システム開発を開始し、要件定義の支援を行っています。今後、民法改正で留意する点はありますか?

  
執筆者
弁護士 本村安宏

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士

保有資格 / 弁護士・ITパスポート

当社では現在、ユーザーとシステム開発を開始したばかりで、要件定義の支援を行っている段階です。

今後、民法が改正されるとききましたが、契約関係に入る段階で留意しておかなければならない点はありますか。

 

弁護士本村安宏この質問について、弁護士がお答えします。

準委任契約の分類

社印システム開発を開始するにあたり、ユーザーと締結した契約が、請負契約であるか、準委任契約にあたるのかは、契約内容によって決まります。

ソフトウェア開発委託契約については、こちらをごらんください。

相談者のように、要件定義の支援を行うような契約内容の場合、その法的性質は準委任契約にあたります。

ベンダー側であれユーザー側であれ、気になるのは報酬請求だと思いますが、改正民法では①成果完成型と、②履行割合型の2種類に分類されます。

 

履行割合型

要件定義の支援業務をベンダーが受任していた場合、明確な成果という形があるとは限りません。そのような場合は、成果の完成を基準に報酬を支払うことは困難です。

そこで、履行の割合に応じて報酬を請求できます(改正民法648条3項)。

 

成果完成型

委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合、報酬の支払いが請負契約に類似するため、原則として成果完成後に報酬の支払いを請求できることになります(改正民法648条の2第1項)。

委任事務の履行の結果が可分であり、かつその給付により委任者が利益を受ける場合は請負の規定(改正民法634条)を準用し、委任者(ユーザー)が受ける利益の割合においてベンダーは報酬を請求できます。

 

システム開発への影響

売買システム開発を開始する段階で、何に対して対価(報酬)を支払うものとして合意するのかという点は、改正前後を問わず注意しておかなければなりません。

改正を踏まえると、報酬の支払いが成果の取得もしくは成果物の完成と関連付けられていると、成果完成型に分類されることになるので注意が必要です。

なお、以上の民法の規定はすべて任意規定と呼ばれるものですので、特約をもって民法の規定と異なる契約を結ぶことは可能です(公序良俗に反したり、権利濫用に当たったりする場合は別ですが。)。

そのため、契約段階においては、民法の規定と異なる契約を結ぶのかどうかも検討されなければなりません。これは経営判断によるとことが大きいと思われます。

 

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