フキハラとは?職場での具体例や対処法を解説

監修者:弁護士 西村裕一
弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

フキハラとは

フキハラとは、「不機嫌ハラスメント」の略で、不機嫌な態度を示すことで周囲に無言の圧力をかけ、精神的な負担や苦痛を与える行為のことをいいます。

フキハラは、明確な暴言や暴力を伴うものではないため、ハラスメントと認識されづらく、「単なる気分の問題」として見過ごされてしまうことも少なくありません。

しかし、放置すると職場全体の雰囲気が悪くなり、業務の停滞や従業員のメンタル不調など様々な問題につながることもあります。

そこで、ここでは職場でのフキハラについて、具体例や会社が行うべき予防措置、発生時の対処法などについて、弁護士がわかりやすく解説します。

フキハラとは?

フキハラとは

フキハラとは、「不機嫌ハラスメント」の略で、不機嫌な態度を示すことで周囲に無言の圧力をかけ、精神的な負担や苦痛を与える行為のことをいいます。

 

フキハラの特徴

フキハラは、モラハラ(モラル・ハラスメント。精神的な嫌がらせ。)の一種と考えられますが、一見してハラスメント(嫌がらせ行為)と認識されにくいという特徴があります。

なぜならば、あくまでも「不機嫌な態度」を通じて行われる嫌がらせであり、暴言や暴力などの明らかな攻撃行為を伴わないものだからです。

また、「不機嫌」という感情は日常的なもので、不機嫌になることは誰にでもあり得ることです。

そのため、ハラスメントと認識されず、単なる気分の問題として見過ごされてしまうケースも少なくありません。

しかし、次のとおり、フキハラが及ぼす影響は決して小さいものではありません。

 

フキハラが職場に及ぼす影響

不機嫌な態度を示す人がいると、周囲の人が委縮したり、気を遣ったりするようになるため、職場全体の雰囲気が悪くなります。

常にピリピリした空気感の中で緊張を強いられるため、安心して働ける環境が害されてしまいます。

また、不機嫌な態度を示している人に対しては、「今は話しかけない方がいいかな」「この話をしたら怒られるかな」といった遠慮や恐れが生じます。

そのため、自由な発言や気軽な相談、正直なミスの報告などがされにくくなってしまいます。

そうすると、ミスの多発、確認不足、報告漏れなどによる業務の停滞や業績悪化につながります。

また、従業員に過剰な精神的負担がかかり、心身の健康に影響が生じる要因にもなり得ます。

メンタル不調による休職者や離職者が出るなど、人材流出のリスクにもつながります。

フキハラには、上記のような問題点があるため、見過ごすことなく、適切な対処や予防策を講じることが重要です。

 

 

職場でのフキハラの具体例

職場のフキハラ男性の特徴とチェックリスト

職場のフキハラ男性には、次のような特徴がみられることが多いです。

  • ため息や舌打ちなどによって圧力をかけようとする
  • 怒ったような表情や話し方をして不機嫌をアピールする
  • 物音を立てることで相手を威圧しようとする

男性によるフキハラの典型例としては、次のようなものが挙げられます。

【フキハラ男性のチェックリスト】

  • 無言でにらみつける
  • 大げさにため息をつく
  • 舌打ちをする
  • 書類を机に叩きつけるように置く
  • ドアを乱暴に閉める
  • パソコンのキーボードを強打する
  • 会議中に不満げな表情で沈黙する
  • 会議中に険しい表情で腕組みをする

 

職場のフキハラ女性の特徴とチェックリスト

職場のフキハラ女性には、次のような特徴がみられることが多いです。

  • いつもイライラしている
  • 情緒が不安定
  • 待遇や仕事内容等について不満を抱え込んでいる
  • 接する人によって態度を変える

女性によるフキハラの典型例としては、次のようなものが挙げられます。

【フキハラ女性のチェックリスト】

  • 話しかけても聞こえないふりをする
  • わざと目を合わせない
  • 「はぁ」「そう」「別に」など極端に短い返答しかしない
  • わざと挨拶を返さない
  • 特定の人にだけ明らかに冷たい態度をとる
  • 機嫌が良いときと悪いときの差が激しい
  • 理由もなく機嫌が急変する

 

 

なぜフキハラが起こる?フキハラの原因とは?

フキハラの原因としては、次のようなものが考えられます。

なぜフキハラが起こる? フキハラの原因とは?

 

感情をコントロールできない

まず、不安・怒り・焦り・イライラといったネガティブな感情をコントロールできず、態度に表出してしまっていることが考えられます。

もともと感情のコントロールが苦手な人もいますが、ストレスや過労のためコントロールする余裕がないというケースもあります。

このような場合は、加害者本人もフキハラをしていることに無自覚であるケースも多いです。

 

気持ちを察して欲しい

不機嫌な態度の背景に、自分の気持ちを察して欲しいという心理があるケースもあります。

「忙しくて大変です」「自分の頑張りを評価してください」ということを言葉で上手く伝えることができないため、不機嫌という態度をとることで表現しようとしているのです。

また、不機嫌な態度をとることで、「待遇や仕事内容に不満があります」とアピールしようとしている場合もあるでしょう。

 

思い通りに事を進めたい

不機嫌な態度を示すことで、周囲に無言の圧力をかけ、「自分の思い通りに事を進めたい」「自分の意見を通したい」と思っているケースもあります。

場を支配したい、相手をコントロールしたいという心理が根底にあります。

 

不機嫌が見過ごされている職場環境

不機嫌な態度で周囲に悪影響を及ぼしている人がいても、誰も注意せず、問題視もされない職場では、フキハラが発生しやすくなります。

このような職場では、不機嫌な態度を示すことが「許されること」として通用し、ハラスメントにつながるとの認識が欠落してしまいます。

その結果、不機嫌な態度が自制されず、フキハラが発生・拡大していきます。

 

 

フキハラを理由に解雇できる?

結論から言うと、フキハラだけを理由とした解雇は難しいことがほとんどです。

 

解雇の条件とは?

解雇とは、従業員の意思に関係なく、会社の意思で一方的に雇用契約を終わらせることをいいます。

解雇は、従業員の生活の糧となる仕事を一方的に辞めさせるという重大な処分です。

そのため、そのような重大な処分に見合うだけの重大な客観的事情がある場合にのみ認められます(労働契約法16条)。

参考:労働契約法|e-Gov法令検索

 

フキハラは解雇の理由になる?

結論から言うと、「フキハラをした」というだけでは解雇できないケースがほとんどです。

フキハラは、直接的な暴力や暴言を伴わず、あくまでも「態度」を示すことによって行われるハラスメントです。

フキハラに該当する「ため息をつく」「険しい表情をする」などの各行為は、それ自体は職場環境の悪化などに直結するような悪質な行為ではありません。

そのため、多くのケースでは、フキハラだけでは内容・程度ともに軽微な問題に過ぎないと評価される傾向にあります。

もっとも、回数(頻度)、加害者・被害者の関係性、行われた状況などによっては、職場環境や他の従業員の心身に重大な悪影響を及ぼす問題行為と評価すべき場合もあります。

しかし、そのような場合でも、フキハラだけを理由にいきなり解雇をするのは「重すぎる処分」として認められない(無効な解雇となる)ことがほとんどだと考えられます。

 

どのような対処をするべき?

不機嫌な態度で職場環境を悪化させている従業員に対しては、まずは事実上の注意や指導を行うべきです。

それでも改善が見られない場合は、懲戒処分や配置転換等の措置をとることが考えられます。

 

懲戒処分とは?

懲戒処分とは、会社の秩序や利益を維持するため、会社が規律を乱している従業員に対して行う懲罰的な措置のことをいいます。

懲戒処分を行うためには、あらかじめ社内規程である「就業規則(しゅうぎょうきそく)」に、どのような行為(懲戒事由)がどのような処分に該当するのか定めておく必要があります。

一般的には、次のように定めていることが多いです。

【懲戒事由】

比較的軽めの処分 比較的重めの処分
  • 無断欠勤が数日に及ぶ
  • 遅刻・早退を繰り返す
  • 不注意で会社の備品を壊した
  • 勤務態度が悪く社内の秩序を乱した
  • その他、業務命令違反など
  • 経歴の詐称
  • わざと又は重大な不注意で会社に大きな損害を与えた
  • 横領などの犯罪行為
  • 悪質なハラスメント行為

【懲戒の種類】

種類 内容 程度
戒告・けん責 口頭や文書での厳重注意 軽い
減給 従業員の給料を一定の期間だけ減らす やや軽い
出勤停止 一定期間の就労を禁止し、その間は無給 中程度
降格 役職や等級を引き下げる 中程度
諭旨解雇 退職を勧告。応じれば退職金支給が一般的 重い
懲戒解雇 一方的に退職させる最も重い処分。退職金不支給が原則 最も重い

フキハラの場合は、勤務態度が悪いことや、再三の注意・指導に従わないことなどを理由に、戒告やけん責といった軽い処分から検討されることになるでしょう。

それでも改善しない状況が続く場合は、減給・出勤停止・降格などより重い処分が考えられます。

もっとも、対象となる行為と処分のバランスを欠く(相当性を欠く)場合(「重すぎる処分」の場合)は、無効な処分とされてしまうリスクがあります。

そのため、より重い処分を検討する際には、労働問題に詳しい弁護士に相談し、慎重に進めることをお勧めします。

なお、解雇処分(諭旨解雇や懲戒解雇)はよほどの事情がある場合でなければできません。

そのため、フキハラだけでは(単に勤務態度が悪いことや、不機嫌な態度を止めるようにとの注意・指導に背いた事実があるだけでは)、解雇処分は難しい(相当性を欠く)と考えられます。

 

配置転換

フキハラの加害者と被害者を引き離す必要がある場合は、配置転換を検討する必要があります。

配置転換とは、会社が従業員を別の職務・職種や勤務地などに異動させることです。

配置転換は、懲戒処分とは異なり、経営上の必要性から会社の裁量で(人事権の行使として)行うことができます。

ただし、労働契約の範囲内で行われる必要があります。

また、業務上の必要性がない場合や、不当な動機・目的の場合、従業員に大きな不利益を負わせるものである場合は、無効な配置転換とされてしまうリスクがあります。

もっとも、ハラスメント相談があったことをきっかけに、職場環境の維持・回復や人間関係の調整を目的として行う配置転換であれば、一般的には問題なく認められます。

そのため、フキハラへの対処として行われる配置転換であれば、通常は問題なく認められるでしょう。

ただし、配置転換によって対象となる従業員の給料が大幅に下がる場合や、キャリアに重大な影響がある場合は、有効性が争われる可能性もあります。

このようなトラブルを回避するためには、労働問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

 

 

職場のフキハラに対する被害者の対処法

職場でフキハラ被害に遭った場合には、次のような対処をとるようにしましょう。

職場のフキハラに対する被害者の対処法

 

①記録を残す

フキハラ被害に直面したら、その都度、日時・場所・フキハラの態様・業務への支障などを具体的に書き留めておくようにしましょう。

その際には、「報告書を渡したら、無言でため息をつかれた」というように「事実」を書き留めておくことを意識するとよいでしょう。

このような記録を残しておくことで、相談相手や窓口担当者に事情を理解してもらいやすくなります。

 

②上司に相談する

部下や同僚がフキハラをしている場合は、まずは直属の上司に、上司がフキハラをしている場合は、その上司よりも地位が上の人に相談することが考えられます。

相談先の上司が適切な対応をしてくれる人であれば、会社の問題として速やかに然るべき措置をとってくれるはずです。

一方、相談先の上司が「気のせいじゃないの?」「○○さんはそういう人だから仕方ない」と返答するなど、ハラスメントとして深刻に受け止めてくれない場合もあります。

そのような場合は、ハラスメント相談窓口を利用するようにしましょう。

 

③社内のハラスメント相談窓口に相談する

上司に相談しにくい場合や、上司が取り合ってくれない場合は、会社が設置しているハラスメント相談窓口への相談が考えられます。

フキハラに関する相談窓口の設置は事業主に義務づけられてはいませんが、パワハラに関する相談窓口(設置義務あり)と一元化して、あらゆるハラスメントの相談窓口を設けている会社も増えています。

相談により調査が行われ、フキハラの事実が認められた場合は、その程度に応じ、加害者への注意・指導や配置転換などの対応が検討されるのが通常です。

一方、フキハラの実態が伝わらず、「それはハラスメントではない」などと取り合ってもらえない可能性もあります。

そのような場合は、社外の相談機関を利用することが考えられます。

 

④外部の相談機関に相談する

社内の相談窓口に取り合ってもらえなかった場合や、社内の人には相談しにくい場合は、社外の窓口に相談することが考えられます。

社外の窓口としては、各都道府県の労働局内などに設置されている「総合労働相談コーナー」や、労働関係に詳しい労働者(従業員)側の弁護士などがあります。

会社や加害者に対する法的な責任追及を視野に入れる場合は、弁護士に相談し、とり得る手段や見通しなどについて具体的な助言を受けることをお勧めします。

 

 

会社のフキハラへの対応

会社のフキハラへの対応について、事前の対応(予防策)と、フキハラ発生後の対応に分けて解説していきます。

 

フキハラの予防について

現在、ハラスメントに関して、セクハラ、マタハラ、パワハラについては、事業主に相談体制の構築や防止措置の整備が義務づけられています。

フキハラについては、このような義務化はされていませんが、これに準じた対策を講じておくことが望ましいでしょう。

具体的な対策内容としては、次のようなものが考えられます。

 

ハラスメント防止規程を策定する

ハラスメントに対する会社の方針(厳正に対処する方針など)を明確にし、就業規則の整備やハラスメント防止規程の策定を行います。

 

会社の方針を周知・啓発する

ハラスメントに対する会社の方針について、社内報の配布・ポスターの掲示・研修や講習等の実施などの方法で周知・啓発します。

どのような行為がハラスメントに当たり得るかを理解してもらうことも重要です。

フキハラに関しては、そもそもハラスメントだと認識されていないことも多いです。

そのため、「不機嫌な態度をとるだけでもハラスメントになることがある」との意識を持ってもらうだけでも、フキハラの発生や見過ごしの防止策として効果的だと思われます。

 

働きやすい環境を整える

業務過多などによりストレスが生じやすい環境下では、感情をコントロールする余裕がなくなり、フキハラを引き起こしやすくなります。

そのため、働きやすい環境を整えることもフキハラの予防策となるでしょう。

具体的には、長時間労働の是正、定期的な面談等の実施、ストレスチェックやハラスメントに関するアンケートの実施による現状把握や改善を図ることなどが考えられます。

 

ハラスメントの相談窓口の設置

相談窓口をあらかじめ定め、従業員に周知します。

相談窓口は、会社の内部(人事部、総務部など)に置く場合と、外部(法律事務所、社会保険労務士事務所など)に置く場合、あるいはその両者に置く場合があります。

パワハラ相談窓口などと一本化し、あらゆるハラスメントに対応できる体制を整えておくとよいでしょう。

フキハラの場合は、明確な暴力や暴言を伴うわけではないため、被害者が「相談できない」と思い込んでいるケースも少なくありません。

そのため、パワハラやセクハラに限らず、あらゆるハラスメントについて相談できることを周知しておくことも重要です。

 

フキハラ発生時の対応

フキハラが発生した際には、次のような対応が必要となります。

 

事実関係の確認

被害者から相談窓口に相談があった場合、まずは被害者、加害者、第三者(被害者と加害者の言い分に不一致がある場合)から話を聴き、事実関係を確認します。

 

被害者に対する配慮措置

被害者に対しては、速やかに加害者との引き離し(配置転換など)や関係改善の援助、メンタル不調への相談対応などの配慮措置を講じる必要があります。

これを怠ると、被害者が会社に不信感を抱いて退職したり、会社の安全配慮義務(安全に働ける環境を整備する義務)違反を理由に法的責任を追及されるリスクが高まるので注意が必要です。

 

加害者への措置

フキハラの事実が確認された場合は、加害者への注意指導、配置転換、懲戒処分などの措置を講じます。

 

再発防止に向けた措置

今後同じようなハラスメントが起こらないよう、再発防止策を講じることも重要です。

ハラスメントに対しては厳正に対処する方針であることを周知するとともに、研修や講習等を改めて実施します。

 

 

フキハラについてのQ&A

フキハラを理由に職場を訴えることができる?

訴えること自体は可能ですが、勝訴のハードルは高いと考えられます。
  • 会社がハラスメント防止措置を怠っていた
  • 会社がハラスメント発生後に適切な措置をとらなかった

このような事情がある場合は、会社の安全配慮義務違反を理由に、会社を訴えることができます。

しかし、裁判で争う場合は、フキハラの事実などを証拠によって裏付ける(立証)必要があります。

この点、フキハラは「不機嫌な態度」という曖昧な方法で行われるため、立証が難しく、裁判では有利に進めることが難しい状況になる可能性があります。

そのため、会社に対する法的責任の追及を検討する場合は、まずは労働者(従業員)側の弁護士に相談し、適切な手段や見通しなどについて助言をもらうことをお勧めします。

 

フキハラを理由に懲戒処分は可能?

可能ですが、慎重に進める必要があります。

フキハラをする従業員に対しては、まずは事実上の注意・指導をして態度を改めてもらうように働きかけるべきです。

しかし、それでも改善が見られない場合は、戒告・けん責などの軽い処分から検討するべきでしょう。

それでも態度が改められない場合は、減給・出勤停止・降格などのより重い処分を検討することになります。

ただし、フキハラは行為それ自体の悪質性は高くはないため、重い処分をすると相当性を欠く(重すぎる処分)として無効とされるリスクがあります。

相当性の判断は難しいため、労働問題に詳しい弁護士に相談し、慎重に進めることをお勧めします。

 

 

まとめ

以上、フキハラについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。

フキハラは一見してハラスメントと認識しづらく、見過ごされてしまうことも少なくありません。

しかし、放置すると職場環境の悪化、業務の停滞、従業員のメンタル不調など、様々な問題につながる可能性があります。

そのため、パワハラなどの対策が義務付けられているハラスメントと同様に、予防策や発生時の対応フローを明確化しておくことが重要です。

当事務所には、労働問題に精通した弁護士で構成された労働事件チームがあり、ハラスメント問題でお困りの企業の皆様を強力にサポートしています。

LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談も行っており全国対応が可能です。

ハラスメント等の労働問題についてお困りの場合は、当事務所の労働事件チームまでお気軽にご相談ください。

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