弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

インターネット上で爆発的な人気を博している「猫ミーム」。
心を癒やされる方も多いでしょうし、この動画や元の素材を自分の創作活動に利用したい、と思う方もいると思います。
しかし、その可愛らしさや面白さに隠れて見過ごされがちなのが「著作権」の問題です。
「みんな使っているから大丈夫だろう」「フリー素材だと思っていた」と考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、猫ミームは著作権フリーではありません。
安易な利用は大きなトラブルにつながる可能性があります。
この記事では、猫ミームと著作権の関係について弁護士がわかりやすく解説します。
目次
猫ミームは著作権フリーじゃない!?
そもそも猫ミームとは?

猫ミームとは、主にインターネット上で拡散されている、猫のキャラクターが登場する短編動画の総称です。
様々な表情や動きをする猫の画像を組み合わせて、BGMやテロップを加え、日常の出来事や感情などを表現した動画です。
比較的簡単に作成できる手軽さがあり、見る人が共感しやすい内容が多いために人気があります。
例えば、会議中に眠くなってしまう様子や、テストで良い点を取ったときの喜びなど、誰もが経験するようなシチュエーションが猫ミームで表現されることで、多くの人々の心をつかみ、拡散されていきました。
猫ミームの多くは、元々インターネット上に存在していた様々な猫の動画や画像、スタンプなどを素材としています。
これらの素材は、特定の個人の飼い猫の動画であったり、海外の有名アニメーションキャラクターのパロディであったり、あるいはフリー素材として提供されているものであったりと、その出所は多岐にわたります。
この点が、後述する著作権の問題を複雑にしている原因の一つです。
猫ミームは著作権で保護される?
猫ミームそのもの、そして猫ミームに使われている素材の多くは、著作権で保護される可能性があります。
「みんなが使っているから」「インターネットに公開されているから」といって、無断で利用していいわけではありません。
著作権とは、簡単に言えば、創作した人(「著作者」)に与えられる、自分の作品(「著作物」)を独占的に利用する権利のことです。
著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」です(著作権法第2条1項1号)。
猫ミームの素材としてよく使われる、特徴的な表情をした猫の画像は、その表情を捉えた写真家の「思想又は感情」が「創作的に表現」されたものとして、著作物と認められる可能性が高いです。
また、猫ミームの動画そのものも、BGMやテロップ、ストーリー構成を含めて、制作者の「思想又は感情」が「創作的に表現」された「映画の著作物」として保護される可能性が高いです。
猫ミームの利用はOK?著作権侵害となるケース
上でご説明の通り、猫ミームを安易に利用することは、著作権侵害にあたるリスクが高いです。
では、具体的にどのような場合に著作権侵害となるのでしょうか。
代表的な3つのケースを挙げて解説します。

無断複製
著作権法には、著作物を複製する権利が、著作者に独占的に与えられています(著作権法第21条)。
「複製」とは、印刷、写真、コピー、録音、録画など、様々な方法で著作物をコピーすることです。
猫ミームの動画や画像をダウンロードして、自分の動画にそのまま貼り付けたり、サイズなどを変更して利用したりする行為は、この「複製」にあたります。
著作権者の許可なくこれらの行為を行うと、著作権侵害となります。
特に、元々著作権者の許可なくインターネット上にアップロードされた素材をさらに利用することは非常に危険です。
無断改変
2つ目は、「著作物の無断改変」です。
著作権法には、著作者の意に反して著作物を改変されない権利(同一性保持権)が定められています(著作権法第20条)。
猫ミームでは、元々の猫の画像や動画に、テキストやBGMを加えたり、動きをつけたりといった「改変」が行われることがほとんどです。
しかし、元の素材(猫の画像など)が著作物である場合、著作権者の許可なくこのような改変を行うと、同一性保持権の侵害にあたる可能性があります。
例えば、ある猫の画像が、その表情や構図を含めて著作物と認められるものだったとします。
この画像を、面白おかしくするために歪ませたり、不適切な言葉を書き加えたりする行為は、著作者の作品に対する名誉や感情を傷つけることになり、同一性保持権の侵害にあたる可能性が高いです。
無断公衆送信
著作権法には、著作物を公衆に送信する権利が著作者に与えられています(著作権法第23条)。
YouTubeやTikTokなどに、著作権侵害にあたる猫ミーム動画をアップロードする行為は、この「公衆送信」にあたります。
例えば、あるクリエイターが制作したオリジナルの猫ミーム動画を、無断でダウンロードして、自分のアカウントに再投稿する行為は、著作権侵害となります。
また、元の素材自体が著作権侵害の動画である場合、それをさらに再投稿することは、著作権侵害のほう助となる可能性もあります。
これらの著作権侵害行為が発覚した場合、著作権者から損害賠償を請求されたり、動画の削除を求められたりするだけでなく、悪質な場合は刑事罰の対象となる可能性もあります。
著作権者が黙認しているとしても、合法というわけではありませんので注意しましょう。
なお、著作権侵害の刑事罰は重く、最大で10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります(著作権法第119条)。
猫ミームの利用で著作権侵害を回避するには?
猫ミームを安全に利用するためには、著作権侵害を回避するための知識と対策が不可欠です。
具体的な対処法をみていきましょう。

著作権者の許可を得る
まず、最も確実な方法は、「著作権者の許可を得る」ことです。
これは、猫ミームに限らず、あらゆる著作物を利用する際の基本原則といえます。
例えば、特定の猫ミームの元になった画像や動画の制作者が特定できる場合は、直接連絡を取って利用許可を求めるのが最も安全です。
しかし、多くの猫ミームの素材は、その出所が不明であったり、著作権者が特定できなかったりすることがほとんどです。
その場合は、次にご説明する各方法を検討しましょう。
著作権フリーの素材を利用する
最近では、猫ミームのような動画を作成するための、著作権フリーの素材やテンプレートを配布しているサイトも出てきています。
例えば、「猫ミーム素材」「フリー素材」といったキーワードで検索すると、多くのサイトが見つかります。
これらのサイトで配布されている素材は、利用規約の範囲内で自由に利用することが許可されています。
利用規約をよく確認し、商用利用が可能か、改変が可能かなどをチェックした上で利用すれば、著作権侵害のリスクを大幅に減らすことができます。
ただし、中には著作権者の許可を得ていない素材が紛れ込んでいる可能性もあるため、信頼できるサイトかどうかを慎重に見極めることが重要です。
自分で素材を制作する
著作権侵害のリスクをゼロにするには、これ以上の方法はありません。
例えば、自分の飼い猫の動画を撮影したり、自分で猫のキャラクターを描いたりして、オリジナルの素材を制作すれば、著作権侵害の心配はありません。
なお、オリジナルの素材を使った動画は、他の動画との差別化にもつながり、人気を集める可能性もありますからぜひトライしてみてください。
著作権侵害にならない範囲での利用に留める
もし、どうしても既存の猫ミームの素材を使いたい場合は、著作権侵害にならない範囲の以下のような利用に留めることも一応選択肢となりうるためご紹介します。
ただ、この範囲はかなり限定的で、かつ、境界線が曖昧ですので、あまりおすすめしません。
最後の手段と考えてこの選択肢については慎重に検討されてください。
著作権法には、「引用」という例外規定があります(著作権法第32条)。
これは、自分の著作物の中で、他人の著作物を正当な目的で利用する際に、一定の条件を満たせば、著作権者の許可なく利用できるというものです。
しかし、猫ミームの動画に既存の素材を引用する場合、それが「正当な目的」であるか、また、自分の著作物が「主」であり、引用部分が「従」であるかといった厳しい条件を満たす必要があります。
安易な引用は、著作権侵害と判断されるリスクがあるため、避けるのが無難です。
学校の授業などで、著作物を教育目的で利用する場合、著作権者の許可なく利用できる場合があります(著作権法第35条)。
しかし、これはあくまで非営利かつ教育目的での利用に限られ、インターネット上での公開には適用されないため、注意が必要です。
猫ミームで炎上しないために
猫ミームの利用における最大のトラブルは、著作権侵害による法的責任ですが、それ以外にも「炎上」というリスクが潜んでいます。
炎上とは、インターネット上で批判や非難が殺到し、社会的な信用を失ってしまう現象のことです。
ここでは、猫ミームで炎上しないために、特に注意すべきポイントを解説します。

①「不適切な内容の動画を作成しない」こと
猫ミームは、ユーモラスな表現を得意とする反面、差別的な内容や、特定の個人・団体を誹謗中傷するような動画を作成すると、大きな炎上につながる可能性があります。
例えば、人種差別的なミームや、性別・年齢・障害などに基づく差別的な表現を含む動画は、人権侵害として強い非難を浴びることになります。
また、特定の企業の不祥事を揶揄するような動画や、実在の人物を面白おかしく揶揄する動画も、名誉毀損やプライバシー侵害として、法的なトラブルに発展する可能性があります。
②「第三者の権利を侵害しない」ことで
猫ミームの動画に、著作権侵害にあたる素材が含まれている場合、その動画をアップロードした人だけでなく、その動画を見た人たちからも「著作権侵害だ」と指摘され、炎上する可能性があります。
また、動画に映り込んでいる人や場所について、個人情報が特定できるような情報を無断で公開すると、プライバシー侵害として炎上する可能性があります。
特に、子どもの顔や名前、学校名などが映り込んでいる場合は、細心の注意が必要です。
③「プラットフォームの規約を遵守する」こと
YouTubeやTikTokなどの動画プラットフォームには、それぞれ独自の利用規約が定められています。
規約には、著作権侵害の禁止や、不適切なコンテンツの投稿の禁止、広告収益に関するルールなどが含まれています。
規約に違反する動画を投稿した場合、プラットフォームから動画を削除されたり、アカウントを凍結されたりする可能性があります。
また、規約違反が原因で炎上した場合、プラットフォームから何の助けも得られず、孤立無援の状態に陥ることもあります。
猫ミームの作成や投稿を行う際には、これらのリスクを常に意識し、トラブルを未然に防ぐことが重要です。
万が一、すでに炎上してしまった場合は、速やかに動画を削除するなどの対応を行い、必要に応じて弁護士に相談することをおすすめします。
猫ミームと著作権のよくあるQ&A
最後に、よくあるQ&Aについてお答えします。
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猫ミームの素材が著作権に抵触するかどう判断すればいい?
素材の出所を確認する
まず、その素材がどこから来たのかを調べてみましょう。
もし、特定のクリエイターが作成したオリジナルの作品や、アニメーション作品の一部であることがわかれば、その時点で著作権で保護されている可能性が非常に高いです。
具体的には、画像検索、動画検索、素材配布サイトの確認などを通じて出どころを確認できる場合が多いです。
著作物性を判断する
素材の出所が不明な場合でも、その素材が「著作物」と認められるかどうかを判断する必要があります。著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」です。
創作性・表現性に分けて判断するとわかりやすいです。
- 創作性: 誰が作っても同じような表現になるようなもの(例:単純な図形やマーク)には、創作性が認められない可能性があります。
一方、独創的な表現や個性的な表現が含まれていれば、創作性が認められる可能性が高いです。 - 表現性: 著作権法は「思想」そのものではなく、「表現」を保護します。
つまり、アイデアや概念は保護の対象になりませんが、そのアイデアを具体的に表現したものは保護の対象になります。
例えば、猫がただ座っているだけの写真には著作物性が認められないかもしれませんが、猫が特定のポーズを取っていたり、独特な表情をしていたりする写真には、著作物性が認められる可能性があります。
利用許可を確認する
素材が著作物であると判断された場合、著作権者の許可を得て利用できるかどうかを確認する必要があります。
具体的には、著作権者のウェブサイトやSNSを確認したり、著作権者に直接問い合わせる事が考えられます。
これらのステップを踏むことで、素材が著作権に抵触するかどうかを判断することができます。
しかし、素人の方が正確に判断することは非常に難しいため、少しでも不安を感じた場合は、利用を避けるか、弁護士に相談することをおすすめします。
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猫ミームに使いたいとき著作権はどのように確認すればよい?
確認方法を解説します。
Google画像検索
最も手軽な確認方法が、Google画像検索です。
著作権を確認したい画像をPCに保存します。
次に、Google画像検索のページを開き、カメラのアイコンをクリックして保存した画像をアップロードするか、画像のURLを貼り付けます。
すると、その画像が使われているウェブサイトや、類似の画像が表示されます。
もし、その画像が特定のクリエイターのウェブサイトや、特定の企業の公式ウェブサイトで使われていることがわかれば、著作権で保護されている可能性が非常に高いと判断できます。この検索結果から著作権者にたどり着けることも多いです。
YouTubeやTikTokでの検索
猫ミームの素材は、動画の一部であることが多いため、YouTubeやTikTokでの検索も有効です。
まず、素材の特徴をキーワードとして検索し、検索結果の中から、元の動画と思われるものを探します。
もし、元の動画が特定のクリエイターによってアップロードされたものであれば、そのクリエイターのチャンネルやプロフィールを確認し、利用規約が公開されていないかを確認しましょう。
ライセンスの確認
素材の出所がわかったら、ライセンスを確認しましょう。
著作権者が「Creative Commons」ライセンスを付与している場合があります。
CCライセンスには、「表示」「非営利」「改変禁止」「継承」など、いくつかの種類があります。
それぞれのライセンスが何を許可し、何を禁止しているかをよく確認しましょう。
また、素材配布サイトや、著作権者のウェブサイトには、必ず利用規約が記載されています。利用規約には、商用利用が可能か、改変が可能か、クレジット表記が必要か、などが明記されています。
利用規約をよく確認し、規約の範囲内で利用しましょう。
以上の具体的な方法で著作権の有無やライセンスの内容を確認しましょう。
まとめ
この記事では、インターネット上で大人気の「猫ミーム」と、それに潜む「著作権」の問題について解説しました。
猫ミームの素材や動画の多くは、著作権で保護される可能性があり、著作権フリーではないということがおわかりいただけたと思います。
猫ミームのように、広く拡散されている動画や画像であっても、その裏側には、著作権という重要なルールが存在することを忘れないようにしましょう。
安易な利用は、法的トラブルや炎上といった大きなリスクにつながる可能性があります。
この記事を読んで、猫ミームを安全に楽しむための知識を身につけていただければ幸いです。
もし、すでに著作権侵害のトラブルに巻き込まれてしまった、あるいは不安を感じているという場合は、お早めに弁護士にご相談ください。
専門家である弁護士が、お客様の状況を詳しくお伺いし、最適な解決策をご提案させていただきます。
デイライト法律事務所では、豊富な経験と専門知識を持つ弁護士が、皆様のビジネスや日常生活をサポートいたします。
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