著作権の期限はいつまで?映画・音楽・小説等の違いを解説

監修者:弁護士 西村裕一
弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

著作権の期限いつまで?
著作権の保護期間は、原則として著作者の死後(著作物の種類によっては公表時)から70年までです。

ただし、この原則にも例外があります。

この記事では、ビジネスパーソンとして知っておくべき著作権の保護期間について、基本的な考え方から、作品種類ごとの違い、具体的な確認方法まで、弁護士がわかりやすく解説します。

著作権のルールは複雑ですが、ポイントを押さえることで、不必要なトラブルを避け、ビジネスチャンスを広げることができます。

この記事を通じて、ぜひ著作権の期限に関する知識を深め、日々の業務などにぜひお役立てください。

著作権の期限はいつまで?

著作権の期限はいつまで?

ここでは、著作権の保護期間について、見ていきましょう。

 

著作権の保護期間の基本は70年

著作権の保護期間の原則は、「著作者の死後70年まで」です。

著作権は、著作者が創作活動にかけた労力や精神に報い、その生活を支えるための権利です。

そのため、著作者が生きている間はもちろん、その遺族の生活も保障するために、亡くなってから一定期間、権利が続くわけです。

遺族は、著作者が残した印税やライセンス料を受け取ることができます。

 

【種類別】著作権の期限の一覧表

より詳しく、著作物の種類別に著作権の保護期間を紹介します。

著作権法では、以下のように、作品の種類によって70年の保護期間の起算点(計算を始める時点)を細かく定めています。

著作物の種類 著作者 保護期間の原則 起算点
一般的な著作物(小説、音楽、絵画など) 個人 死後70年 著作者が死亡した日の翌年の1月1日
共同著作物(複数人で創作した作品) 複数人の個人 最終死亡者の死後70年 最後に死亡した著作者が死亡した日の翌年の1月1日
無名・変名の著作物(ペンネーム等) 個人(特定不能) 公表後70年
※死後70年以内に公表されなければ、創作後70年
著作物が公表された翌年の1月1日
団体名義の著作物(会社制作のレポート等) 法人・団体 公表後70年
※創作後70年以内に公表されなければ、創作後70年
著作物が公表された翌年の1月1日
映画の著作物 映画製作者など 公表後70年
※創作後70年以内に公表されなければ、創作後70年
映画が公表された翌年の1月1日

続いて、この法律の定めをもとに、皆さんの身近な作品がいつまで保護されるのか、見ていきましょう。

 

映画の著作権の期限はいつまで?

映画は、監督や、脚本家、音楽家、俳優など、非常に多くの人が関わって作られます。

そのため、権利関係が複雑になりがちで、著作権の扱いも他の著作物とは少し異なります。

映画の著作権の保護期間は、「公表後70年」です。

起算点は、著作者の「死後」ではなく、映画がスクリーンで上映されたり、DVDとして販売されたりした「公表」の時点とされています。

 

古い映画でも自由に利用できないケース

ただし、保護期間が切れた映画を利用する場合には、注意が必要です。

例えば、映画の中で使われている音楽(劇伴や主題歌)の作曲家が、映画の公開後も存命で、その死後70年が経過していない場合があります。

この場合、映画の映像は自由に使えても、音楽を無断で使うことはできません。

音楽を消して利用するか、音楽の権利者から別途許諾を得る必要があります。

このように、映画を利用する際は、映像だけでなく、それに含まれる音楽や原作小説など、個々の要素の権利状況も別途確認する必要があります。

 

音楽の著作権の期限はいつまで?

音楽は、「楽曲」そのものと、それを演奏したり歌ったりする「パフォーマンス」、そしてそれを録音した「音源(レコード)」という、複数の権利が重なり合っています。

これらはそれぞれに保護期間が異なるため、注意が必要です。

具体的には以下のとおりです。

 

楽曲の著作権(作詞家・作曲家)

歌詞とメロディーに対する権利です。

これは一般的な著作物と同様に、原則「作詞家・作曲家の死後70年」まで保護されます。

共作の場合は、最後に亡くなった方の死後70年となります。

 

実演家の権利(著作隣接権)

歌手や演奏家が持つ権利です。保護期間は「実演が行われてから70年」です。

 

レコード製作者の権利(著作隣接権)

CDや配信音源など、音を固定した人(通常はレコード会社)が持つ権利です。

これは「原盤権」とも呼ばれます。保護期間は「音源が発行されてから70年」です。

 

画像やイラストの著作権の期限はいつまで?

写真、絵画、イラスト、漫画などの画像も著作物であり、保護期間が存在します。

これらの保護期間も、原則として「著作者の死後70年」です。

写真家、画家、漫画家などが亡くなってから70年が経過すれば、パブリックドメインとなります。

 

美術館が所蔵する絵画の写真データについて

ここで注意したいのが、「絵画そのもの」と「絵画を撮影した写真」は別物だということです。

例えば、ゴッホの『ひまわり』の絵画自体の著作権は切れていますが、その絵画を美術館がプロのカメラマンに依頼して撮影した場合、その「写真」には撮影者の著作権が発生します。

美術館のウェブサイトに掲載されている画像を無断でダウンロードして使用すると、この写真の著作権を侵害する可能性があります。

パブリックドメインの絵画を利用したい場合は、自分で撮影するか、権利フリーの素材集などを利用するのが安全です。

 

小説の著作権の期限はいつまで?

小説や脚本、詩なども、典型的な言語の著作物です。

保護期間は、これも原則通り「著作者の死後70年」です。

ただし、共同著作物や、団体名義の小説については、上の表にお示しの通りとなるため注意が必要です。

 

ディズニーの著作権の期限はいつまで?

「ミッキーマウスの著作権が切れる」というニュースを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

ミッキーマウスが初めて登場した映画「蒸気船ウィリー」は1928年に公開されました。

これは団体名義(ウォルト・ディズニー・プロダクション)の著作物であり、かつ映画の著作物です。

アメリカの法律では当時、公開後95年で保護期間が満了するとされていました。 計算すると、1928年 + 95年 = 2023年。

このため、『蒸気船ウィリー』版の初代ミッキーマウスは、2024年にアメリカ国内でパブリックドメインとなりました。

ただし、日本で初代版ミッキーマウスの著作権がいつ切れるのか、については解釈が別れています。

そのため、日本ではまだ著作権が切れていない可能性があることに注意が必要です。

※第二次世界大戦を理由とした「戦時加算」という制度によって通常の保護期間に加えて戦争が行われた期間約10年5ヶ月(3794日)が加算される可能性があります。

戦時加算については後述します。

また、「ミッキーマウス」という名称やその姿は、著作権だけでなく「商標」としても登録されています。

商標権は、更新を続ける限り半永久的に権利が存続します。

たとえ著作権が切れたとしても、ディズニーの商品であるかのように見せかけてミッキーマウスの絵を使った商品を販売すれば、商標権の侵害にあたります。

以上の通り、著作権の保護期間は、一見するとシンプルなルールに見えますが、実際には著作物の種類や公表の形態、さらには国際関係も絡み合う、非常に複雑な問題です。

判断に迷うケースがあれば、必ず著作権に詳しい弁護士に相談し、法的なリスクをクリアにしてから事業を進めるようにしてください。

 

 

著作権の期限を確認する方法

ここでは、著作権の期限を調べるための具体的なステップと、役立つツールについて解説します。

まず、調査の基本的な流れは以下の4ステップになります。

著作権の期限を確認する方法

 

Step1:著作者を特定する

誰がその作品を作ったのか(著作者)を正確に把握します。

小説なら作家名、音楽なら作詞家・作曲家名、絵画なら画家名です。

会社が制作した報告書などであれば、その会社名(法人名)が著作者となります。

 

 

Step2:起算点となる年を調べる

次に、保護期間の計算のスタート地点(起算点)となる年を調べます。

個人の著作物なら「著作者が亡くなった年(没年)」

団体名義の著作物や映画なら「作品が公表された年(公表年)」

 

 

Step3:保護期間を計算する

特定した没年や公表年から、原則の保護期間(死後70年または公表後70年)を足して、いつまで保護されるのかを計算します。

計算は「没年・公表年の翌年1月1日から70年後の12月31日まで」となる点に注意しましょう。

 

 

Step4:例外規定(戦時加算など)を確認する

特に海外の作品を利用する際には、前のセクションで少し触れた「戦時加算」のような特別なルールの対象になっていないかを確認する必要があります。

例外規定については次の「◯著作権の保護期間が延長されるケースがある?」で解説します。

 

著作者の名前や没年、作品の公表年はどうやって調べればいいですか?

オンラインで利用できる便利なツールが数多く存在します。

以下に代表的なものをいくつかご紹介します。これらを組み合わせて調査を進めるのがよいでしょう。

  • 国立国会図書館サーチ:国立国会図書館サーチ
  • 著作権情報センター(CRIC):公益社団法人著作権情報センター(CRIC)
  • J-WID(JASRAC作品データベース検索サービス):J-WID
  • 文化庁「著作権登録制度」:文化庁 著作権登録制度

 

調査に行き詰まった場合はどうすればいいですか?

調査に行き詰まったり、少しでも不安を感じた場合は、決して自己判断で突き進まず、著作権問題を専門とする弁護士に相談することを強くお勧めします。

著作権問題に詳しい弁護士であれば、法的な知識だけでなく、調査のノウハウも持っていますので、権利状況を正確に把握して安全に著作物を利用するための方法(許諾交渉、ライセンス契約、代替案の提案など)をアドバイスしてくれます。

 

 

著作権の保護期間が延長されるケースがある?

著作権の保護期間は「死後70年」や「公表後70年」が基本ルールであると解説してきました。

しかし、これには「例外」が存在します。

その代表的なケースが戦時加算です。

これは、第二次世界大戦(太平洋戦争)の影響で、日本が十分に保護できなかったアメリカなどの「連合国」の国民が持つ著作権について、その保護期間を特別に延長するというルールです。

具体的には、戦争状態にあった期間分などを、通常の保護期間(死後70年など)にさらにプラス(加算)して保護するというものです。

この制度は、1952年に発効したサンフランシスコ平和条約に基づいて定められました。

条約では、日本が戦争によって連合国国民に与えた損害を回復することが求められ、その一環として、著作権などの知的財産権についても特別な措置を講じることになったものです。

「連合国」とは具体的には、以下のような国々が含まれます。

  • アメリカ合衆国
  • イギリス
  • フランス
  • オーストラリア
  • カナダ
  • オランダ
  • ブラジル
  • ニュージーランド
  • パキスタン など

これらの国の国民(個人・法人)が、戦争が始まる前(1941年12月7日以前)から持っていた著作権が、戦時加算の対象となります。

戦後に創作された著作物は対象外です。

 

どれくらいの期間が延長(加算)されるのですか?

加算される日数は国ごとに異なりますが、約10年と数カ月の場合が多いです。

 

 

著作権の期限が切れたらどうなる?

保護期間が満了すると、その著作物は著作権が切れて社会の共有財産、「パブリックドメイン」になります。

パブリックドメインは、原則として社会の誰でも、許可を得ることなく、そして無料で利用できるようになります。

パブリックドメインの利用は、個人的な趣味の範囲にとどまらず、営利目的のビジネス(商用利用)でも自由に行うことができます。

例えば、パブリックドメインの絵画をプリントしたTシャツやマグカップを製造・販売することも可能です。

 

パブリックドメインを利用するときの注意点

ただし、パブリックドメインを利用する際には注意点があります。

そもそも、自由に利用できるからといって、何をしても許されるわけではありません。

財産権である著作権が切れてパブリックドメインになっても、作者の著作者人格権を保護するため、その人格的な利益は尊重し続けなければなりません。元の作品と作者に対するリスペクトの精神を欠かさずに利用することが重要です。

また、パブリックドメインの作品であっても、その作品を撮影した「写真」や、演奏した「CD音源」には、撮影者や演奏家の新しい権利(著作隣接権)が発生している可能性があります。

利用したいものが「原作」そのものなのか、それとも誰かが加工した「二次的な制作物」なのかをしっかり見極めることも、トラブルを避けるための重要なポイントです。

 

 

著作権の期限に関するQ&A

最後に、よくあるご質問にQ&A形式でお答えし、さらに理解を深めていきましょう。

 

昔の映画や音楽は自由に使える?

保護期間が満了していれば自由に使えますが、映画や音楽は特に注意が必要な分野です。

映画や音楽は、さまざまな権利が複雑に絡み合った「権利の束」だからです。

映画の著作権は、原則として「公表後70年」で満了します。

しかし、保護期間が切れた映画であっても、原作の権利、音楽の権利、リマスター版の権利などが残っている可能性がありますので注意が必要です。

音楽の著作権は、楽曲の著作権、実演家の著作隣接権、レコード製作者の著作隣接権が絡み合っていますので、これらすべての保護期間が終了しているか、また、もしこれらの権利が残っている場合にはその権利を侵害しない形で利用できているか、がポイントになります。

 

海外の著作物の保護期間は?

基本的には日本の法律が適用されますが、国際条約が絡むため複雑です。

海外の著作物を日本で利用する場合、どの国の法律で、何年保護されるのかは、慎重に判断する必要があります。

大原則として、海外の著作物であっても、日本国内で利用する際は、日本の著作権法が適用されます。

つまり、原則として「死後70年」または「公表後70年」の保護期間が適用されることになります。

ただし、日本の著作権法には「保護期間の相互主義」という例外規定があります(著作権法第58条)。

これは、「相手の国での保護期間が日本よりも短い場合は、その短い方の期間を適用する」というルールです。

この相互主義にもさらに例外があります。

それが、これまでも解説してきた「戦時加算」です。

アメリカやイギリス、フランスといった連合国の著作物については、この戦時加算が適用されるため、たとえ本国で保護期間が切れていたとしても、日本では保護期間が加算され、結果的に「死後70年 + 戦時加算分」の間保護されるケースが多いです。

 

著作権の期限切れの作品はどこで見つかる?

パブリックドメインとなった作品は、文化的な共有財産として、さまざまな団体やプロジェクトが収集・公開しています。

ビジネスや創作活動のヒントを探すために、これらのサイトを覗いてみるのも良いでしょう。

以下に代表的なものをいくつかご紹介します。

ただし、海外の作品については戦時加算の関係で、日本ではパブリックドメインになっていないケースもありますので利用する際には慎重に確認が必要です。

悩ましい場合には専門家に相談することをお勧めします。

 

 

まとめ

今回は、映画や音楽、小説などの「著作権の期限」をテーマに、その基本的な考え方から、種類ごとの違い、調査方法、そして注意点までを詳しく解説してきました。

この記事で基本を押さえていただき、日常生活やビジネスで、健全な著作物利用を目指しましょう。

ただ、この記事でも解説した通り、著作権のルール、特に保護期間の判断は非常に複雑です。

ご自身で調査するには限界があり、常に「見落とし」のリスクがつきまといます。

特にビジネスでの著作物利用においては、判断ミスや誤解が原因で大きなトラブルにつながることも少なくありません。

悩ましい場合には、専門家である弁護士に相談されることを強くお勧めします。

デイライト法律事務所では、企業法務に関する豊富な経験と専門知識を持つ弁護士が、皆様のビジネスをサポートいたします。

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