためには、迅速かつ適切な対応が求められます。
この記事では、誹謗中傷の意味や具体例、法的責任、リスク、そして企業が取るべき対処法などについて、弁護士が解説します。
誹謗中傷とは?

誹謗中傷とは、根拠のない悪口や虚偽の事実によって、他人の名誉や社会的評価を傷つける行為を指します。
インターネット上の掲示板やSNS、口コミサイトなどにおいて、企業やその商品・サービス、あるいは従業員を攻撃する書き込みが行われることがあります。
こうした行為は、単なる意見や感想の域を超え、法的な責任を問われる可能性があります。
誹謗中傷の意味や読み方
誹謗中傷は、「ひぼうちゅうしょう」と読みます。
「誹謗」は他人を悪く言うこと、「中傷」は根拠のないことを言いふらして他人の名誉を傷つけることを意味しており、これらを合わせた言葉です。
誹謗中傷は、法律用語として厳密に定義されているわけではありません。
一般的に、悪意を持って他人の人格や社会的評価を否定するような表現全般を指す言葉として使われています。
企業に対する批判的な意見であっても、それが正当な論評の範囲を超え、人格攻撃や事実無根のデマを含む場合には、誹謗中傷に該当する可能性があります。
誹謗中傷と名誉毀損との違い
誹謗中傷と名誉毀損は似た概念で、しばしば混同されがちです。
しかし、両者は法的な位置づけが異なります。
誹謗中傷は、広い意味での悪口全般を指す日常用語です。
一方、名誉毀損は、法律上の概念であり、公然と事実を摘示して他人の社会的評価を低下させる行為を指します。
つまり名誉毀損は、誹謗中傷の中でも、特に刑事罰や損害賠償などの法的責任を問われる可能性のある行為の一類型といえます。
誹謗中傷の中には、名誉毀損のほか、侮辱罪や信用毀損罪、業務妨害罪などに該当するものも含まれます。
誹謗中傷の具体例
企業に対する誹謗中傷は、さまざまな媒体や形態で行われます。
近年、特に問題となりやすいのがインターネットやSNS上での誹謗中傷ですが、必ずしもこれらに限られません。
インターネットを使った誹謗中傷の具体例
ウェブサイトやブログなど、インターネット上での誹謗中傷は、匿名性を悪用して行われるケースが目立ちます。
たとえば、自社サイトのお問い合わせフォームやコメント機能を利用して、執拗に攻撃的なメッセージを送信するなどの妨害行為があります。
また、個人のブログやニュースサイトのコメント欄などで特定の企業名を挙げ、根拠のない悪口を書き込む事案も散見されます。
こうした書き込みは、たとえ事実無根であっても、それを見た一般の閲覧者に誤解を与え、企業のブランドイメージを傷つける原因となります。
さらに、いわゆる「まとめサイト」などに誹謗中傷記事が掲載され、検索結果の上位に表示され続けることで、長期的な風評被害につながるリスクもあります。
「ネット上の書き込みはバレない」と安易に考える加害者もいますが、実際にはプロバイダ責任制限法に基づく手続きにより、投稿者を特定できるケースが増えています。
SNS上の誹謗中傷の具体例
拡散力の高いSNSは、企業にとって有益な広報ツールである反面、誹謗中傷のリスクが高い場でもあります。
特に、X(旧Twitter)やInstagramなどでは、リプライ機能やハッシュタグを使い、企業に対して攻撃的な投稿が行われることがあります。
たとえば、公式アカウントに対して「詐欺」「倒産しろ」などの暴言を投げかけたり、ハッシュタグを用いて不買運動を煽ったりする行為などです。
また、従業員による不適切な動画投稿(いわゆるバイトテロ)が拡散された際、企業への批判が過熱し、誹謗中傷の嵐(炎上)となるケースも後を絶ちません。
SNSでの誹謗中傷は、短時間で爆発的に拡散するおそれがあるため、初期段階での迅速な対応が被害拡大を防ぐ鍵となります。
匿名掲示板での誹謗中傷の具体例
インターネット上の匿名掲示板は、誹謗中傷が多発する場所のひとつです。
匿名で投稿できることから、過激な表現や無責任な書き込みが横行しやすい環境にあります。
たとえば、特定の企業を名指しして「この会社は反社とつながっている」「不正会計をしている」といった虚偽の情報を書き込む行為は、名誉毀損や信用毀損に該当します。
インターネット上の掲示板は、表面的には匿名で利用できますが、発信者情報開示請求によって投稿者を特定することが可能です。
企業が毅然とした法的措置を取ることで、投稿者に刑事責任や損害賠償責任を追及できるケースも増えています。
口コミサイト・レビューサイトでの誹謗中傷の具体例
飲食店やクリニック、宿泊施設などを運営する企業にとって、Googleマップや特集サイト上の口コミは、集客に直結する重要な要素です。
しかし、これらのサイトが誹謗中傷の場として悪用され、営業活動に支障が出るケースが後を絶ちません。
もちろん、消費者には感想や意見を述べる自由があります。
ネガティブな評価であっても、それが実体験に基づく主観的な感想であれば、直ちに違法となるわけではありません。
問題となるのは、事実に基づかない嘘や、社会通念上許される範囲を超えた悪質な書き込みです。
たとえば、「異物が混入していた」などとありもしない事実を投稿したりする行為は、業務妨害罪や信用毀損罪に問われる可能性があります。
悪質な口コミを放置すると、新規顧客の獲得機会を失うだけでなく、既存顧客が離れていったり、従業員のモチベーション低下につながったりします。
そのため、事実無根の書き込みに対しては、サイト運営者への削除申請や、投稿者の特定といった法的措置を検討する必要があります。
カスタマーハラスメント(カスハラ)として行われる誹謗中傷
近年、顧客や取引先からの著しい迷惑行為である「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題化しています。
その中には、誹謗中傷に該当するものも少なくありません。
たとえば、コールセンターのオペレーターや店舗スタッフに対して、人格を否定するような暴言を吐いたり、長時間にわたって執拗に罵倒し続けたりする行為が挙げられます。
また、SNS上で従業員の接客態度について事実と異なる悪評を広めたり、実名を挙げて攻撃したりするケースも見られます。
こうした行為は、従業員に深刻な精神的苦痛を与えるだけでなく、企業の業務遂行を妨害するものです。
企業には、従業員が安全で健康に働ける環境を整備する「安全配慮義務」があります。
そのため、正当なクレームの範囲を逸脱し、誹謗中傷や脅迫に至るような悪質なカスハラに対しては、従業員を守るために毅然とした対応を取ることが求められます。
放置すれば、従業員の離職やメンタルヘルスの悪化を招くだけでなく、企業としてのコンプライアンス体制やガバナンスが問われる事態にもなりかねません。
誹謗中傷はどこからが犯罪?
誹謗中傷は、その内容によっては犯罪として処罰される可能性があります。
どのような行為が犯罪にあたるのか、その要件と刑罰について解説します。
誹謗中傷で成立する犯罪、要件と刑罰
誹謗中傷において成立する可能性のある犯罪には、次のようなものがあります。
名誉毀損罪(刑法230条1項)
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に成立します。
「公然と」とは、不特定または多数の人が認識できる状態を意味します。
インターネット上の書き込みは、通常この要件を満たします。
「事実を摘示」とは、具体的な事実を示すことをいいます。
たとえば、あの会社は不正会計をしているといった内容が該当します。
「人の名誉を毀損した」とは、社会的評価を低下させることをいいます。
もっとも、実際にその会社の社会的評価が低下したかどうかを測定することはできません。
そこで、名誉の低下につながるような事実を公然と摘示した場合に、その行為をもって名誉毀損罪が成立します。
この罪が成立すると、3年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金が科されます。
侮辱罪(刑法231条)
事実を摘示せずに、公然と人を侮辱した場合に成立します。
名誉毀損との違いは、具体的な事実を摘示しているかどうかです。
たとえば、「詐欺会社」「悪徳業者」といった、事実を伴わない抽象的な罵倒などが該当します。
この罪が成立すると、1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料が科されます。
信用毀損罪(刑法233条)
虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損した場合に成立します。
この罪では、名誉毀損のような一般的な評価ではなく、経済的な信用を毀損する行為が該当します。
たとえば、「倒産寸前だ」「経営破綻している」などの嘘を広める行為が該当します。
この罪が成立すると、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。
業務妨害罪(刑法233条)
虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の業務を妨害した場合に成立します。
この罪では、被害者の信用を毀損するのではなく、その業務の運営を妨げる行為が該当します。
たとえば、「異物混入があった」「食中毒が発生した」などの虚偽情報を流した結果、会社が対応に追われて営業活動が妨害された場合などに成立します。
この罪が成立すると、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。
脅迫罪(刑法222条1項)
生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した場合に成立します。
法人には感情がないため、脅迫を加えても、脅迫罪が成立することはありません。
ただし、役員や従業員など、具体的な人物に脅迫を加えた場合には、脅迫罪が成立します。
たとえば、「店舗を爆破する」「役員を殺害する」などの加害の予告を行うことが該当します。
この罪が成立すると、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されます。
企業への誹謗中傷についての刑事裁判例
ここでは、企業への誹謗中傷が問題となった実際の裁判例をご紹介します。
誹謗中傷に対して損害賠償請求ができる?
誹謗中傷によって企業が損害を被った場合、発信者に対して民事上の損害賠償を請求することができます。
誹謗中傷に対する損害賠償請求の要件
損害賠償請求が認められるためには、民法上の不法行為の要件を満たす必要があります(民法709条)。
参考:民法|電子政府の総合窓口
主な要件は、次のようなものがあります。
故意または過失
発信者が、誹謗中傷を行う意図を持っていたか、あるいは不注意によって投稿を行ったことが必要です。
権利侵害
名誉(社会的評価)、信用(経済的信用)、業務遂行権などの法的保護に値する利益が侵害されたことが必要です。
損害の発生
損害賠償請求が認められるには、誹謗中傷によって、企業に具体的な損害が発生したことが必要です。
たとえば、売上の減少や事案の対応にかかった人件費などです。
法人の場合、精神的苦痛を被ることがあり得ないため、原則として慰謝料は認められません。
ただし、会社に対する無形の損害として、一定の金銭的評価がなされることがあります。
因果関係
誹謗中傷行為と発生した損害との間に、相当因果関係があることが必要です。
発生したとされる損害が、誹謗中傷によって生じたものといえる関係にあることが求められます。
これらの要件をすべて満たした場合、民法上の不法行為責任が生じ、損害賠償を支払う義務が生じます。
企業への誹謗中傷についての民事裁判例
ここでは、誹謗中傷を受けた企業が加害者に対して損害賠償を求めたケースの裁判例をご紹介します。
誹謗中傷を受けた企業のリスクやデメリット
企業が誹謗中傷の被害を受けた場合、その影響は多岐にわたります。
単なる一時的な風評被害にとどまらず、経営基盤そのものを揺るがす深刻な事態に発展する可能性があります。
ここでは、企業が誹謗中傷によって被る主なリスクやデメリットについて解説します。
企業ブランドや社会的信用の失墜
誹謗中傷によって最も直接的に影響を受けるのが、企業のブランドイメージや社会的信用です。
インターネット上で根拠のない悪評や虚偽の情報が拡散されると、それを目にした顧客や取引先が、企業に対してマイナスの印象を抱いてしまいます。
長年かけて築き上げてきた信頼関係が、たった一つの投稿によって崩れ去ることも珍しくありません。
特に、SNSや口コミサイトでの拡散力は強力であり、誤った情報であっても、瞬く間に広まってしまいます。
社会的評価が低下することで、新規顧客の獲得が困難になるだけでなく、既存顧客が離れていくことにもなりかねません。
このように、誹謗中傷は企業のブランドイメージや社会的信用を大きく損なう可能性があります。
売上の減少や株価の下落など業績への悪影響
誹謗中傷は、企業の業績に直接的な打撃を与えることがあります。
ネガティブな情報が広まることで、消費者による不買運動が発生したり、商品やサービスの購入を控える動きが広がったりすることがあります。
その結果、売上が大幅に減少し、経営計画の見直しを余儀なくされることもあります。
また、上場企業の場合には、誹謗中傷による風評被害が株価に影響を及ぼすこともあります。
投資家が企業の将来性に不安を抱き、株式を売却する動きが強まれば、株価が下落し、企業価値そのものが毀損されてしまいます。
取引先との契約が解除されたり、新規案件の受注が困難になったりすることで、商機の喪失にもつながります。
このように、いわれのない誹謗中傷は、企業の経済活動全般に深刻なダメージを与える可能性があります。
採用難や内定辞退の増加など人材確保への被害
誹謗中傷は、企業の採用活動にも悪影響を及ぼします。
求職者の多くは、応募前に企業名をインターネットで検索し、評判や口コミを確認します。
その際に誹謗中傷の書き込みや悪評を目にすると、応募を見送ったり、内定を辞退したりする可能性が高まります。
特に、労働環境や企業体質に関する根拠のない悪評は、優秀な人材の獲得を妨げる大きな要因となります。
「ブラック企業」「パワハラが横行している」といった虚偽の情報が拡散されると、採用ブランディングに深刻な打撃を与えます。
人材不足が深刻化している現代において、採用活動が停滞すると、企業の成長を阻害する重大な問題になりかねません。
新卒採用だけでなく、中途採用においても、企業の評判は応募者の意思決定に大きく影響します。
誹謗中傷によって人材確保が困難になれば、事業の拡大や新規プロジェクトの推進にも支障をきたすことになります。
従業員のモチベーション低下や離職リスク
企業への誹謗中傷は、そこで働く従業員にも深刻な影響を与えます。
自分が勤める企業がインターネット上で攻撃されている状況を目の当たりにすると、従業員は不安やストレスを感じるようになります。
「この会社で働き続けて大丈夫だろうか」「家族や友人に勤務先を知られたくない」といった心理的負担が生じることもあります。
その結果、従業員の士気が低下し、業務への集中力やパフォーマンスが落ちることがあります。
また、将来への不安から、優秀な人材が他社へ転職してしまうリスクも高まります。
特に、誹謗中傷が長期間にわたって続いたり、企業側の対応が不十分であったりすると、従業員の不信感はさらに強まります。
離職者が増えれば、残された従業員の業務負担が増加し、さらなる離職を招くという悪循環に陥る可能性もあります。
従業員の定着率低下は、企業の組織力や競争力の低下に直結する深刻な問題です。
誹謗中傷を受けた企業はどう対処すればいい?
企業が誹謗中傷の被害を受けた場合、迅速かつ適切な対応が求められます。
放置すれば被害が拡大し、企業の信用やブランドイメージに深刻なダメージを与える可能性があります。
ここでは、企業が取るべき具体的な対処法について解説します。

以下、詳しく見ていきましょう。
証拠の保全
誹謗中傷への対応を行う際、最初に行うべきことは、証拠の保全です。
削除請求や発信者情報開示請求、損害賠償請求などの法的手続きを進めるためには、誹謗中傷の内容を証拠として残しておくことが不可欠です。
【ワンポイント:証拠保全はスピード勝負】
筆者の経験上、誹謗中傷への対応は「時間との戦い」です。
被害に気づいてから対応を検討している間に、投稿が削除されたり、ログの保存期間(通常3ヶ月〜6ヶ月程度)が経過してしまったりすることがあります。
投稿が消えてしまうと、加害者を特定することが極めて困難になります。
そのため、「これくらいなら大丈夫かな?」と迷う前に、まずはスクリーンショット等で証拠を残すことを最優先にしてください。
具体的には、問題となる投稿のURLを記録し、投稿日時、投稿者のアカウント名、投稿内容などが映るように画面全体のスクリーンショットを保存します。
スクリーンショットには、投稿日時、投稿者のアカウント名、投稿内容などが映るようにします。
誹謗中傷の削除請求
誹謗中傷の投稿を発見した場合、速やかに削除請求を行うことが被害拡大の防止につながります。
削除請求は、投稿が掲載されているサイトやSNSの運営者に対して行います。
多くのプラットフォームには、利用規約に基づく削除申請フォームや報告機能が用意されています。
削除請求を行う際には、どの投稿が問題であるか、なぜ削除が必要なのかを具体的に説明する必要があります。
根拠のない名誉毀損であるなど、法的根拠を明示することで、削除が認められやすくなります。
ただし、運営者が任意に削除に応じない場合もあります。
その場合には、裁判所に仮処分を申し立てることで、法的に削除を命じてもらうことを検討します。
削除請求は、被害の拡大を防ぐための第一歩として、極めて重要な手続きです。
発信者情報開示請求
誹謗中傷の投稿者を特定するためには、発信者情報開示請求という手続きが必要です。
インターネット上の投稿は匿名で行われることが多いため、投稿者の氏名や住所を直接知ることはできません。
しかし、法的手続きを通じて、プロバイダやサイト運営者に対して投稿者の情報開示を求めることができます。
発信者情報開示請求は、まずサイト運営者に対してIPアドレスやタイムスタンプなどの情報開示を求めます。
次に、そのIPアドレスをもとに、インターネットサービスプロバイダに対して契約者情報の開示を請求します。
この手続きには、裁判所を通じた法的手続きが必要となることが一般的です。
開示請求が認められるためには、権利侵害が発生していることや、開示を求める正当な理由があることを示す必要があります。
投稿者が特定できれば、その情報を元に、その後の損害賠償請求や刑事告訴などの手続きを進めることが可能になります。
発信者情報開示請求は、誹謗中傷への法的対応において中核となる重要な手続きです。
損害賠償請求
発信者情報開示請求によって投稿者が特定できた場合、損害賠償請求を行うことができます。
これは、誹謗中傷によって企業が被った損害について、金銭的な賠償を求める民事手続きです。
損害賠償の対象となるのは、企業の社会的評価が低下したことによる無形の損害や、売上減少などの経済的損失です。
また、弁護士費用や調査費用など、誹謗中傷への対応にかかった費用も賠償請求の対象となることがあります。
損害賠償請求を行う際には、まず、相手方に対して書面で賠償を求める通知を送ります。
相手方が任意に支払いに応じない場合には、民事訴訟を提起して、裁判所に判断を求めることになります。
損害賠償の金額は、誹謗中傷の内容や悪質性、被害の程度などを総合的に考慮して決定されます。
企業に対する誹謗中傷の場合、個人に対するものよりも高額な賠償が認められることもあります。
損害賠償請求は、被害の回復だけでなく、同様の行為を抑止する効果も期待できます。
刑事告訴
誹謗中傷の内容が犯罪行為に該当する場合には、刑事告訴を行うことができます。
刑事告訴とは、犯罪の被害者が、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、加害者の処罰を求める手続きです。
誹謗中傷に関連する犯罪としては、名誉毀損罪、侮辱罪、信用毀損罪、業務妨害罪などがあります。
刑事告訴を行う際には、警察署または検察庁に告訴状を提出します。
捜査機関が告訴を受理すると、捜査が開始され、犯罪の成否が判断されます。
刑事告訴は、加害者に刑事罰を科すことで、誹謗中傷行為への強い抑止効果を持ちます。
また、企業として毅然とした姿勢を示すことで、社会的な信頼回復にもつながります。
ただし、誹謗中傷が犯罪に当たるかを判断するには、専門的な知識が必要です。
そのため、刑事告訴を検討する際は、弁護士に相談することをお勧めします。
誹謗中傷を受けた企業の相談窓口
誹謗中傷被害への対応は、専門的な知識と経験が必要です。
企業内で抱え込まず、外部の専門家を活用することをお勧めします。
警察
誹謗中傷の内容が犯罪行為に該当する可能性がある場合には、警察へ相談することが有効な選択肢となります。
特に、脅迫的な内容が含まれている場合や、業務妨害の被害が深刻な場合には、速やかに警察に相談することが重要です。
警察では、サイバー犯罪相談窓口を設置するなどして、インターネット上の誹謗中傷に関する相談を受け付けています。
警察に相談する際には、誹謗中傷の証拠となる投稿のスクリーンショットや、被害状況を示す資料などを準備しておくとスムーズです。
ただし、警察は犯罪捜査を行う機関であるため、民事的な解決を求める場合には、弁護士への相談が適切です。
また、警察が動くかどうかは、犯罪の成立要件や緊急性、被害の程度などを総合的に判断して決定されます。
すべての誹謗中傷について警察が対応するわけではありませんが、悪質なケースでは刑事事件として立件される可能性もあります。
企業としては、警察への相談と並行して、弁護士に法的対応を依頼することで、刑事・民事の両面から適切な対処を進めることができます。
企業法務に強い弁護士
誹謗中傷への対応においては、企業法務に精通した弁護士への相談が有効です。
弁護士は、削除請求や発信者情報開示請求、損害賠償請求などの法的手続きを、全面的に代理することができます。
これらの手続きは専門的な知識と経験が必要であり、企業が独自に進めることは困難なことが多いです。
また、弁護士は法的手続きだけでなく、炎上時の初動対応や、プレスリリースの内容チェック、再発防止策の策定など、危機管理や広報の観点からも包括的なサポートを提供できます。
誹謗中傷への対応は、法的側面と経営戦略の両面から検討する必要があるため、企業法務に強い弁護士の助言は極めて重要です。
さらに、顧問弁護士がいれば、問題が発生した際に迅速な相談が可能となり、初期段階での適切な判断により、被害を最小限に抑えることができます。
日頃から企業の事業内容や組織体制を理解している顧問弁護士であれば、より実情に即した的確なアドバイスを受けることができるでしょう。
誹謗中傷は時間との勝負でもあるため、信頼できる弁護士との関係を事前に構築しておくことが、企業のリスク管理として重要です。
企業法務における顧問弁護士の重要性については、以下のページをご覧ください。
誹謗中傷についてのQ&A
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誹謗中傷で訴えられる基準はある?
単なる批判や不満の表明にとどまらず、事実無根の嘘が含まれている場合や、表現が極めて悪質である場合、業務に具体的な支障が出ている場合などは、法的措置を検討すべきです。
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誹謗中傷で亡くなった年間の人数は?
自殺の原因は複合的であり、誹謗中傷が直接的な要因であったかを特定することが困難なためです。
近年では、著名人やSNS利用者が誹謗中傷を受けた後に自ら命を絶つ事例が報道されています。
企業としても、従業員が被害に遭った場合には、メンタルヘルスケアを含めた包括的な支援体制を整えることが重要です。
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誹謗中傷を繰り返す人の心理とは?
たとえば、匿名性により攻撃的な発言のハードルが下がることや、対象者を攻撃することで社会正義を実現していると錯覚するケースがあります。
また、承認欲求やストレス発散の手段として他者を攻撃し、日常の不満を解消しようとする傾向も見られます。
さらに、集団心理の影響により、他者の批判に同調することで罪悪感が薄れ、エスカレートしていくこともあります。
企業は、こうした心理的背景を理解した上で対応策を講じるとともに、従業員教育において誹謗中傷を行わないための啓発活動を行うことが重要です。
まとめ
この記事では、誹謗中傷の意味や具体例、法的責任、リスク、そして企業が取るべき対処法などについて解説しました。
記事の要点は、次のとおりです。
- 誹謗中傷とは、根拠のない悪口や嘘によって他人の名誉や評価を傷つける行為であり、単なる批判や悪口とは法的な意味合いが異なる。
- 企業が誹謗中傷を受けた場合、名誉毀損罪や侮辱罪、信用毀損罪、業務妨害罪などの刑事責任や、民事上の損害賠償責任を追及できる可能性がある。
- 誹謗中傷への対処法としては、証拠保全、削除請求、発信者情報開示請求、損害賠償請求などの法的手続きがあり、段階的に進めることが重要である。
- 企業は誹謗中傷を放置せず、社内体制の整備や従業員教育、SNSガイドラインの策定などにより、予防と早期発見に努める必要がある。
- 誹謗中傷への対応は専門的な知識と迅速な判断が求められるため、企業法務に精通した弁護士への相談が効果的である。


