著作権とは、私たちが頭の中で考えたり、感じたりしたことを表現した、文芸・学術・美術・音楽などの「作品」を作った人(これを「著作者」といいます)に与えられる、その作品を独占的に利用できる権利のことです。
この記事では、著作権の基本から、どんなものが保護されるのか、そして著作権侵害にならないためにはどうすればいいのかまで、わかりやすく解説していきます。
著作権は、私たちの身の回りにある様々な「作品」に関わる大切な権利です。この機会にぜひ、著作権について理解を深めましょう。
目次
著作権ってそもそも何?
著作権とは?
著作権とは、私たちが頭の中で考えたり、感じたりしたことを表現した、文芸・学術・美術・音楽などの「作品」を作った人(これを「著作者」といいます)に与えられる、その作品を独占的に利用できる権利のことです。
例えば、あなたが一生懸命描いた絵や、心を込めて書いたブログの記事にも、実は著作権が発生しているはずです。
著作権が発生するために、特別な手続きは必要ありません。作品が生まれた瞬間に、自動的に著作者に著作権が与えられます。
※これを「無方式主義」といいます。
著作権があることで、著作者は自分の作品が勝手にコピーされたり、インターネットで使われたりすることの差し止めを求めたり、逆に「こういう条件なら使ってもいいですよ」と使用を許可したりすることができます。
他の人がその作品を使いたいと思ったときは、原則として著作者の許可が必要になります。
そして、著作権と一口に言っても、実はいくつかの種類の権利の集まりです。
大きく分けると、作品の内容を勝手に変えられないようにしたり、作品を公表するかどうかを決めたりする、著作者の気持ちや人柄を守るための権利(「著作者人格権(ちょさくしゃじんかくけん)」といいます)と、作品を利用してお金を得たり、作品を他の人に譲ったりできる財産としての権利(これが一般的に「著作権」と呼ばれることの多い「著作財産権」)があります。
第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
なぜ著作権は重要?
著作権はなぜ重要なのでしょうか。
もし著作権がなかったら、これらの作品は無断でコピーされ、無償で配布されてしまうかもしれません。すると、作品を作った人は、その作品から収入を得ることが難しくなってしまい、新しい作品を作る意欲を失ってしまいます。
著作権制度は著作者に適切な使用料が入るようにすることで、著作者がまた新しい著作物を生み出すためのモチベーションを高める役割を果たしています。
その結果、世の中に多くの作品が作られ、文化の発展が進む、ということを目指しているのが著作権制度です。
著作権で保護されるもの
続いて、私たちの身の回りにある代表的なコンテンツについて、著作権がどのように関わってくるのかを見ていきましょう。
音楽の著作権
私たちが普段聴いている音楽には、様々な著作権が含まれています。
まず、曲のメロディーやリズム、ハーモニーといった楽曲には作曲家、歌詞には作詞家の著作権が発生します。これらは「音楽の著作物」として保護されます。
また、CDとして販売されているものや、配信されている音源そのものにも著作権が関係してきます。
演奏家や歌手は「実演家(じつえんか)」として、レコード会社などは「レコード製作者」として、それぞれ「著作隣接権(ちょさくりんせつけん)」という権利を持っています。
著作隣接権は、著作物を伝達する役割を担う人たちに与えられる権利で、著作権とは区別されますが、著作権と同様に法律で保護されています。
好きな音楽を個人的に聴く分には問題ありませんが、許可なくCDをコピーしたり、インターネットにアップロードしたり、お店でBGMとして流したりする行為は、著作権や著作隣接権の侵害になる可能性があります。
特に、営利目的で音楽を利用する場合には、原則として著作権や著作隣接権を持つ人の許諾を得る必要があります。
画像やイラストの著作権
インターネットや書籍、雑誌などで見かける画像やイラストも、原則として著作権で保護されています。絵やイラストを描いた人、写真を撮影した人には、それぞれ著作権が発生します。
なお、会社のウェブサイトやプレゼン資料にインターネットで見つけた画像やイラストを使いたい、と思うことがあるかもしれません。
しかし、著作権者に無断で使用することは著作権侵害となります。
フリー素材サイトなどで「著作権フリー」として提供されているものや、利用規約の範囲内で利用が許諾されているものを適切に利用することが重要です。
ウェブ記事の著作権
ウェブ記事などのウェブ上の文章も、著作権によって保護されています。
文章を書いた人には「言語の著作物」としての著作権が発生します。
ウェブサイトのデザインやレイアウトにも、美術の著作物やプログラムの著作物、あるいは編集著作物として著作権が発生する場合があります。
会社のブログ記事やオウンドメディアを作成する際に、他社のウェブサイトに載っている文章をそのままコピー&ペーストしたり、内容を少し変えただけで掲載したりすると、著作権侵害となる可能性が高いです。
他社の記事を参考にすることは問題ありませんが、自分の言葉で書き直し、オリジナリティのある文章を作成することが重要です。
どうしても他社のウェブサイトの内容を引用したい場合は、「引用」のルールを守る必要があります。
引用は、自分の著作物の中で、他の著作物を部分的に紹介する行為で、一定のルールを守れば著作権者の許可なく行うことができます。
引用の詳しいルールについては、後述する「著作権侵害とならないようにするには?」で解説します。
YouTubeの著作権
YouTubeに投稿されている動画にも、様々な著作権が関係しています。
動画そのものは「映画の著作物」として保護され、動画を作成した人に著作権が発生します。
動画の中にBGMとして音楽を使ったり、他の人が作成した映像や画像を組み込んだりする場合には、それらのコンテンツの著作権や著作隣接権にも配慮が必要です。
YouTubeに動画をアップロードする際に、他人の音楽や映像、画像などを著作権者の許可なく使用すると、著作権侵害となる可能性があります。
著作権侵害をした場合、YouTubeから動画を削除されたり、チャンネルを停止されたりするだけでなく、著作権者から損害賠償を請求されるといった法的なトラブルに発展するリスクもあります。
YouTubeが提供している著作権フリーの音楽や効果音を利用したり、著作権者から利用の許可を得たりするなど、著作権に配慮した動画作成を心がけましょう。
ゲーム実況動画などの場合は、ゲームの権利者がYouTubeなどでの配信についてガイドラインを定めていることもありますので、そのガイドラインに従う必要があります。
キャラクターの著作権
ミッキーマウスやアンパンマンといった有名なキャラクターは、見た目やデザインが美術の著作物として保護されています。
ただし、キャラクターの場合、著作権だけでなく「商標権(しょうひょうけん)」という別の権利でも保護されていることが多いです。
商標権は、商品やサービスの名前やマークを保護する権利で、キャラクターの名前やロゴなどが商標登録されることで、そのキャラクターを商品に使ったり、サービスのマークとして使ったりすることを独占できるようになります。
このように、キャラクターを利用する際には、著作権だけでなく商標権にも注意が必要で、やや複雑です。
特に有名なキャラクターについては、権利者が厳しく管理していることが多いため、安易な利用は避けるようにしましょう。
ミッキーマウスなどディズニーの著作権
ミッキーマウスをはじめとするディズニーキャラクターは、世界中で愛されていますが、その著作権管理は非常に厳格です。
特に初期の短編作品に登場するミッキーマウスの一部の著作権がアメリカで期限を迎えたという報道がありましたが、これはあくまで一部であり、多くのキャラクターやその後の作品、そして関連する商標権などは引き続き保護されているのが現状です。
日本国内での著作権保護期間についても、作品の公表時期などによって判断が異なる場合があり、複雑です。
ディズニーキャラクターを使った商品を作成・販売したり、イベントでキャラクターを使用したりする際には、必ずウォルト・ディズニー・ジャパンなどの権利者から正式な許諾を得る必要があります。
無断で使用した場合、著作権侵害や商標権侵害として、差し止め請求や損害賠償請求といった法的措置を取られる可能性があります。
アンパンマンの著作権
アンパンマンもまた、非常に人気の高いキャラクターですが、その著作権はしっかりと保護されています。
作者のやなせたかし先生がお亡くなりになった後も、著作権は関係各所に引き継がれ、管理が行われています。
アンパンマンのキャラクターが描かれたグッズを個人的に楽しむために購入することは問題ありませんが、アンパンマンの絵を勝手に使ってオリジナルの商品を作って販売したり、インターネット上でキャラクターの画像を無断で公開したりする行為は、著作権侵害となります。
過去には、アンパンマンのキャラクターがデザインされたワッペンを無許可で輸入しようとした事例や、キャラクターを使ったゲームアプリを無断で配信した事例などが著作権侵害として摘発されています。
これらの事例からもわかるように、アンパンマンの著作権管理も厳正に行われています。
SNSの動画の著作権
X (旧Twitter) やInstagram、TikTokなどのSNSに投稿されている動画にも著作権があります。
動画を撮影・編集して投稿した人に著作権が発生します。
動画に含まれるBGMや効果音、テロップなども、それぞれ著作権や著作隣接権、または著作物として保護されている場合があります。
SNSで見つけた面白い動画を、元の投稿者に無断で自分のアカウントに転載したり、ダウンロードして編集し直したりする行為は、著作権侵害となる可能性があります。
SNSの機能を使って、元の投稿をシェア(共有)することは、プラットフォーム側が用意した機能ですので、基本的に著作権侵害にならないといえますが、ダウンロードや改変を伴う利用には注意が必要です。
特に、誰かが撮影した動画に、別の人が作成した音楽を勝手に付けて投稿するといった行為は、元の動画の著作権と、使用された音楽の著作権の両方を侵害してしまう可能性があります。
SNSに動画を投稿する際には、自分で作成した動画であること、または使用している素材について著作権者の許諾を得ていることを確認することが大切です。
猫のミームの著作権
最近よく見かける「猫ミーム」と呼ばれる、様々な猫の動画にBGMやテロップ、効果音などを付けたショート動画も、著作権の観点から注意が必要です。
これらの動画の元になっている、猫が登場するオリジナルの動画には、その撮影者に著作権があります。また、動画に使われている音楽や効果音にも、それぞれ著作権者が存在します。
猫ミーム動画を自分で作成してSNSに投稿する場合、元の猫の動画や使用する音楽、効果音などについて、それぞれの著作権者の許諾を得る必要があります。
多くの場合、個人的に楽しむ範囲での視聴であれば問題になりにくいかもしれませんが、インターネット上で公開したり、収益化したりする場合には、著作権侵害のリスクが高まります。
現状では、猫ミームに関する著作権トラブルが大きく報じられるケースは少ないようですが、法的には著作権侵害にあたる可能性があります。
ピンタレストの著作権
ピンタレストは、画像や動画を集めて共有するSNSですが、ここでも著作権に注意が必要です。ピンタレストに投稿されている画像や動画は、原則として投稿者または元の著作権者に著作権があります。
そもそも、ピンタレストの利用規約では、ユーザーは自分が著作権を持っているか、または使用許諾を得ているコンテンツのみをアップロードすることが求められています。
ピンタレスト内で他のユーザーが投稿した画像を「ピン」(自分のボードに保存)したり、「リピン」(他のユーザーのボードに共有)したりする行為は、ピンタレストのプラットフォーム内で提供されている通常機能ですから、基本的には著作権侵害にならないといえます。
しかし、ピンタレストで見つけた画像をダウンロードして、自分のブログやSNS、会社の資料などで無断で使用する行為は、著作権侵害となる可能性が高いです。
特に、商用目的での利用には、著作権者の明確な許諾が必要です。ピンタレストで見つけた素敵な画像を参考にすることは問題ありませんが、そのまま利用することは避けるべきでしょう。
著作権で保護されないもの
ここまで、様々な作品が著作権で保護されることを見てきました。
しかし、世の中のすべてのものが著作権の対象となるわけではありません。
続いて、著作権で保護されないものにどういう物があるか、解説します。
アイデアやコンセプト
著作権はあくまで作品の「表現」を保護するものであって、作品の元になった「アイデア」や「コンセプト」、「テーマ」そのものは保護されません。
会社で新しい商品やサービスの企画を考える際、他社のアイデアを参考にすることは問題ありません。
しかし、そのアイデアを表現するデザインやマニュアル、ソフトウェアなどに、他社の著作物(表現)を無断で使用しないように注意が必要です。
事実やデータ
単なる事実やデータも、原則として著作権の保護の対象にはなりません。
例えば、歴史上の出来事、科学的な法則、天気予報のデータ、スポーツの試合結果などは事実・データであり、それ自体には著作権がありません。
ただし、これらの事実やデータを元にして、特定の人の考えや工夫に基づいて作成された文章、図表、グラフなどには著作権が発生する場合があります。
会社で市場のデータを分析し、その結果をまとめたレポートを作成した場合、そのレポートの文章やグラフには著作権が発生しますが、レポートの元になった個々の生データそのものには著作権がない、ということになります。
法律、政令、裁判所の判決など
憲法や法律、政令、条約、そして裁判所の判決や行政機関の決定など、国や地方公共団体が出す公的な文書も、著作権の対象とはなりません(法第13条)。
会社でコンプライアンスに関する資料を作成する際に、法律の条文をそのまま引用したり、過去の裁判例を参考にしたりすることは自由に行えます。
ただし、個人や民間企業が独自の視点や解説を加えて作成した法律の解説書や判例集などには、その解説や編集に著作権が発生しますので注意が必要です。
プログラム言語、規約、解法
コンピュータープログラムそのものは「プログラムの著作物」として著作権で保護されますが、プログラムを作るために使う「プログラム言語」(JavaやPythonなど)や、「規約」(特定のプログラム言語の使い方に関する約束事、APIなど)、「解法」(アルゴリズム)には、著作権が及びません(法第10条3項)。
会社でソフトウェア開発を行う従業員は、既存のプログラム言語や規約、解法を自由に利用して新しいプログラムを作成することができます。
しかし、他の会社が開発した特定のプログラムのソースコード(プログラムの内容を記述した文字列)を無断でコピーして自分のプログラムに組み込んだり、他社のプログラムを解析してその表現を真似したプログラムを作成したりする行為は、プログラムの著作権侵害となります。
生成AIで生成されたコンテンツに著作権はある?
生成AIが作ったコンテンツに著作権は発生するのか、というのが近年重要な論点になっています。
結論から言うと、現在の日本の著作権法では、AIが、人間の関与なしで自律的に生成したコンテンツには、原則として著作権は発生しないと考えられています。
AIは、あくまでプログラムに基づいてデータを処理しているに過ぎず、人間のような思想や感情を持って創作的な表現を行っているわけではない、と言えるからです。実際に、著作権法においては、「著作者」になれるのは人間に限られています。
しかし、問題になるのは、人間が生成AIを「道具」として利用し、AIに指示を与えたり、生成されたコンテンツに人間が 加筆や修正を加えたりした場合です。
生成AIを利用した場合であっても、その生成プロセスに人間による一定の貢献がある場合には、著作権が発生する可能性があるとされています。具体的には、以下のようなケースが考えられます。
ただし、その明確な線引きは、まだ定まっているとは言えません。様々な事情から個別判断されることになりますが裁判例の蓄積を待つ必要があります。
著作権があるとどんなことができる?
作品が無事に著作物として認められ、著作権者となった場合、具体的に何ができるのでしょうか。
著作権は、大きく分けて「著作権(著作財産権)」と「著作者人格権」の二つの柱で成り立っています。
それぞれに複数の権利が含まれており、著作権者はこれらの権利を専有したり、または他の人に許可を与えることができます。
著作権者の権利
まずは、財産としての価値を持つ「著作権(著作財産権)」に含まれる主な権利を見ていきましょう。これらの権利は、作品を利用してお金を得ることに関わるものです。
権利種類 | 内容 |
---|---|
複製権 | 著作物をコピーする権利です。本を印刷したり、CDを複製したり、データをダウンロードしたり、画面をスクリーンショットしたり、手書きで書き写したり、といったあらゆる方法でのコピーが含まれます。 |
上演権及び演奏権 | 著作物を、多くの人に向けて上演したり演奏したりする権利です。演劇を上演したり、楽曲を演奏したりすることがこれにあたります。お店でBGMとしてCDを流したり、イベントで音楽を演奏したりする場合に、著作権者の許諾が必要となるのはこの権利があるからです。ただし、非営利・無料・無報酬の場合は、例外的に許諾なしでできる場合があります。 |
上映権 | 著作物をスクリーンやディスプレイに映して、多くの人に見せる権利です。映画館で映画を上映したり、会社の会議室でDVDを再生したりすることがこれにあたります。 |
公衆送信権及び公の伝達権 | インターネットなどを通じて、著作物を多くの人が受信できるように自動的に送信したり(公衆送信)、公衆送信された著作物を受信装置を使って多くの人に伝達したりする権利です。ウェブサイトに著作物をアップロードしたり、メールで送信したり、テレビやラジオで放送したりすることがこれにあたります。会社のウェブサイトに著作権者の許諾なく画像や動画を掲載する行為は、この公衆送信権の侵害となる可能性があります。 |
口述権 | 言語の著作物などを、多くの人に向けて朗読したり、講演したりする権利です。 |
頒布権(はんぷけん) | 映画の著作物の複製物を、多くの人に配ったり、譲ったり、貸したりする権利です。映画のDVDを販売したりレンタルしたりすることがこれにあたります。 |
展示権 | 美術の著作物や写真の著作物のオリジナル作品を、多くの人に見せる権利です。美術館で絵画を展示したり、写真展で写真を展示したりすることがこれにあたります。 |
譲渡権 | 映画以外の著作物のオリジナル作品や複製物を、多くの人に譲ったりする権利です。書籍や絵画の現物を販売したりすることがこれにあたります。 |
貸与権(たいよけん) | 映画以外の著作物の複製物を、多くの人に貸したりする権利です。CDや本のレンタルがこれにあたります。 |
翻訳権、翻案権など | 著作物を翻訳したり、編曲したり、変形したり、脚色したり、映画化したり、その他創造性のある修正を加えて新しい著作物(二次的著作物)を作成する権利です。小説を映画にしたり、楽曲をアレンジしたりすることがこれにあたります。 |
二次的著作物の利用に関する原著作者の権利 | 自分の著作物を元にして作られた二次的著作物を利用することについて、元の著作者が持つ権利です。例えば、小説が映画化された場合、その映画(二次的著作物)が上映されたり、DVD化されたりすることについても、小説の原作者は権利を持つことになります。 |
一方、「著作者人格権」は、著作者の精神的利益を守るための権利で、著作者の「人柄」に関わる権利と言えます。主な著作者人格権は以下の通りです。
権利種類 | 内容 |
---|---|
公表権 | まだ世の中に発表していない自分の著作物を、公表するかどうか、いつ、どのような方法で公表するかを決める権利です。 |
氏名表示権 | 自分の著作物を公表する際に、著作者名を表示するかどうか、表示するとすれば本名にするかペンネームなどにするかを決める権利です。 |
同一性保持権 | 自分の著作物の内容やタイトルを、自分の意に反して勝手に改変されない権利です。絵の色を勝手に変えられたり、文章の内容を無断で書き換えられたりしないように求めることができます。ただし、学校教育目的での必要な修正や、建築物の増改築に伴う改変など、一定の例外が認められています。 |
名誉声望保持権(めいよせいぼうほじけん) | 自分の著作物の利用方法によって、著作者の名誉や評判が傷つけられないように求めることができる権利です。例えば、アダルトサイトに自分のイラストを無断で掲載されるなど、社会的な評価を損なうような形で著作物を利用された場合に、これを差し止めることができます。 |
著作権の譲渡と使用許諾について
著作権(著作財産権)は、財産としての権利なので、他の人に「譲渡」したり、「使用許諾」(ライセンスとも言います)を与えることができます。
著作権の譲渡
著作権そのものを、他の人や会社に完全に移転させることを、著作権の譲渡といいます。
著作権を譲渡された人は、譲渡された範囲で著作権者となり、その著作物を自由に利用したり、さらに他の人に許諾を与えたりできるようになります。
ただし、著作権を譲渡しても、著作者人格権は著作者本人の元に残るため注意が必要です。
著作物の使用許諾(ライセンス)
著作権は譲渡せずに、他の人や会社に一定の範囲と条件(利用方法、期間、地域など)で著作物の利用を許可することです。
許諾を受けた人や会社は、その範囲内でのみ著作物を利用できますが、著作権そのものが移転するわけではありません。
利用許諾の対価として、「ライセンス料」や「ロイヤリティ」といったお金が支払われることが一般的です。
著作権の期限とは?
著作権には「保護期間」という有効期限が定められています。
この保護期間が過ぎた著作物は、「パブリックドメイン」となり、原則として誰でも自由に利用できるようになります。
日本の著作権法では、原則として著作権の保護期間は、著作者が亡くなった後、「70年」を経過するまでの間と定められています(法第51条2項)。
ただし、著作物の種類や著作者の状況によっては、保護期間の考え方が異なる場合があります。主な例外は以下のとおりです。
無名または変名の著作物
著作者の名前が公表されていない「無名の著作物」や、本名ではないペンネームなどが広く知られていない「変名の著作物」の場合、原則として著作物が公表された時から70年を経過するまでの間保護されます(法第52条1項)。
団体名義の著作物
会社やその他の団体が「著作者」となる「職務著作」(従業員が会社の業務として作成し、会社が著作者となる著作物)など、団体名義で公表される著作物の著作権は、原則として著作物が公表された時から70年を経過するまでの間保護されます(法第53条1項)。
 
映画の著作物
映画の著作物の著作権は、原則として「公表」された時から「70年」を経過するまでの間保護されます(法第54条1項)。
著作権の侵害とは?
著作権侵害とは、簡単に言うと、著作権者が持っている様々な権利(複製権、公衆送信権など)を、著作権者の許諾を得ず勝手に行使することです。
著作権侵害の要件について、裁判例では、以下の2つを満たす必要があるとされています。
原則として、これらの要件に該当する場合は一部の例外を除いて著作権侵害になります。
- ① 後発の作品が既存の著作物と同一、又は類似していること(類似性)
- ② 既存の著作物に依拠して複製等がされたこと(依拠性)
以下では著作権侵害のよくある具体例、そして著作権侵害をしないために気を付けるべき点について見ていきましょう。
著作権侵害の具体例
事例2 市販のCDやDVDを無断でコピーして友人にあげる、インターネットで配布する
事例4 他人の描いたキャラクターの絵を真似てグッズを作成・販売する
事例5 テレビ番組や映画を個人的に録画したものを、インターネットで公開する
事例6 市販のソフトウェアを会社の複数のパソコンに、契約で認められた台数を超えてインストールする
以上のように、様々な場面で著作権侵害のリスクが潜んでいます。たとえ悪意がなかったとしても、著作権を侵害してしまう可能性がありますので、この記事をきっかけに著作権に関する正しい知識を持つようにしましょう。
著作権侵害とならないようにするには?
著作権侵害とならないようにするためには、著作物を利用する際に以下の点に気を付けることが大切です。
著作権フリーのコンテンツを利用する
著作権フリーとして提供されている画像や音楽、イラストなどは、著作権者の許諾なく利用することができます。
ただし、提供されているサイトや素材ごとに利用規約が定められている場合が多いので、利用規約の範囲内で使用するようにしましょう。
引用のルールを守る
自分の著作物の中で、他の著作物を「引用」として利用する場合には、著作権者の許諾なく行うことができます(著作権法第32条)。
ただし、引用と認められるためには、
- 公表されている著作物の引用であること
- 公正な慣行に合致する方法であること
- 引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものであること
が必要です。
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2 国等の周知目的資料は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
その上で、一般的な慣行に従って、以下①〜⑤のようなルールを守って引用する事が必要とされています。
- ① 自分の著作物が「主」であり、引用する部分が「従」であること(引用部分の量が自分の文章全体に対して従であること)
- ② 引用する「必要性」があること(自分の考えや主張を説明するために、どうしてもその著作物を引用する必要があること)
- ③ 引用部分が自分の文章と明確に区別されていること(「」で囲むなど)
- ④ 出典(著作物のタイトル、著作者名、公表媒体など)を明記すること
- ⑤ 改変は原則として認められない
引用は著作権者の許可なく可能ですが、このように複数の条件があることを覚えておきましょう。
私的使用の範囲:家族や友人にコピーはOK?どこまでが許される?
著作権法では、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」で使用する目的であれば、著作物を複製することができると定めています(著作権法第30条)。これを「私的使用のための複製」と言います。
例えば、自分で買ったCDを自宅の音楽プレイヤーに取り込んだり、テレビ番組を録画して家族と見たりすることは、この私的使用のための複製として認められます。
では、家族や友人へのコピーはどこまで許されるのでしょうか?
基本的に、友人や会社の同僚といった家族以外の他人にコピーして渡す行為は、原則として私的使用の範囲を超えると考えられています。
また、線引きがやや難しい問題ですので、「家庭内」と認められやすい家族間であっても、やり過ぎには十分注意しましょう。
生成AIはコピペに注意する
前のセクションでも述べたように、生成AIが既存の著作物に類似したコンテンツを生成してしまうリスクがあります。
生成AIを利用して作成したコンテンツを公表する前には、既存の著作物と類似していないか、意図せず著作権侵害をしていないか、必ず自分で確認するようにしましょう。
特に、生成AIへの指示(プロンプト)に、特定の既存著作物の内容を含めたり、既存著作物そっくりのものを生成するように求めたりする行為は、著作権侵害となる可能性が高まります。
著作権に関する相談窓口
続いて、著作権に関する主な相談窓口をご紹介します。
著作権について、疑問に思われたり、トラブルに合ってしまった場合にはご自身の状況に合わせて、一人で悩まずにこれらの窓口へ早期に相談されるのがおすすめです。
文化庁
著作権を管轄する省庁は文化庁です。
文化庁では、著作権の相談を受け付けており、特に、海賊版による著作権侵害についてはこれに特化した専用相談窓口を設けています。
海賊版にお悩みの場合には、まずこちらにお問い合わせいただくのが良いでしょう。
参考:インターネット上の 海 賊 版 による 著 作 権 侵 害 対 策 情 報 ポータルサイト|文化庁の相談窓口
JASRACなど著作権管理団体
JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)に代表される著作権等管理団体は、著作権者から著作権の管理の委託を受けて、利用者からの使用料の徴収や、著作権侵害への対応などを行っています。
著作権管理団体は、作品の種類によって細分化されています。
JASRACであれば、音楽。
日本文藝家協会であれば、文芸。
といった具合で多数の団体があり、それぞれに多数の著作者が加盟しています。
例えば、音楽を利用したい場合(お店でBGMを流す、イベントで演奏するなど)には、JASRACなどの著作権管理団体に使用料を支払うことで、著作権者の許諾を得て利用できるようになります。
公益社団法人著作権情報センター(CRIC)
公益社団法人著作権情報センター(CRIC)は、上で説明した複数の著作権管理団体が参画する公益社団法人で、著作権に関する情報提供や教育、普及啓発活動を行っている団体です。
ここでは、著作権全般について相談窓口を設けて無料相談を受け付けています。
会社は企業法務に強い弁護士に相談
個人の利用における著作権の疑問であれば、上記の相談窓口である程度解決できるかもしれません。
しかし、会社の事業に関わる著作権の問題は、より複雑で専門的な判断が必要となるケースが多いです。
このような会社の事業に直結する著作権問題については、企業法務、特に知的財産権や著作権に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
特に著作権等の知的財産権に関する業務が日常的に発生する場合には、企業法務に強い弁護士を顧問弁護士とされるのがよいでしょう。
会社法務に強い弁護士へ相談するメリットや、顧問弁護士については、以下のページをご覧ください。
著作権に関するよくある質問
続いて、著作権に関するよくある質問についてご紹介します。
AIが作った作品に著作権はある?

一方、人がAIを道具として使用して制作したといえる作品には著作権が認められます。
この境界線は非常に微妙ですが、人に創作意図があるか、人が創作的寄与と認められる行為が行ったか、によって判断されます。
悩ましい事例については、ご自身で決めつけることなく、知的財産権に詳しい弁護士などへ相談されることをお勧めします。
著作権のトラブルに巻き込まれたら?

特に会社の業務で問題が発生した場合は、会社の信用や事業継続に関わるため、企業法務に詳しい弁護士のサポートが不可欠です。
弁護士は、警告状の内容が法的に正しいか判断し、著作権侵害にあたる可能性や、対応策について専門的なアドバイスを提供してくれます。
相手方との交渉や、万が一訴訟になった場合の対応も依頼できます。
一方、もし、あなたの著作権が他人に侵害された場合、相手の状況にもよりますが、警告状の送付などを検討するのがよいでしょう。
弁護士を通じて侵害行為の中止や損害賠償を求める警告状を送付することが一般的な第一歩です。
弁護士名義で警告することで、相手方が真剣に対応する可能性が高まります。
警告にも応じない場合や、悪質な侵害行為の場合には、法的な措置を検討することになります。
まとめ
この記事では、著作権全般について基本事項を押さえつつ、問題となりやすいテーマについて踏み込んで解説してきました。
特に会社などで気をつけるべきなのは、気づかぬうちに著作権侵害となってしまうケースです。
著作権侵害は、意図的でなくても成立してしまうことがあり、差止め請求や損害賠償請求といった法的な責任を問われるリスクや、会社の信用を失うリスクも伴います。
もし、著作権についてわからないことや、著作権侵害に関する疑問、トラブルに直面した場合は、一人で抱え込まずに企業法務に強い弁護士に相談することをお勧めします。
デイライト法律事務所では、企業法務に関する豊富な経験と専門知識を持つ弁護士が、皆様のビジネスをサポートいたします。
著作権などの知的財産権に関するご相談はもちろん、その他企業法務全般について、お気軽にお問い合わせください。
LINEや電話相談を活用した全国対応も行っていますので、お気軽にご相談ください。