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「定款(ていかん)」とは、法人(株式会社、一般社団法人、財団法人など)の目的、組織、活動に関する根本原則のことで、そのような原則を記載した書面や電磁的記録(電子定款)を「定款」と呼びます。
定款は、会社や法人の「根本的なルール」を定めたものであり、いわば「会社の憲法」としての性質を持っています。
そして、法人を設立する際には必ず定款を作成しなければならず、対外的な信用を担保するために非常に重要となる書類です。
この記事では、定款の意味や、定款に記載する内容、会社の定款の作成や変更の方法と流れ、定款に関わる費用などについて、弁護士がわかりやすく解説していきます。
定款とは?

定款の意味と読み方
「定款(ていかん)」とは、会社や法人の「根本的なルール」を定めた、いわば「会社の憲法」となる書面のことを意味します。
「款」という漢字には「まこと・まごころ」や「したしむ」といった意味のほか、「しるす」、「しるし文字」といった意味があります。
そのため、「款」には、「条項」や「定め」という意味が含まれています。
そして、法律用語としての「定款(ていかん)」は、法人(株式会社、一般社団法人、財団法人など)の目的、組織、活動に関する根本原則を指します。
また、そのような原則を記載した書面や電磁的記録(電子定款)そのものも「定款」と呼ばれます。
定款は「会社におけるもっとも重要な基本的なルール」としての性質を持っています。
会社法はすべての企業に適用される一般的なルールを定めたものです。
一方、定款は「その会社特有のルール」を定めるものであり、法令に反しない限り、定款の定めは社内の意思決定において会社法よりも優先される事項が多くあります。
したがって、その会社にとっての最高法規といえるルールを記載したものが「定款」といえます。
定款の目的
企業がわざわざ定款を作成する目的として、以下のような理由があります。
まず、法人格を取得し、それを公示するためです。
会社が「人」と同じように契約を結んだり、裁判の当事者になったりするためには「法人格」が必要です。
会社が法人格を取得するためには、会社の業務範囲を規定した定款を作成し、法務局に登記する必要があります。
定款の登記によって、その会社が何を目的に存在するのかを社会的に公(おおやけ)にし、法人格を付与してもらえます。
また、定款を作成することで、組織の統率や紛争を防止することができます。
会社には複数の株主や役員、従業員が関わります。
あらかじめ定款で「誰がどのような権限を持つか」を明確にしておくことで、社内の意見対立やトラブルを未然に防ぐことができます。
さらに、定款を作成しておくことで、所有と経営の分離における監督機能を高めることも可能です。
特に株式会社では、出資者(株主)と経営者(取締役)が分かれることがあります。
定款によって取締役の権限を制限したり、監査の仕組みを整えたりすることで、経営陣の暴走を防ぎ、株主の利益を保護する役割を果たします。
そして、定款を作成することで、第三者(取引先・金融機関)の保護を図ることもできます。
取引先や銀行は、その会社がどのような事業を行っているのか、誰が正当な代表権を持っているのかを定款や登記によって判断します。
定款が適正に運用されていることは、企業の社会的信用を担保する基礎となります。
定款と約款の違い
「定款(ていかん)」と似た言葉に「約款(やっかん)」があります。
どちらもルールを定めたものですが、その性質と対象は大きく異なります。
定款は、前述の通り「会社そのものの形や運営ルール」を定めるものです。
影響を及ぼす範囲は、その会社の株主や役員といった内部の構成員に限定されます。
そのため、定款は「内向きのルール」という性質が強くなります。
これに対して、「約款(やっかん)」は、不特定多数の利用者と取引を行う際に、個別に契約書を作る手間を省くためにあらかじめ作成された「共通の契約条項」を指します。
例えば、保険契約、鉄道の利用規約、銀行口座の利用規定、ソフトウェアの利用規約などがこれに該当します。
したがって、約款は、会社と外部の顧客との間の関係を規定する「外向きの取引ルール」といえます。
また、変更手続きにも違いがあります。
定款の変更には株主総会の特別決議(原則として議決権の3分の2以上の賛成)が必要であるため、非常に厳格な手続きを要します。
これに対して、約款は、合理的な範囲内であれば事業者が一方的に変更できるケースもあります。
したがって、利用者側は気づかないうちに約款が不利益に変更されてしまう可能性があるため、注意が必要です。
会社の定款のサンプル・雛形
定款は、会社の実情に合わせて作成する必要がありますが、まずは標準的な構成を理解することが重要です。
ここでは、一般的な「取締役1名・監査役非設置」の小規模な株式会社を想定した、シンプルで汎用性の高いサンプルを紹介します。
株式会社〇〇〇〇 定款
第1章 総則
(商号)
第1条 当会社は、株式会社〇〇〇〇と称する。
(目的)
第2条 当会社は、次の事業を行うことを目的とする。
1 〇〇の製造及び販売
2 〇〇に関するコンサルティング業務
3 前各号に附帯又は関連する一切の事業
(本店所在地)
第3条 当会社は、本店を東京都〇〇区に置く。
(公告方法)
第4条 当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。
第2章 株式
(発行可能株式総数)
第5条 当会社の発行可能株式総数は、〇〇〇〇株とする。
(株券の不発行)
第6条 当会社は、その株式に係る株券を発行しない。
(株式の譲渡制限)
第7条 当会社の発行する株式の譲渡による取得については、取締役の承認を受けなければならない。
第3章 株主総会
(招集時期)
第8条 当会社の定時株主総会は、毎事業年度の終了後3か月以内に招集し、臨時株主総会は、必要がある場合に随時招集する。
(招集通知)
第9条 株主総会の招集通知は、会日の5日前までに、議決権を有する各株主に対して発する。
第4章 取締役
(取締役の員数及び選任)
第10条 当会社の取締役は1名以上とする。
2 取締役は、株主総会において選任する。
(取締役の任期)
第11条 取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
第5章 計算
(事業年度)
第12条 当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月末日までとする。
第6章 附則
(設立に際して出資される財産の価額)
第13条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金〇〇万円とする。
(最初の事業年度)
第14条 当会社の最初の事業年度は、当会社成立の日から令和〇年3月末日までとする。
(発起人)
第15条 発起人の氏名、住所及び割当てを受ける株式数は次のとおりである。
住所:東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号
氏名:〇〇〇〇 〇〇株
以上、株式会社〇〇〇〇設立のため、この定款を作成し、発起人が次に記名押印する。
令和〇年〇月〇日
発起人 〇〇〇〇 印
定款に記載する内容とは?

絶対的記載事項
「絶対的記載事項」とは、会社法によって、定款に「必ず記載しなければならない」と定められている事項です。
もし、絶対的記載事項にあたる項目が1つでも欠けていたり、内容が法令に違反していたりすると、その定款全体が無効となり、会社設立の登記も受理されません。
その項目を記載することが定款の効力に関わってくるという点で、「絶対」に記載しなければならない事項という意味です。
具体的に、株式会社の絶対的記載事項として、以下の項目があります(会社法第27条)。
事業の目的:会社がどのような事業を行うかを明示します。
あまりに抽象的すぎると「目的の明確性」に欠けると判断されるリスクがあり、逆に範囲が狭すぎると将来の事業拡大時に定款変更が必要になります。
- 商号(社名):会社名のことです。株式会社であれば、名称の中に必ず「株式会社」を含める必要があります。
- 本店の所在地:会社の正式な住所です。市区町村の最小行政区画(「東京都中央区」など)までの記載に留めることも可能で、そうすることで同一区内での移転時に定款変更を不要にする工夫も一般的です。
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額:いわゆる資本金のベースとなる金額です。
会社設立時に発起人が払い込む金銭や現物などの出資金の総額、または事業運営に必要な最低限の金額を指します。
旧商法に定められていた最低資本金制度(株式会社の場合は1000万円、有限会社の場合は300万円)は、平成18(2006)年の新しい会社法の施行により廃止されました。
これにより、現在では資本金が1円でも株式会社の設立が可能になり、有限会社の新規設立は不可となりました。
発起人の氏名または名称及び住所:会社設立の責任者である発起人全員の情報を記載します。
これらの事項は、取引先や金融機関が会社を確認する際の最も基本的な情報となるため、正確かつ慎重に決定する必要があります。
相対的記載事項
相対的記載事項とは、定款に記載しなくても定款自体の効力には影響しないものの、「定款に定めておかなければ法律上の効力が認められない事項」のことを指します。
相対的記載事項は、会社法が定める原則的なルールとは異なる特別な取り決めをしたい場合に活用されます。
実務上、相対的記載事項として重要となる項目には、以下のようなものがあります。
株式の譲渡制限:これは、第三者が勝手に株式を取得して株主にならないよう、株式を譲渡する場合には会社の承認が必要となるという定めです。
したがって、第三者が経営に関与することを避けたい中小企業・同族企業は、定款に記載すべき条項といえます。
定款には、「当会社の発行する株式の譲渡による取得については、株主総会(取締役)の承認を受けなければならない」といった形で記載する必要があります。
- 役員の任期の伸長:原則として取締役の任期は2年、監査役の任期は4年ですが、非公開会社(譲渡制限会社)であれば定款に定めることで最長10年まで延長することができます(会社法第332条2項)。
- 機関設計の定め:取締役会や会計参与、監査役、会計監査人及び委員会を設置するかどうか、といった組織構成に関する事項は、相対的記載事項に該当します。
- 株主総会の招集通知を出す期間の短縮:株主総会を招集する際には、通常の株式会社の場合は、招集通知を株主総会の2週間前までに、非公開会社の場合は、1週間前までに出すのが原則です。
しかし、取締役会が設置されていない非公開会社の場合には、定款に記載することで、株主総会の招集通知を出す時期を1週間前よりも短縮することができます。
変態設立事項:「変態設立事項(へんたいせつりつじこう)」とは、会社法第28条の規定により、定款に定めがなければ効力を生じない事項のことを指します。
具体的には、以下の事項が変態設立事項に該当します。
- ① 金銭以外の財産を出資する者の氏名または名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数
- ② 株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名または名称
- ③ 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名または名称
- ④ 株式会社の負担する設立に関する費用
これら相対的記載事項を適切に設計することで、経営権の安定化や、役員改選に伴う登記費用の削減などが可能になります。
自社の規模や経営スタイル、将来像に合わせたカスタマイズが求められる箇所です。
任意的記載事項
任意的記載事項とは、絶対的記載事項や相対的記載事項には当たらないものの、会社の運営ルールを明確にするために任意で記載する事項のことを指します。
株式会社の定款には、絶対的記載事項・相対的記載事項以外にも、会社法の規定に違反しないものを記載・記録することが認められています(会社法第29条)。
定款に記載しなくても、別途「社内規程(就業規則や取締役会規程など)」で定めていれば法的効力は認められますが、あえて定款に記載することで、ルールをより強固にし、株主総会の決議なしには勝手に変更できないようにするという効果があります。
主な具体例は以下のとおりです。
定時株主総会の招集時期:定款には、株主総会の開催時期や招集方法、決議などについて記載しておくことができます。
たとえば、株主総会が決算日から何ヶ月以内に招集し開催するかを定めておくことができます。
- 事業年度:決算期をいつにするか(例:毎年4月1日から翌年3月31日まで)という定めです。
- 役員報酬の決定方法:取締役などの報酬については、会社法により株主総会または定款によって決定する必要があります。
そのため、取締役などの報酬については、任意的記載事項として定款に記載することができます。
定款に記載がない場合には、株主総会の決議によって役員の報酬を決める必要があります。
決算公告の方法:株式会社は毎年決算公告を行う義務があります。
会社の決算公告を、官報、日刊新聞、電子公告のいずれの方法で行うかを定款の任意的記載事項として指定することができます。
注意点として、任意的記載事項であっても一度定款に記載してしまうと、その内容を変更するには「株主総会の特別決議」が必要になるという点です。
そのため、頻繁に変更が予定される詳細な事務手続きなどは、定款ではなく社内規程に委ねる方が、機動的な経営判断に資する場合もあります。
何を定款に記載し、何を社内規程に任せるかのバランスは、企業法務の専門的な判断が分かれるポイントであるため、法律の専門家である弁護士に相談されることをおすすめします。
会社の定款の作成方法と流れ
会社の定款を作成し、会社を設立するためには、以下のような流れを経る必要があります。
以下それぞれのフェーズのポイントについて、詳しく解説していきます。
定款の作成
会社設立の第一歩は、発起人(設立者)による定款の作成です。
前述した「絶対的記載事項」を網羅し、自社の実情に合わせた「相対的事項」や「任意的事項」を条文形式で構成していきます。
作成方法は大きく分けて2種類あります。
1つ目は、紙の定款を作成する方法です。
これは、作成した書類を印刷・製本し、発起人全員が署名・押印します。
この場合、印紙税法に基づき4万円の収入印紙を貼付する必要があります。
2つ目は、電子定款を作成する方法です。
これは、PDFファイルに電子署名を付与して定款を作成する方法です。
電子定款のメリットは、印紙代4万円が不要になる点です。
ただし、電子署名のための専用ソフトやICカードリーダーなどの環境整備が必要となるため、弁護士や行政書士などの専門家に依頼して作成するのが一般的です。
また、定款の作成時には、将来の増資を見据えた「発行可能株式総数」や、機関設計(取締役会の有無など)を慎重に吟味しなければなりません。
安易な雛形の流用は、後の経営の自由度を奪うリスクがあるため、弁護士のリーガルチェックを受けることが推奨されます。
定款の認証
定款が完成したら、次に行うのが「公証人による認証」です。
定款の認証は、公証役場の公証人が、定款が正当な手続きで作成されたことを証明する手続きです。
株式会社や一般社団法人、一般財団法人を設立する場合、定款の認証は必須の手続きであり、認証がない定款は法的に無効となります。
一方、合同会社や合資会社、合名会社などの持分会社は、定款の認証は不要です。
注意点として、認証を受ける公証役場は、「会社の本店所在地を管轄する法務局」に所属する公証人でなければなりません。
例えば、東京都に本店を置く場合は、都内の公証役場を利用する必要があります。
認証にかかる手数料は、資本金の額によって変動します。
- 資本金100万円未満:3万円(一定の要件を満たす場合は、1万5000円)
- 100万円以上300万円未満:4万円
- 300万円以上:5万円
このほか、謄本代(1枚250円程度)も必要となります。
実務上は、認証申請の前に公証役場へ案文をメール等で送り、内容の事前確認を受けておくと当日スムーズに完了できます。
なお、合同会社(持分会社)の場合は、この認証手続きが不要であるという点が大きな違いです。
資本金の払い込み
定款の認証が完了した後、または電子定款の送信が終わった後、出資金(資本金)を銀行口座に払い込みます。
この時点ではまだ会社名義の口座は作れないため、発起人の代表者個人の銀行口座を使用します。
払い込みの際のポイントは、単に口座に残高がある状態ではなく、「定款認証日以降の日付で、発起人の名前で振り込みが行われていること」を記帳によって証明する必要がある点です。
また、「振込金額の合計が定款に定めた出資額と一致しているか」、「振込人の名義が発起人の氏名と一致しているか」を確認した後、通帳の表紙、見開き(口座情報)、振込履歴のページの写しを取り、代表者が作成した「払込証明書」と綴じて合印をします。
これが後の登記申請において、実際にお金が払い込まれたことを証明する重要書類となります。
法人登記を法務局に申請する
定款、払込証明書、役員の就任承諾書、印鑑届出書などの必要書類がすべて揃ったら、法務局へ「設立登記」を申請します。
この「申請日」が、法律上の「会社設立日」となります。
申請方法は、法務局の窓口へ持参するほか、郵送やオンライン申請も可能です。
この際、国に納める税金として「登録免許税」がかかります。
株式会社の場合、金額は「資本金額の0.7%」ですが、その額が15万円に満たない場合は一律で15万円となります。
法務局での審査には通常1週間から10日ほどかかりますが、書類に不備(補正事項)がなければ、申請日に遡って登記の効力が発生します。
希望の設立日がある場合は、その日が法務局の休業日(土日祝)でないか確認し、余裕を持って準備を進める必要があります。
定款の変更について
定款変更が必要なケースとは?
定款に記載されている事項を一つでも変更する場合、その内容が「絶対的・相対的・任意的」のいずれであっても定款変更の手続きが必要です。
一般的に変更頻度が高いケースとして、商号(社名)や事業目的の変更が挙げられます。
ブランディングの刷新に伴う社名変更や、新規事業への参入によって既存の事業目的(何をする会社か)に変更が生じる場合です。
特に、許認可が必要な事業を始める際、定款の目的にその旨の記載がないと許可が下りないことがあるため注意が必要です。
また、本店所在地を移転させる場合も定款の変更が必要になります。
オフィスを移転する際、定款に「本店は東京都中央区に置く」と最小行政区画(市区町村)までで記載していれば、同じ区内での移転なら定款変更は不要です。
しかし、区をまたぐ移転や、番地まで詳細に記載している場合には変更手続きが必須となります。
さらに、発行可能株式総数を変更させる場合も定款の変更が必要です。
新たな出資を受ける際(増資)、発行しようとする株数が定款で定めた上限を超えてしまう場合には、あらかじめ上限枠を広げる変更手続きを行います。
そして、機関設計や役員任期を変更する場合も定款変更が必要となります。
たとえば、「取締役会を廃止する」、「監査役を置く」といった組織構成の変更や、役員の任期を最長10年まで伸ばすといった見直しです。
いずれのケースも、会社としての「基本ルール」を書き換えることになるため、法的に正しい手順を踏まなければその効力は認められません。
定款変更の方法と手続きの流れ
定款を変更する手続きは、以下のような流れで行うことになります。

以下、それぞれの流れについて、詳しく解説していきます。
株主総会の特別決議
定款変更は会社の根幹に関わる重要事項であるため、通常の決議よりも要件が厳しい「特別決議」が必要です。
まず、特別決議の定足数として、議決権を行使できる株主の過半数が株主総会に出席することが必要となります。
そのうえで、出席した株主の議決権の「3分の2以上」の賛成を得ることで決議となります。
この決議を経てはじめて、定款変更の効力が発生します。
オーナー社長が100%の株式を持つ会社であればスムーズですが、複数の株主がいる場合は事前の調整が不可欠となります。
議事録を作成して定款を変更する
決議が成立したら、速やかに「株主総会議事録」を作成します。
議事録には、開催日時、場所、出席株主数、議事の経過、および決議の結果を正確に記載しなければなりません。
注意点として、会社設立時に作成した「原始定款(公証人の認証印があるもの)」そのものを直接書き換えてはいけません。
原始定款はそのまま保管し、「最新の定款(現行定款)」として、変更後の内容を反映させた別ファイルや書面を作成・管理するようにしてください。
法務局で変更登記をする
定款の変更内容が「登記事項(登記簿に載っている内容)」に関わる場合、決議から2週間以内に管轄の法務局で変更登記の申請を行う義務があります。
この期間を過ぎてしまうと、代表者個人に対して「登記懈怠」の責任として、100万円以下の過料が科される可能性があるため、迅速な対応が求められます(会社法第976条1号)。
変更定款と議事録を保管
手続き完了後は、最新の定款と、その変更の根拠となった株主総会議事録をセットで保管します。
会社法では、株主総会議事録を本店に10年間備え置くことが義務付けられています。
また、本店所在地や事業目的を変更した場合は、税務署や都道府県税事務所などへ「異動届出書」を提出することも忘れてはいけません。
これらの書類は、将来の法務デューデリジェンスや融資審査において、会社が正しく運営されていることを証明する重要な証拠となります。
定款変更の登記が必要なケースとは?
定款を変更した際、すべての場合において法務局での手続きが必要になるわけではありません。
「定款の変更」と「登記の変更」は別物であり、定款で定めた内容が、同時に登記事項(法人登記簿に記載されている事項)でもある場合にのみ、変更登記の申請義務が発生します。
定款変更で登記の変更が必要となるのは、履歴全部事項証書(登記簿謄本)に記載されている事項に変更があった場合です。
登記の変更が必要となるものとして、以下のケースが挙げられます。
- 商号(社名)や事業目的の変更
- 本店所在地の移転
- 資本金の額や発行可能株式総数の変更
- 役員に関する事項や機関設計の変更
- 公告方法の変更 など
定款変更の決議を行う際は、それが登記事項に該当するかどうかをあらかじめ専門家に確認しておくことが肝要です。
定款にかかる費用
定款の作成にかかる費用
株式会社などの設立に伴い、定款の作成・認証に必要となる費用は、以下のとおりです。
- 認証手数料:1万5000円〜5万円。資本金額により変動します。
- 収入印紙代:紙の定款の場合、4万円の収入印紙代が発生します。
- 謄本・交付手数料:紙の定款の場合は「250円×(定款のページ数+認証書)」、電子定款の場合は「700円+20円×(定款のページ数+1枚)」が必要になります。
- 保存手数料:電子定款の場合、1回あたり300円の電磁的記録の保存費用が必要です。
定款変更にかかる費用
定款の内容を変更すること自体には、国に納める手数料は発生しません。
しかし、既述の通り、定款の変更内容が登記簿に反映される「登記事項」である場合、法務局へ登録免許税を納付する必要があります。
主な変更項目と登録免許税の目安は以下の通りです。
- 商号(社名)や事業目的の変更:1件につき3万円
- 本店所在地の移転:同一管轄内での移転の場合は3万円、管轄外への移転の場合は6万円(旧管轄と新管轄の双方に3万円ずつ)
- 役員の変更(任期満了に伴う改選など):1件につき1万円(資本金1億円超は3万円)
- 資本金の増資:増加した資本金額の0.7%(または最低3万円)
これらの費用は、自分で行う場合には印紙代等の実費のみで済みますが、司法書士や弁護士に登記申請の代行を依頼する場合は、別途数万円程度の報酬(代行手数料)が発生します。
定款作成や変更のポイント
企業法務に強い弁護士に相談する
定款の作成や変更を弁護士に相談するメリットとして、書類作成代行に留まらない「紛争予防(予防法務)」が挙げられます。
特に、複数人で起業する場合や外部から出資を受ける場合、定款における株式の譲渡制限や議決権の規定は、将来の経営権を守るために重要となります。
弁護士であれば、万が一株主間で対立が起きた際のデッドロック解消条項など、一歩踏み込んだリスクヘッジが可能です。
また、設立時から弁護士と接点を持つことで、事業開始後の売掛金回収トラブルや契約書のリーガルチェック、さらには将来的な資金調達やM&Aといった局面でも、自社の内情を理解した顧問弁護士として迅速なサポートが受けられるようになります。
単に安く済ませることよりも、長期的な経営の安定を買うという視点で、信頼できる弁護士をパートナーに選ぶことが成功への近道です。
定款についてのQ&A
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定款は法務局で取得できますか?
登記事項証明書(登記簿)とは異なり、定款はあくまで会社の内部書類だからです。
ただし、登記申請時に添付された書類として、過去10年間に提出された定款であれば「閲覧」が可能です。
閲覧には手数料がかかり、原則として複写や交付は認められていませんが、デジカメ等での撮影が許可される場合もあります。
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定款は英語でなんといいますか?
米国などで広く使われる用語で、略して「AOI」と呼ばれることもあります。
なお、英国系の法体系では「Memorandum of Association(基本定款)」と「Articles of Association(附属定款)」に分かれることもあります。
海外企業との取引や、英文定款を作成する際に役立つ知識です。
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定款の原本証明とは何ですか?
銀行口座の開設や許認可申請では定款の提出を求められますが、会社に1部しかない原本を預けるわけにはいきません。
そこで、定款のコピーの末尾に「原本と相違ないことを証明します」といった一文と、代表者印の押印を行うことで、その写しを原本と同等の書類として扱えるようにします。
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定款はどこで取るの?
公証役場では通常20年間原本が保管されており、1枚250円程度の手数料で謄本を発行してもらえます。
一方、その後の変更内容を反映させた「現行定款」は、会社自身が作成・保管しているものです。
もし現行定款を紛失した場合は、公証役場で原始定款を取り寄せ、過去の株主総会議事録を遡って現在の内容を自社で復元・再作成する必要があります。
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定款は誰が作るの?
設立後に内容を変更する場合は、株主総会の決議に基づき、代表取締役が最新の状態に整理・管理するのが一般的です。
ただし、法的な有効性や将来のリスクを考慮し、実際の条文作成は弁護士などの専門家が担うケースがほとんどです。
そのため、きめ細かい組織設計を行いたい場合は、専門的な法務知識を持つ弁護士に作成を依頼してください。
まとめ
「定款(ていかん)」は、法人(株式会社、一般社団法人、財団法人など)の目的、組織、活動に関する根本原則を指します。
また、そのような原則を記載した書面や電磁的記録(電子定款)そのものも「定款」と呼ばれます。
株式会社を設立する場合には、必ず定款を作成しなければなりません。
定款を作成し、会社を設立するためには、以下のような流れを経る必要があります。
定款の作成 → 定款の認証 → 資本金の払い込み → 法人登記を法務局に申請する → 会社設立
また、定款に記載する内容には、絶対的記載事項や相対的記載事項、任意的記載事項の3種類がありますが、絶対的記載事項を欠く定款は無効となるため、注意が必要です。
定款を作成・変更する際には、法律の専門家である弁護士に相談すれば、スムーズに会社の設立や定款の変更が実現できます。
デイライトでは、企業法務に注力する弁護士が企業法務部に所属しておりチームで、多くの会社の顧問弁護士、相談対応、アドバイスを行っております。
定款に関するご相談や定款の作成・変更、トラブルのご相談など、お気軽にお問い合わせください。

