記事を自社内で印刷、配布することに問題はある?

  
執筆者
弁護士 本村安広

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士・ITパスポート

この度、弊社の事業についてニュースで取り上げてもらうことができました。

弊社にとっては喜ばしいことでしたので、記事を印刷して弊社の従業員に配布しようと思います。

法的な問題なんてありませんよね?

 

弁護士本村安宏この質問について、IT事業に詳しい弁護士がお答えします。

記事を印刷、配布する行為

ニュース記事も著作物といえますので、それを印刷する行為は著作物の複製(著作権法2条1項15号)に当たります。

そのため、著作権者から許諾を得ないまま印刷してしまうと複製権侵害となります。

印刷また、この印刷物を従業員に配布する行為は、譲渡(著作権法26条の2)に当たりえるので、譲渡権侵害にもなりえます。

ニュース記事は、よりたくさんの人に情報を提供、閲覧してもらうために公表されているものです。それなのに、なぜ上記の行為が著作権により保護されるのでしょうか。

 

情報提供者の意図とは?

ニュースニュース記事を入手するための媒体は様々と思います。

かつては新聞が大多数だったでしょうが、今ではインターネットを通じて情報を入手する方も多いでしょう。

情報入手媒体が新聞の場合

新聞媒体が新聞の場合、情報を得るためにはその代金を支払わなければなりません。

言い換えると、代金を支払った者にだけ情報を提供するわけです。

そのため、対価を支払わず情報を得させる行為をしてしまうと、新聞社等の収益を減少させてしまいます。

情報入手媒体がインターネットの場合

媒体がインターネットであった場合、有料サイトからの情報であれば前述のように、新聞と同様の考え方が成り立ちます。

では、無料のインターネット記事だった場合はどうでしょうか。対価を払う必要がないのだから、その利用も自由だ、ということはできるでしょうか。

無料サイトには、多くの広告が貼り付けられているのを見たことがある方は多いと思います。

IT

これは、無料サイトの多くが、情報提供よりも、アクセス数を増やすことを意図していることの表れです。

そうすると、無料のサイトに掲載された記事を勝手に印刷してしまえば、アクセス数が減少することは明らかですので、著作者としては印刷してほしくないでしょう。

結果的にサイト運営者の収益を減少させることにもなりえます。

以上のような影響があるため、やはり著作権法による保護が必要になってくるということになります。

なお、著作物の利用につき、明示的には許諾を得てはいないが、暗に許諾していると評価できるから問題ない、という「黙示的許諾」という理論は、上記の理由で適用できません。

 

記事をデータで保存、ネットワーク経由で閲覧できるようにした場合

記事を印刷、配布するのではなく、自社サーバーに保存したうえで従業員に自由に閲覧できるようにした場合はどうでしょうか。

このような場合も結論としては著作権侵害になります(紙媒体にするか、電子データにするかで結論に差が出ないよう、結論として公平が保たれているといえます。)。

まず、データを保存するためには記事のコピーを作成する必要があるので、その時点で複製権侵害となります。

ダウンロード次に、これを自社サーバーにアップロードすると、その時点で送信可能化(著作権法2条1項9号の5)に当たりますので、公衆送信権の侵害となります。※1

仮に、アップロードしたデータの閲覧が、外部の第三者にはできないようにし、従業員のみにできるよう限定した場合、公衆送信権の侵害にはなりませんが、上映権(著作権法22条の2)の侵害となる可能性があり、やはり問題なしとはいえません。※2

※1「送信可能化」とは?

アップロードされたデータを見ようとする人が、インターネットを通じてアクセスすれば自由に閲覧ができるような状態が「送信可能化」といいます。

これにより、サーバーの管理者が、「自分はサーバー上にアップロードしただけで、不特定又は多数の者に自ら配布したわけではないのだから、違法性はないでしょ?」という言い逃れができないようになっています。

※2「上映」とは?

「著作物(公衆送信されるものを除く)を映写幕その他の物に映写すること」をいいます(著作権法2条1項17号)。

要するに、アップロードされたデータの閲覧が従業員に限定されていたとしても、従業員が各自の端末でそれを閲覧する行為が、「その他の物に映写」に該当するということです。

なお、会社側としては、「端末を操作して閲覧したのは個々の従業員なのだから、会社は関係ない!」といった理屈は通りませんので、注意しておください。

 

記事を発信する場合は、必ず許諾を得る!

ポイントここまで見てきたように、公表されている記事といえど、それを利用するには記事作成者(著作権者)の許諾が必要です。

新聞社や出版社では、利用許諾の受付をしている場合が多いため、問い合わせをしてみてください。

お悩みの方は当事務所まで

ロゴ当事務所では、IT事業に特化した弁護士が対応しています。

まずはお気軽に当事務所の弁護士までご相談ください。

 

 

   
執筆者
弁護士 本村安広

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士

所属/福岡県弁護士会

保有資格/弁護士・ITパスポート

専門領域/法人分野:IT関連分野・労務問題 個人分野:離婚問題

実績紹介/福岡県屈指の弁護士数を誇るデイライト法律事務所の弁護士。IT関連分野に注力し、システム開発の受発注における契約内容の整備などをサポートしている。著書「働き方改革実現の労務管理」。その他、メディアからの取材実績もあり。

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