外部委託までして、契約がなくなった場合も請求できますか?

  
執筆者
弁護士 本村安宏

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士

保有資格 / 弁護士・ITパスポート

先日、長年の取引先から、すでに受注しているという案件のデザイン作成依頼を受けました。ただ、スケジュールがタイトであるため、先行して作業を進めてもらえないかという要望がありました。

急ぎとはいえ、少なくとも発注書はもらうことにしていましたので、発注書はいただきました。急な依頼でしたので、外部デザイナーにも依頼をしました。

困る男性ところが、しばらくたって連絡をしたところ、「その件については白紙になった。」と言われてしまいました。

こちらは外部に委託してまで作業に着手していたため、すでに作業をした部分だけでも請求する旨伝えると、「こちらもマイナスが出ているので、そこを考慮してほしい。」と言われ、請求しないでほしいとの回答でした。

弊社としては、作業を終えた部分について回収したいのですが、可能でしょうか。

 

弁護士本村安宏この問題について、弁護士がお答えします。

本件では、発注書をもらって作業に取り掛かっているため、契約が成立していることを立証することはできるでしょう。また、外部デザイナーに委託した分が損害と考えられます。

そのため、作業が完了している部分について、裁判で請求し回収することも考えてよいところです。

しかし、裁判手続きとなると訴訟費用、弁護士費用と時間がかかりますし、なによりその取引先との信頼関係を失うため、今後取引を継続することはできなくなってしまうでしょう。

着手金と中途解約の場合の損害賠償義務を設定しておく

急ぎの案件である場合、もしこの契約内容が頓挫した場合についてまでなかなか考えが及ばないことも多いと思います。また、契約書のひな形自体お持ちでない企業も多いのではないかと思います。

しかし、損害が生じてからでは遅いのでそうも言っていられません。

そこで、着手金の設定と、中途解約の場合の損害賠償義務の設定をおすすめします。

法律関係の整理

六法全書途中で契約関係を解消することは、いわば中途解約権の行使です。

契約関係を解消するということは、当事者の関係を契約前の状態に戻すことですので、本来であれば取引先に支払ってもらった着手金も返還しなければなりません。

一方で、中途解約をされた場合の損害賠償義務を定めておくことは可能です。そうすれば、取引先に損害賠償請求権を得ることができます。

こうして、取引先に対する損害賠償請求権と、着手金返還義務を相殺することにより、中途解約された場合の実質的な費用の回収を、裁判手続きを利用することなく実現できます。

着手金を設定しておくことにより、発注者に対し、「契約内容の履行に向けて、真摯に取り組む」という姿勢を持たせることができますし、万が一契約内容が頓挫してしまっても安心です。

注意点

急ぎの場合、発注者側は、上司や責任者の決裁を受けずに話を進めていることもままあります。そのため、担当者レベルで勝手に話が進んでしまっていないかも注意が必要です。

なお、きちんと上に話が通っているのかどうかを確認することは、取引先に疑いの目を向けていると取られかねないことですので、伝え方にも注意をしてください。

 

 

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