ソフトウェア開発委託契約とは、どのような性質のものなのですか?

  
執筆者
弁護士 本村安宏

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士

保有資格 / 弁護士・ITパスポート

この質問について、弁護士がお答えします。

ソフトウェア開発委託契約のいろいろ

ソフトウェア開発委託契約(もしくは、システム開発委託契約)とは、文字通り、あるコンピューターシステム開発を、ソフトウェア開発会社等に委託する契約ですが、その性質はさまざまです。

すなわち、簡単なプログラムの作成で終わるものから、ユーザーの目的にあった仕様に基づきシステムを構築するとともに、完成後の支援まで任せるものもあります。

もっとも多い形態としては、請負契約(民法632条)ですが、内容によっては準委任契約(民法656条)と判断されるものもあります。多くはこの二種類に大別されるものと考えられます。

 

請負契約と準委任契約との違い

請負契約では、報酬を受ける対価として、「仕事を完成」させる必要があります。逆に言えば、仕事が完成しない限り、報酬を受けられないのが原則です。

一方、準委任契約では、仕事の完成が要求されていないため、納品物が予定通りに完成しなくとも、事務処理自体が適切に実施されれば、報酬を請求することができます。

締結した契約が請負なのか、準委任なのかは、契約書の文言だけではなく、実質的に判断されます。

 

多段階契約と一括契約

ソフトウェア開発は、要件定義、基本設計、詳細設計、プログラミング、テストといった工程を経て、一つのシステムが出来上がります。

これらの工程は、それぞれ異なる性質を有するので、ある程度規模の大きいシステムを開発する場合は、それぞれの段階で契約を締結する(これを多段階契約といいます。)ことが望ましいといえます。

なぜなら、ベンダーとしては、見積りを比較的容易かつ正確に算定できるため、報酬取得の確実性を上げることができるからです。

また、ユーザーとしては、ある段階での契約の履行に不満があれば、それ以降については別のベンダーに任せることができます。

ベンダーとユーザー間に対立関係が生じた場合、最終的には報酬(もしくはその相当額)を支払うのか否か、という金銭問題に収斂します。
多段階契約には、このような問題を早期に解決できるようになるというメリットがあります。

もっとも、デメリットもあります。ベンダーとしては、次に段階の締結をしてもらえないおそれがあるし、ユーザーとしては、最終工程までのコストを把握しにくくなります。また、交渉が契約の個数分だけ生じるので、その分手間がかかります。

システム開発を委託するにあたり、多段階契約を結ぶのか、それとも全工程を一括して契約を結ぶのか、ニーズに合わせて判断する必要があります。

 

紛争回避のために

ソフトウェア開発は、ビル建築と異なり、成果物が目で見えるものではないので、紛争が生じやすいものです。

事後の紛争回避のためには、プロジェクトの進捗に合わせ、逐一書面で記録を残すことが重要です。

具体的には、工程ごとの見積りやスケジュールを明記する、見積りはあくまで概算であり、具体的な金額は個別契約による旨を明記する、当初の見積りやスケジュールとおりにいかない事態となった場合、それがなぜなのか、次の段階に進むには何が必要なのか、それらをユーザーに説明したうえで記録する、といったものです。

 

まずはご相談ください

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