弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

「瑕疵(かし)」とは、ある物や権利、あるいは意思表示などが、「本来備えるべき性質・状態・品質を欠いていること」を意味します。
「瑕」や「疵」という漢字は、いずれもキズや欠点を意味するため、一般的には「キズ、欠陥、不具合、不備」などを指します。
ただし、契約や取引、法律の世界において瑕疵という言葉を用いる場合、単なる物理的なものだけを意味する言葉ではありません。
瑕疵の種類には、物理的瑕疵や心理的瑕疵、環境的瑕疵などさまざまな種類があります。
この記事では、瑕疵の意味や使い方、瑕疵が問題となる具体例、瑕疵の種類、そして瑕疵担保責任と契約不適合責任の関係などについて、弁護士がわかりやすく解説していきます。
瑕疵とは?

瑕疵の読み方
「瑕疵」の読み方は、「かし」です。
「瑕疵」という熟語を構成する「瑕」と「疵」は、いずれも常用漢字表には含まれていない表外漢字であるため、一般的には馴染みがないかもしれません。
しかし、契約書や法的な文書、不動産業界、建設業界においては、日常的に頻出する基礎用語です。
キズや欠点を指す「瑕」や「疵」という2つの漢字が組み合わさることで、ある物や権利、あるいは意思表示などが、「本来備えるべき性質・状態・品質を欠いていること」を意味します。
なお、2020年の民法改正により、条文上からは「瑕疵」という言葉が姿を消し、より現代的な「不適合」という言葉に置き換えられました。
ただし、実務の現場や過去の判例、住宅瑕疵担保履行法などの特別法においては、現在も「瑕疵」という表現が一般的に共通理解されたワードとして使用されています。
瑕疵の意味
「瑕疵」とは、一般的には「キズ、欠陥、不具合、不備」などを指します。
まず、「瑕(か)」とは、もともと「玉(ぎょく・宝石)」に付いたキズを指す漢字です。
このような意味から転じて、欠点や不完全な箇所を意味するようになりました。
次に、「疵(し)」は、身体のキズや、物の表面に生じた小さな損傷を指す漢字です。
また、精神的な欠陥や過(あやま)ち、他人を謗(そし)るという意味合いも含んでいます。
このように、「瑕疵」という言葉は、キズや欠点を意味する「瑕」と「疵」という2つの漢字が組み合わさった熟語です。
そして、契約や取引、法律の世界において瑕疵という言葉を用いる場合、単なる物理的な損傷だけを意味する言葉ではありません。
瑕疵とは、ある物や権利、あるいは意思表示などが、「本来備えるべき性質・状態・品質を欠いていること」を意味します。
瑕疵の使い方
「瑕疵」という言葉は、主にビジネス文書、契約書、訴状、鑑定評価書などの公的な場面で使用されます。具体的な使用例を挙げます。
不動産売買では、建物の構造や土地の履歴に関する不備を指して「瑕疵」という言葉が使われることが一般的です。
【使用例】
- 「引渡しを受けた住宅の基礎部分に、重大な物理的瑕疵が見つかった。」
- 「この土地は都市計画法による制限を受けているため、法律的瑕疵がある。」
ITシステム開発・建設といった請負契約においては、完成した成果物が仕様書通りに作動しない場合に「瑕疵」という言葉が用いられることがあります。
【使用例】
- 「納品されたシステムに致命的な瑕疵が存在するため、検収を完了できない。」
- 「工事完了後に外壁の剥離が発生したが、これは施工上の瑕疵に起因するものである。」
法的責任の追及や、意思決定の正当性を問う場面で「瑕疵」という言葉が使用されることがあります。
【使用例】
- 「本契約の締結に至る過程において、相手方の欺罔(ぎもう)行為による意思表示の瑕疵が認められる。」
- 「取締役会の招集手続きに手続的瑕疵があるため、当該決議は無効である。」
※欺罔(ぎもう)行為=人を騙す行為
上記の他にも、法律上、自分のものとして疑いを持たず、落ち度もなく占有している状態を「瑕疵なき占有」と表現することがあります。
また、発生していた不備や欠陥を、後から補って適法な状態にすることを「瑕疵を修補する」、「瑕疵を治癒する」などと表現することもあります。
瑕疵の言い換え
「瑕疵」という言葉は、日常的に使用される言葉ではないため、状況に応じて適切な言葉に言い換える必要があります。
まず、民法改正によって瑕疵という言葉は、「契約内容との不適合」と言い換えられました。
2020年施行の改正民法では、それまで「瑕疵」という抽象的な表現を用いていた箇所が、「種類、品質又は数量に関して契約の内容と適合しないもの」という表現に改められました。
これにより、単に「物に欠陥があるか」という主観的な議論から、「契約書で約束した品質や状態を満たしているか」という、より合意内容を重視した客観的な判断基準へとシフトしています。
実務上、契約書の作成や法的通知を行う際には、この「不適合」という言葉を用いるのが現在のスタンダードといえます。
また、より一般的、あるいは日常的な文脈で言い換えるならば、「欠陥」や「不具合」という言葉が適切です。
物理的な損壊や機能の欠如を指す場合は「欠陥」、機械やITシステムなどが正常に稼働しない状態を指す場合は「不具合」と言い換えることで、専門知識のない当事者間でも認識のミスマッチを減らすことができます。
一方で、法的な手続きや意思決定のプロセスに誤りがある場合には、「不備」や「過誤」といった言葉が適しています。
このように、「瑕疵」を言い換える際には、それが「物理的なもの」なのか、「契約上の義務」なのか、あるいは「意思決定のプロセス」なのかといった文脈を見極め、正確な語彙を選択することが求められます。
瑕疵が問題となる具体例
意思表示に関する瑕疵
「意思表示」とは、契約を締結するなどの法律効果を発生させようとする意思を外部に表明することを指します。
そして、「意思表示の瑕疵(瑕疵ある意思表示)」とは、内心とそれを外部に表明する表示行為は存在するものの、その内心を形成する段階で他人からの干渉により自由な判断ができなかった場合を指します。
この「瑕疵ある意思表示」という概念は、「意思の欠缺(けんけつ)=意思の不存在」との区別を表すための概念です。
意思の不存在とは、「内心の意思」と外部に表明する「表示行為」が一致しない意思表示のことで、心裡留保(民法第93条)や虚偽表示(同94条)、錯誤(同95条)のことを指します。
これに対して、「意思表示の瑕疵(瑕疵ある意思表示)」とは、「内心の意思」と「外部への表示」は一致しているものの、その意思を形成する過程で他人の不当な干渉を受け、自由な判断が妨げられた場合を指します。
「意思表示の瑕疵」の具体例は、民法第96条1項に定められる「詐欺」と「強迫」です。
まず、詐欺とは、意思表示の相手方や第三者に騙され、事実と異なる認識(動機の錯誤)に陥って意思表示をしてしまうケースを指します。
例えば、不動産業者から「将来必ず値上がりする」や「隣に嫌悪施設が建つ予定はない」と虚偽の事実を告げられ、それを信じた顧客が売買契約を結んだ場合などが該当します。
次に、強迫とは、相手から恐怖心を抱かされ、無理やり契約をさせられるケースを指します。
強迫は本人の自由な意思が抑圧されているため、詐欺よりも手厚い保護が必要とされます。
これらの瑕疵ある意思表示は、原則として「取り消し」が可能です。
ただし、詐欺の場合は「善意でかつ過失がない第三者」に対して取り消しを主張できない(対抗できない)といった制限がある一方で、強迫の場合は第三者に対しても取り消しを主張できるなど、保護の強弱に差が設けられています。
代理行為に関する瑕疵
ビジネスの現場では、本人の代わりに代理人が契約を行う「代理行為」が頻繁に行われます。
この際、代理人が相手方から騙されたり、重要な事項を勘違いしたりして契約を結んだ場合、その契約の有効性を誰の視点で判断すべきかが「代理行為の瑕疵」の問題です。
民法第101条では、意思表示の効力が「意思の不存在」、「錯誤」、「詐欺」、「強迫」、あるいは「特定の事情を知っていたこと(悪意)」もしくは「知らなかったことにつき不注意があったこと(過失)」によって影響を受ける場合、その事実の有無は「代理人を基準」に判断すると定めています。
たとえば、本人が詐欺の事実を知らなくても、契約実務に当たった代理人が相手方から詐欺を受けて印鑑を押したのであれば、本人はその契約を詐欺として取り消すことができます。
これに対して、代理人が何も知らずに(善意無過失で)契約した場合でも、指示を出した本人が特定の事情を知っていたのであれば、本人は「代理人が知らなかった」ことを理由に責任を逃れることはできません(民法101条3項)。
また、指示を出した本人が過失によって知らなかった事情についても、「代理人が知らなかった」と主張することは許されません。
このように、代理行為においては「実際に交渉を行っていた担当者は誰か」という視点と、その担当者の認識と最終的に利益を得る本人の認識といった視点から、瑕疵の有無が判断されることになります。
占有に関する瑕疵
「占有」とは、ある物を事実上支配している状態を指しますが、その支配の始まり方に法的な落ち度がある場合を「占有の瑕疵」と呼びます。
これは主に、他人の土地を長年利用し続けることで自分のものになる「時効取得」の可否を判断する際に問題となります。
具体的には、以下の要件を満たしていない占有については、「瑕疵のある占有」と言われることがあります。
- 所有の意思があること(他人のものと知りつつ借りているのではないこと)
- 平穏であること(暴行や強迫を用いることなく占有していること)
- 公然であること(隠匿して占有していないこと)
- 善意・無過失であること(自分のものだと信じ、そう信じるに足る正当な理由があること)
たとえば、隣地との境界線が曖昧で、自分の土地だと思い込んで塀を立てていた場合などは、瑕疵のない占有として10年で時効取得が成立する可能性があります。
しかし、明らかに他人の土地だと知りながら(悪意)、あるいは強引に居座っている場合(暴力・隠匿)は「瑕疵ある占有」となり、時効期間が20年に延びるか、あるいは時効取得そのものが認められなくなります。
なお、占有の瑕疵は承継されるため、前占有者に瑕疵があれば、それを引き継いだ者の占有も瑕疵ありとみなされる点には注意が必要です。
契約の目的物に関する瑕疵
「契約の目的物の瑕疵」は、不動産売買や請負契約において紛争になりやすい類型です。
これは、引き渡された物件や製品が、契約で予定されていた品質や性能を欠いている状態を指します。
2020年の民法改正以前は、この状態を直接「瑕疵」と呼び、売主が負う責任を「瑕疵担保責任」と呼んでいましたが、現在は「契約不適合責任」という呼び方に改正されました。
たとえば、建物の雨漏り、シロアリ被害、床の傾き、基礎のひび割れ、ITシステムのバグなどは「物理的瑕疵」と呼ばれます。
また、買った土地が都市計画法の制限により建物を建てられない状態であったり、第三者の抵当権が付着していたりする場合には、「法律的瑕疵」となります。
さらに、過去にその物件で自殺や殺人事件が発生しており、居住に際して強い心理的抵抗が生じる場合には、「心理的瑕疵」となります。
これらの不備が「契約内容に適合しない」と判断された場合、買主は売主に対して、修理を求める「追完請求」、代金の減額を求める「代金減額請求」、さらには「契約解除」や「損害賠償請求」を行うことができます。
現在の実務では、契約書に「どのような品質を保証するか」を明記することが、この瑕疵トラブルを避ける最大の防衛策となっています。
土地工作物の設置・保存に関する瑕疵
土地に定着して設置された建物、塀、看板、擁壁などを「土地の工作物」と呼びます。
これらが適切に設置・管理されておらず、本来備えているべき安全性を欠いている状態が「土地工作物の設置・保存の瑕疵」です。
これは民法第717条の「工作物責任」として規定されています。
工作物責任の具体例として、以下のようなケースが挙げられます。
- ビルの看板が老朽化で落下し、通行人に怪我をさせた
- 震度4程度の地震(通常想定される範囲)で隣地とのブロック塀が倒壊し、隣家の車を大破させた
- 道路上のマンホールの蓋が外れたまま放置されており、歩行者が転落した
これらの瑕疵の特徴は、「無過失責任」の側面を持つ点にあります。
まず一次的には「占有者(管理している人)」が責任を負いますが、占有者が損害防止のために必要な注意を払っていたことが証明された場合、二次的に「所有者」が責任を負うことになります。
この所有者の責任は、過失がなくても免れない「無過失責任」であるため、被害者保護の観点が非常に強いのが特徴です。
建物や設備の老朽化を放置することは、法的にも極めて高いリスクを負う行為であると認識すべきでしょう。
瑕疵の種類

物理的瑕疵
「物理的瑕疵」とは、取引の対象物そのものに存在する構造上・機能上の欠陥や物理的な不具合のことを指します。
製造物や不動産において発生頻度が高く、契約で予定されていた「品質」や「機能」を物理的に満たしていないケースは、物理的瑕疵に該当します。
たとえば、不動産取引において、屋根や外壁からの雨漏り、建物構造を支える柱や基礎のひび割れ、シロアリによる腐食、あるいは床の傾きなどが挙げられます。
また、土地であれば地中にコンクリート片などの廃棄物が埋まっていたり(地中埋設物)、土壌が有害物質で汚染されていたりする場合も物理的瑕疵に含まれます。
そして、物理的瑕疵の判断基準は、「通常備えているべき品質」があるかどうかです。
新築住宅で雨漏りがあれば明らかな瑕疵ですが、築50年の古家で経年劣化相応の傷みがある場合は、直ちに瑕疵とはみなされないこともありえます。
このように、物理的瑕疵の有無は、築年数や契約時の価格、そして何より「契約書でどのような状態であると合意したか」という点が非常に重要となってきます。
心理的瑕疵
「心理的瑕疵」とは、対象物自体に物理的な欠陥や法律的な制限はないものの、その物件にまつわる過去の出来事などが原因で、買主や借主が心理的な抵抗や嫌悪感が生じる状態を指します。
いわゆる「事故物件」は、心理的瑕疵の典型例です。
たとえば、建物内での自殺や殺人事件、火災による焼死、あるいは孤独死による遺体の発見遅れ(腐敗による損壊等)が発生したケースが挙げられます。
また、物件の至近距離に暴力団事務所が存在する場合も、日常生活において恐怖心や不安を抱かせるため、心理的瑕疵と判定されることがあります。
そして、心理的瑕疵の判断については、人の主観に左右される側面があるため判断が難しいと言われることがありましたが、現在は国土交通省のガイドラインなどにより、告知すべき期間や範囲に一定の目安が設けられています。
しかし、買主が「知っていたら契約しなかった」と言えるほどの重大な関心事である場合、売主がこれを隠して売却すると、契約不適合責任を問われ賠償金を請求されたり、契約解除となったりするリスクがあるため注意が必要です。
環境的瑕疵
「環境的瑕疵」とは、物件そのものに欠陥はないものの、その「周囲の環境」に、快適な利用を阻害する要因が存在する状態を指します。
建物は完璧であっても、外的な要因によって生活の質が著しく低下する場合には、環境的瑕疵として扱われる可能性があります。
たとえば、近隣に産業廃棄物処理場や下水処理施設、養豚場などがあり、日常的に異臭が漂ってくるケースや、線路・幹線道路・工場からの激しい騒音や振動が絶えないケースが該当します。
また、隣接地に高層ビルが建設されたことで、契約時に期待されていた日照や眺望が完全に遮断されてしまった場合も、環境的瑕疵に該当する可能性があります。
そして、環境的瑕疵の判断については、「受忍限度(我慢すべき範囲)」を超えているかどうかが重要となります。
都市部であればある程度の騒音は許容されるべきですが、住宅街において明らかに異常な騒音や悪臭が存在し、それが事前に説明されていなかった場合、契約の目的を達せられないものとして法的責任の追及対象となる可能性があります。
法律的瑕疵
「法律的瑕疵」とは、法令の規制によって、対象物の利用や収益、処分が制限されており、契約上予定していた使い方ができない状態を指します。
見た目には問題がないため、専門家による調査なしには発覚しにくいのが特徴です。
不動産実務で問題となるのは、建築基準法や都市計画法に違反しているケースです。
例えば、「家を建て替えるつもりで土地を買ったが、接道義務(道路に2メートル以上接していること)を満たしておらず、再建築不可だった」という事例や、「建ぺい率・容積率が超過しており、住宅ローンの融資が受けられない違法建築物だった」という事例が典型です。
他にも、消防法に基づく設備が未設置で営業許可が下りない、市街化調整区域のため原則として建築が認められないといった事態が挙げられます。
そして、法律的瑕疵がある場合、買主は購入の目的(居住や事業など)を達成できなくなるため、売主や仲介業者の説明義務違反が厳しく問われます。
特に、プロである不動産業者が関与している取引において、これらの法的制限を見落とすことは重大な過失とみなされる可能性があるため注意が必要です。
権利の瑕疵
「権利の瑕疵」とは、取引の対象となる「権利」そのものに不完全な点がある状態を指します。
物理的な物(有体物)の不備ではなく、所有権やその他の権利関係が契約内容と食い違っている場合を指す言葉です。
権利の瑕疵の具体例として、売主が完全な所有権を持っていないケースが挙げられます。
例えば、購入した物件に、聞いていなかった第三者の「抵当権」が設定されたままで、後に競売にかけられるリスクがある場合や、一部が他人の土地だった(一部他人物売買)場合が該当します。
また、土地を買ったものの、実際には強力な「借地権」を持つ第三者が占有しており、買主が自由に使用を開始できない状態も権利の瑕疵にあたります。
権利の瑕疵がある場合、売主はまずその欠陥を解消(抵当権の抹消や他人の権利の買い取りなど)して、買主に完全な権利を移転する義務を負います。
もしそれが不可能な場合、買主は代金の減額を請求したり、契約解除や損害賠償請求をしたりすることになります。
不動産の登記を確認することで、このようなトラブルを回避することはできますが、相続が未了であったり古い地上権が残っていたりと、権利の瑕疵がトラブルの火種になることは少なくありません。
瑕疵担保責任と契約不適合責任の関係
瑕疵担保責任は使ってはいけない?
2020年4月1日の民法改正によって、従来の「瑕疵担保責任」は、「契約不適合責任」に改められることになりました。
しかし、改正後に瑕疵担保責任という言葉を使ってはいけないということではありません。
現に、住宅実務においては、現在も「瑕疵担保責任」という言葉が一般的に使用されています。
たとえば、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」という特別法においては、依然として「瑕疵担保責任」という用語が維持されています。
新築住宅の基礎構造や雨漏り防止に関する10年間の義務については、品確法に基づき現在も「瑕疵担保責任」として運用されています。
また、長年不動産業界や建設業界に携わっている実務家の間では、旧法下の慣習としてこの言葉が深く根付いている側面もあります。
したがって、契約書や打ち合わせで「契約不適合責任」のことを「瑕疵担保責任」と表現することも考えられます。
ただし、2020年以降の取引に関しては「契約不適合責任」という用語を用いるのが正確な対応です。
契約不適合責任の内容
契約不適合責任とは、引き渡された目的物が「種類・品質・数量」のいずれかに関して契約内容と適合しない場合に、売主が買主に対して負う債務不履行責任の一種です。
旧法下の瑕疵担保責任では「隠れた瑕疵(買主が気づかなかった欠陥)」のみが対象でしたが、現行法では「契約書に書かれた内容と合っているか」という契約責任の観点から判断されます。
そのため、買主が落ち度によって不備を見落としていたとしても、それが契約内容と異なっていれば責任を追及できる可能性が広がりました。
買主が行使できる権利は、以下の4種類に拡充されています。
- 履行の追完請求:修理や代替物の引き渡しを求める権利です。
- 代金減額請求:売主が修理等に応じない場合、不適合の度合いに応じて代金を減額してもらう権利です。
- 損害賠償請求:不適合によって生じた具体的な損害(修繕費用や転居費用など)の賠償を求める権利です。
- 契約の解除:契約の目的が達成できないほど重大な不適合がある場合、契約を遡及的に消滅させる権利です。
注意すべきは、これらの責任を追及するのに期間制限があることです。
原則として買主が「不適合を知った時から1年以内」に売主へ通知する必要があります。
この期間を過ぎると、たとえ重大な欠陥であっても売主の責任を問えなくなるリスクがあるため、不具合を発見した際は速やかに書面等で通知を行う必要があります。
瑕疵についてのQ&A
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住宅の瑕疵保険とは?
住宅瑕疵担保責任保険の特徴は、住宅会社が倒産した場合でも消費者が守られる点にあります。
通常、瑕疵が見つかれば施工業者に補修を求めますが、業者が倒産してしまっていると責任の追及が難しくなってしまいます。
しかし、この保険に加入していれば、消費者は保険会社に対して直接、補修費用(保険金)を請求できるため、自己負担を最小限に抑えて修理が可能となります。
この制度は「住宅瑕疵担保履行法」に基づき、住宅事業者に「保険への加入」または「保証金の供託」が義務付けられているため、多くの新築住宅で適用されています。
引き渡しから10年間、雨漏りや基礎の欠陥といった重大な瑕疵に対して機能する、住まいの安心を支える重要な仕組みといえます。
契約時には、保険の付保証明書が交付されているか必ず確認しましょう。
まとめ
「瑕疵(かし)」とは、ある物や権利、あるいは意思表示などが、「本来備えるべき性質・状態・品質を欠いていること」を意味します。
瑕疵が問題となる具体例として、以下のようなケースがあります。
- 意思表示の瑕疵
- 代理行為の瑕疵
- 占有の瑕疵
- 契約目的物の瑕疵
- 土地工作物の設置・保存の瑕疵
また、瑕疵の種類には、「物理的瑕疵」や「心理的瑕疵」、「環境的瑕疵」、「法律的瑕疵」、「権利の瑕疵」といった種類があります。
また、不動産取引や請負においてトラブルとなる品質や性能に関する欠陥・不具合は、従来「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、2020年の民法改正により「契約不適合責任」と改められました。
この改正により、単に「隠れた欠陥」があるかどうかではなく、「契約内容と適合しているか」という実態が重視されるようになりました。
買主には、契約の解除や損害賠償を請求する権利のほかに、修理を求める追完請求や代金減額請求といった権利も認められます。
デイライトでは、企業法務部に所属する弁護士が、瑕疵担保をはじめとする契約トラブルについて、ご相談をお受けしております。契約のことで気になることがあればお気軽にご相談ください。

