契約不適合責任の免責とは?免責物件のデメリットや注意点

監修者:弁護士 西村裕一
弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

契約不適合責任の免責とは
「契約不適合責任の免責」とは、売主が、契約不適合責任を「負わない」とする特別な約束(特約)を、契約書に盛り込むことをいいます。

例えば、中古の家を買った後で雨漏りが見つかったとしても、免責特約があれば、原則として買主は売主に対して修理(修補)の請求や代金の減額などを求めることができなくなります。

この記事では、この「契約不適合責任の免責」について、弁護士がわかりやすく解説します。

そもそも契約不適合責任とは何か、なぜ免責特約が使われるのか、どのような場合に認められ、または認められないのか、そして売主側・買主側それぞれのメリット・デメリットや注意点について、詳しくご説明します。

この記事が、皆様の安全な取引の一助となれば幸いです。

契約不適合責任の免責とは?

契約不適合責任の免責とは

契約不適合責任の免責とは、ひとことで言えば、「売主が、売った物に後から欠陥が見つかっても、原則として責任を負わなくてもよい」という内容の、売主と買主の間の特別な合意(特約)です。
通常、物を売買する場合、売主は、契約書に書かれた内容や取引上の一般的な常識に合った品質・状態の物を引き渡す義務があります。

もし、引き渡した物に「契約の内容と合っていない」点(=契約不適合)があった場合、売主は買主に対して「契約不適合責任」を負います。

しかし、この契約不適合責任は、当事者間の合意によって、その内容を変更したり、あるいは「一切責任を負わない」と定めたりすることが、原則として可能です。

この「一切責任を負わない」、あるいは「特定の不具合については責任を負わない」と定める特約は、「免責特約」と呼ばれます。

 

 

そもそも契約不適合責任とは?

契約不適合責任とは

そもそも契約不適合責任とは、売買契約などで、売主が買主に引き渡した物が、契約で定めた内容(品質、種類、数量など)に合致していない場合に、売主が買主に対して負うことになる責任のことです。

契約不適合責任が発生した場合、買主は売主に対して具体的にどのようなことを請求できるのでしょうか?

民法では、主に以下の4つの権利を買主に認めています。

 

追完請求

「契約内容と違うのだから、まずは契約どおりの状態にしてください」と要求する権利です。

例えば、雨漏りがあれば修理(修補)を請求したり、購入した機械10台のうち1台が違う機種だったら正しい機種と交換(代替物の引渡し)するよう求めたり、数が足りなければ不足分を引き渡す(不足分の引渡し)よう請求したりすることです。

 

代金減額請求

売主が追完請求に応じない場合や、修理などが不可能な場合には、「契約内容に合っていない分、代金をまけてください」と要求する権利です。

例えば、雨漏りの修理が困難である場合、その価値が下がった分について、売買代金の一部返金を求めることができます。

 

損害賠償請求

契約不適合によって買主が被った損害(例えば、雨漏りで家財道具が濡れて使えなくなった損害や、修理期間中にホテルに宿泊した費用など)について、その賠償を請求する権利です。

これは、売主に「責めに帰すべき事由」(せめにきすべきじゆう)、つまり落ち度(故意や過失)がある場合に認められます。

 

契約の解除

契約不適合の程度が重大で、追完請求をしても意味がない場合や、売主が追完を拒否した場合など、契約の目的(例えば「家に住む」こと)を達成できない場合に、「この契約はなかったことにします」と契約自体を取り消す権利です。

これらの権利を、買主はいつまでも主張できるわけではありません。

買主がその不適合を知った時から1年以内に、売主にその旨を通知(連絡)する必要があるとされています(民法第566条)。

ただし、売主が物を引き渡す際に、その不適合を知っていたり、重大な過失によって知らなかったりした場合には、この1年という期間制限は適用されません。

契約不適合責任について、より詳しくお知りになりたい方は下記ページもご覧ください。

 

 

契約不適合責任の免責条項が使われる理由

売主が買主に対して負う「契約不適合責任」は、買主を保護する強力な制度である反面、売主にとっては大きなリスクとなります。

特に、中古品や不動産のように、時間の経過とともに劣化したり、隠れた不具合が存在したりする可能性が高い物を売買する場合、売主が予期せぬ責任を長期間負わされる可能性があります。

そこで、このような売主のリスクを管理し、取引を円滑に進めるために、「契約不適合責任の免責条項(特約)」が利用されます。

免責条項が使われる主な理由としては、以下のような点が挙げられます。

 

①売主のリスク軽減(特に中古品・不動産取引)

これが免責条項が使われる最大の理由です。

例えば、中古住宅を個人が売却するケースを考えてみましょう。

売主自身が長年住んでいるとしても、壁の中や床下、屋根裏など、専門家でなければわからない不具合(例えば、柱の一部がシロアリに食われている、断熱材が劣化している、配管にわずかな漏れがあるなど)をすべて把握しているわけではありません。

もし免責特約がなければ、売却後、買主がリフォームをしようとして偶然シロアリ被害を発見した場合、「契約不適合だ」として売主が修理費用(場合によっては数百万円)を請求される可能性があります。

売主はすでに売買代金を受け取り、新居の購入費用などに充ててしまっているかもしれません。そのような状況で突然高額な請求を受ければ、売主の生活は著しく不安定になります。

このような将来の不確定なリスクを避けるため、売主は「売却後の責任は負いません」という免責特約を希望することが少なくありません。

これは、売主が不誠実だからというわけではなく、中古品取引に必然的に伴うリスクを、売主と買主の間でどのように分担するかの問題と言えます。

 

②取引価格への反映(安価での売却)

免責特約を設けることは、売買価格にも影響します。

売主が契約不適合責任を負う場合、その潜在的なリスク(将来修理費用などを負担する可能性)も考慮して、売買価格を比較的高めに設定する必要が出てきます。

逆に、売主が契約不適合責任を「免責」されるのであれば、そのリスクは買主が引き受けることになります。

その代わりとして、買主は売主に対し、免責を考慮した低い価格での購入を交渉する余地が出てきます。

 

③ 取引の迅速化・簡素化

もし契約不適合責任が常に厳格に適用されると、売主は売却前に専門家(ホームインスペクターなど)による徹底的な調査を行い、あらゆる不具合の可能性をリストアップし、契約書に詳細に記載しなければ、安心して売ることができません。

これは多大な時間とコストがかかり、取引のスピードを妨げる可能性があります。

特に、会社間の取引で、専門的な機械や大量の部品を売買する場合、一つ一つの品質を完璧に保証することが困難な場合もあります。

そのような場合、あらかじめ「一定の不具合は免責とする」と合意しておくことで、煩雑な調査や交渉を省略し、迅速かつ簡素に取引を進めることができる、という側面もあります。

 

 

契約不適合責任の免責特約の例

契約不適合責任の免責特約は、契約書の中で具体的にどのように記載されるのでしょうか。

免責の範囲や程度によって、いくつかのパターンがあります。

よく見られる免責特約の条項例を、いくつかご紹介します。

具体的にイメージしやすいよう、不動産売買を前提にしていますが、不動産売買以外の事例でも同様の定めを置くことは可能です。

一切の責任を免責する(完全免責)条項

(契約不適合責任の免除)
第〇条 売主は、買主に対し、本物件に関する契約不適合責任(種類、品質または数量に関するものを含むが、これに限られない)を一切負わないものとする。

2.買主は、本物件の引渡し後、本物件に種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない点(隠れたものであるか否かを問わない)が発見された場合であっても、売主に対し、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求および契約の解除をすることができないものとする。

解説:売主の契約不適合責任を全面的に免除する、強力な免責特約です。

「一切負わない」と明記することで、引渡し後にどのような不具合(例えば、雨漏り、シロアリ被害、給排水管の故障、土地の汚染など)が見つかったとしても、買主は売主に対して原則として何も請求できなくなります。

ただし、完全免責条項が宅建業法や消費者法観点で無効とされない取引でのみ使用するよう、注意してください。(詳しくは次のセクション参照)

特定の事項についてのみ免責する条項

(契約不適合責任)
第〇条 売主は、買主に対し、本物件のうち、以下の各号に定める特定の設備に関する契約不適合責任については、これを負わないものとする。(1) 給湯器 (2) 浴室換気乾燥機 (3) 床暖房設備

2.前項に定める特定の設備以外の本物件(土地・建物本体を含む)については、売主は、引渡しの日から3ヶ月以内に買主から通知を受けた契約不適合に限り、その責任を負うものとする。

解説:免責の範囲を限定するタイプの条項です。

建物本体(雨漏りやシロアリ被害など)については原則通り(あるいは期間を短縮して)責任を負うものの、中古住宅で特に故障しやすい「付帯設備」(エアコン、給湯器、床暖房など)については、その責任を免除する、という内容です。

売主としては「引き渡すまでは使えていた」ものを、引き渡し後にまで保証するのは難しい、という事情があります。

そこで、このような特定の設備についてのみ免責とすることで、売主・買主双方のリスクを調整することがあります。

責任を負う期間を短縮する条項

(契約不適合責任)
第〇条 売主は、買主に対し、本物件に契約不適合があった場合、本物件の引渡しの日から6ヶ月以内に買主が売主にその旨を通知した場合に限り、契約不適合責任を負うものとする。

2.前項の期間を経過した場合、買主は、売主に対し、契約不適合を理由とする追完請求、代金減額請求、損害賠償請求および契約の解除をすることができない。

解説: これは、契約不適合責任を「免責」する(= ゼロにする)わけではありませんが、その責任を負う期間を、法律の原則(不適合を知ってから1年以内の通知)よりも短く制限する特約です。

これも、実務上は免責特約の一種として広く利用されています。

これらの条項例からもわかるように、「免責特約」と一口に言っても、その内容は様々です。

契約を結ぶ際には、単に「免責」という言葉があるかないかだけでなく、「何を」「いつまで」免責するのか、その具体的な内容を契約書で正確に確認することがトラブル防止のために重要です。

 

 

契約不適合責任の免責特約が認められないケース

契約自由の原則により、免責特約は原則として有効ですが、どのような特約でも認められるわけではありません。

特に、買主保護の観点や、取引の公正さを保つために、法律によって免責特約の効力が制限されたり、無効とされたりする場合があります。

ここでは、免責特約が認められない(無効となる)代表的なケースについて解説します。

契約不適合責任の免責特約が認められないケース

 

①売主が不適合(欠陥)を知りながら告げなかった場合

たとえ契約書に「売主は一切の契約不適合責任を負わない」という完全免責特約が記載されていたとしても、売主が、その不適合を知っていたにもかかわらず、わざと買主に告げずに売買契約を結んだ場合、その免責特約は無効となります(民法第572条)。

民法第572条

(担保責任を負わない旨の特約)
第五百七十二条 売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

引用:民法|e-Gov法令検索

 

②売主が宅地建物取引業者で、買主が個人(消費者)の場合

不動産取引において、売主が不動産会社(宅地建物取引業者、いわゆる「宅建業者」)で、買主が宅建業者ではない一般の個人(消費者)である場合、宅地建物取引業法(宅建業法)という特別な法律によって、買主が不利になるような免責特約は厳しく制限されています。

具体的には、宅建業法第40条により、売主である宅建業者は、契約不適合責任について、「物件の引渡しの日から2年以上」となる特約をする場合を除き、民法の原則よりも買主に不利となるような特約(例えば、「免責とする」特約や「責任期間を引渡しから1年とする」特約など)を結ぶことは禁止されています。

宅建業法第40条

第四十条 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。

2 前項の規定に反する特約は、無効とする。

引用:宅地建物取引業法|e-Gov法令検索

もし、これに違反して「売主(宅建業者)は契約不適合責任を一切負わない」という特約を結んだとしても、その特約は無効となり、原則通り民法の規定(買主が不適合を知ってから1年以内の通知)が適用されることになります。

 

③消費者契約法により無効とされる場合

不動産取引以外でも、売主が事業者(会社や個人事業主)で、買主が一般の消費者(個人)である場合、「消費者契約法」という法律が適用されます。

消費者契約法第8条では、事業者が、その契約不適合責任を「全部免除する」特約などは、無効であると定めています。

消費者契約法第8条(抜粋)

(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)
第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。

一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項

二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項
〜〜〜
〜〜〜

引用:消費者契約法|e-Gov法令検索

 

 

契約不適合責任の免責特約が認められるケース

前のセクションで、免責特約が認められないケースを紹介しました。

続いて、免責特約が有効と認められやすいケースを紹介します。

契約不適合責任の免責特約が認められるケース

 

①売主・買主がともに事業者(会社)である場合(BtoB取引)

会社と会社の間(BtoB)で、例えば中古の工作機械や業務用不動産(工場、倉庫など)を売買する場合、免責特約は有効になりやすいです。

これは、事業者(会社)は、一般の消費者(個人)と比べて、売買の対象物に関する専門知識や情報を収集する能力、そして契約内容のリスクを判断し交渉する能力(いわゆる「交渉力」)が対等であると一般的に考えられているためです。

民法は、当事者間の合意を尊重する「契約自由の原則」を基本としています。

したがって、専門知識を持つ事業者同士が、お互いのリスクを勘案し、「契約不適合責任は免責とする」という条件で合意したのであれば、裁判所もその合意を尊重する傾向にあります。

 

②売主・買主がともに個人である場合(CtoC取引)

個人と個人の間(CtoC)で、例えば中古住宅や中古車を売買する場合も、免責特約は原則として有効と認められます。

これもBtoB取引と同様に、売主と買主の立場が(消費者保護法が介入するような事業者対消費者とは異なり)比較的対等であると考えられるためです。

 

③買主が免責のリスクを十分に理解・承諾している場合

免責特約が有効とされるための重要な前提は、それが「当事者間の真摯な合意」に基づいていることです。

つまり、買主が「この契約には免責特約が入っており、もし不具合が見つかっても売主に文句は言えない」ということを十分に理解し、納得した上で契約していることが必要です。

この場合、免責特約の有効性がより認められやすいと言えるでしょう。

 

 

売主側が契約不適合責任を「免責」にするメリット

これまで見てきたように、契約不適合責任の免責特約は、売主のリスクを管理するために重要な役割を果たします。

売主側(物を売る側)の視点に立つと、この免責特約を設けることには、主に以下のような明確なメリットがあります。

 

①売却後の予期せぬ金銭的負担(リスク)を回避できる

これが最大のメリットです。

契約不適合責任は、売主が売却当時に不具合の存在を知らなかった(過失なく知らなかった)場合でも、原則として責任を負わなければならない制度です。

免責特約を設けることで、売主は、このような「売った後の、いつ発生するかわからない、いくらになるかわからない」という不確定な金銭的リスクから解放されます。

特に、責任期間を短く区切る(例:3ヶ月)特約は、売主にとって「少なくとも3ヶ月が過ぎれば、もう責任を問われることはない」という法的な安定性(安心)をもたらし、売却後の生活を安心してスタートできるという点で、非常に大きなメリットとなります。

 

②取引価格を(リスク分を上乗せせず)設定できる

もし売主が、売却後何年にもわたって契約不適合責任を負い続けなければならないとすると、その潜在的なリスク(将来の補修費用など)を、あらかじめ売買価格に上乗せして(保険をかけるような形で)設定せざるを得ません。

しかし、これは売買価格をつり上げることになり、結果として「買主が見つかりにくい」というデメリットを生みます。

免責特約を設けることで、売主はこのような将来のリスクを価格に上乗せする必要がなくなります。

その結果、より市場の実勢に近い、あるいはリスクがない分だけ安価な価格を提示することが可能になり、早期の売却(買い手が見つかること)につながりやすくなります。

売主としては、価格を下げてでも、将来の責任を断ち切って早く確実に売却したい、と考える場合に、免責特約は有効な手段となります。

 

③売却前の詳細な調査コストを削減できる

免責特約がない場合、売主は、後から契約不適合を指摘されないよう、売却前に多額の費用と時間をかけて、専門家による徹底的な調査(例えば、不動産におけるホームインスペクションや、土地の地盤調査、土壌汚染調査など)を行う必要に迫られるかもしれません。

免責特約を設けることにより、売主は、必ずしも売却前にコストのかかる万全な調査を行う義務から解放され(もちろん、知っている不具合は告げる義務がありますが)、最低限の準備で売却プロセスを進めることができます。

これは、取引全体のコストと時間を削減し、迅速な売却を実現する上でメリットになります。

 

 

契約不適合責任を「免責」であることの買主側のデメリット

前のセクションで売主側のメリットを見てきましたが、裏を返せば、契約不適合責任の免責特約は、買主側(物を買う側)にとってデメリット(リスク)となります。

 

①購入後に不具合が見つかっても、売主に責任を追及できない

通常であれば、購入した家に雨漏りが見つかれば「直してください(追完請求)」と言え、土地に土壌汚染などが見つかれば「代金をまけてください(代金減額請求)」と言えます。

しかし、有効な免責特約(例えば「一切の責任を負わない」)が結ばれている場合、買主はこれらの権利を原則として一切行使できなくなります。

 

②予期せぬ高額な追加費用(修理費など)が発生するリスク

上記の結果として、買主は、購入代金とは別に、予期せぬ高額な追加費用(修理費、補強費、撤去費など)を負担するリスクを負うことになります。

特に不動産の場合、不具合の内容(例えば、建物の傾き、基礎の重大な欠陥、地中の埋設物など)によっては、その補修費用が数百万~数千万円にのぼることも珍しくありません。

免責特約付きの物件の場合、買主は購入時の資金計画(物件価格+諸費用)だけでなく、購入後に発生しうる「不測の修理費用」までも見越して、余裕を持った資金準備をしておく必要があります。

 

③物件の状況に関する情報が不足しがち

売主が免責特約を希望する背景には、「物件の詳細な状況を把握していない」あるいは「調査コストをかけたくない」という事情があることが多い、とご説明しました。

裏を返せば、買主にとって、その物件の正確な品質や状態に関する情報(ネガティブな情報を含む)が、売主から提供されにくい状況にあることになります。

買主は、物件の本当のリスク(どこに不具合が潜んでいるか)がよくわからないまま、購入の判断を迫られることになりかねません。

情報が不十分なまま高額な買い物の決断をしなければならないこと自体が、買主にとってデメリットと言えます。

 

 

契約不適合責任の免責特約の注意点

契約不適合責任の免責特約は、売主にとってはメリットが大きい反面、買主にとっては大きなリスクとなります。

そこで、契約当事者(売主・買主)は、それぞれの立場で、以下の点に注意する必要があります。

契約不適合責任の免責特約の注意点

 

売主側の注意点

①知っている不具合(不適合)は必ず告知すること

これが売主側にとっての最も重要な注意点です。

免責特約を結んだからといって、売主が把握している不具合を黙って売却することは許されません。

民法第572条の規定により、知りながら告げなかった事実については、たとえ完全免責特約を結んでいたとしても、その責任を免れることはできません。

もし、不具合を隠していたことが後で発覚した場合、免責特約は無効とされ、買主から修理(追完)や損害賠償を請求されることになります。

 

②免責特約の内容を契約書に明確に記載すること

単に「免責とします」という口約束をするだけではなく、「何を」「いつまで」免責するのか、あるいは「一切」免責するのか、その内容を契約書に明確な条項として記載し、売主・買主双方が署名・捺印するようにしましょう。

契約書にどのように記載するのか、悩ましいケースもあると思います。

その場合は、強引に素人判断で進めることなく、必ず仲介の不動産会社や、弁護士などの専門家に相談し、適切な契約書を作成してもらうようにしましょう。

 

③売主が宅建業者(不動産会社)の場合は、免責特約に制限があること

前述の通り、売主が宅建業者で、買主が個人の場合、宅建業法により、原則として「引渡しから2年間」の契約不適合責任を負わなければならず、これより買主に不利な免責特約は無効となります。

このルールを無視して(あるいは、知らずに)免責特約を結んでも無効となるため、注意が必要です。

 

買主側の注意点

①安い価格に安易に飛びつかないこと(リスクを認識する)

買主側にとっての最大の注意点は、「免責特約付きの場合、何らかのリスク(不具合)が潜んでいる可能性が高い」と強く認識することです。

売主が免責を希望するのには、「不具合を知らないから不安」「不具合があるかもしれないが調査費用をかけたくない」といった合理的な理由があるからです。

そして、そのリスクはすべて買主が引き受けることになる、ということです。

「相場より安い」からといって安易に飛びつくのは非常に危険です。

その「安さ」は、将来負担するかもしれない高額な修理費用と引き換えになっている可能性があることに注意しましょう。

 

②契約書・重要事項説明書を徹底的に確認すること

契約書や重要事項説明書に、免責特約に関する記載がないか、もしあるとすればその具体的な内容(何が、いつまで免責されるのか)を、一字一句確認しましょう。

仮に、不動産会社の担当者などから、「これは中古物件の一般的な契約ですから」と言われても鵜呑みにせず、納得がいくまで説明を求めるのがよいでしょう。

もし、書かれている内容の意味が難しくて理解できない、あるいは少しでも不安がある場合は、契約にサインする前に、必ずセカンドオピニオンとして弁護士や司法書士などの専門家に相談するようにしてください。

 

 

契約不適合責任の免責特約についてのQ&A

最後に、よくあるご質問についてQ&A形式でお答えします。

 

免責特約つきの物件は買わない方がいい?

一概に「買わない方がいい」とは言えません。重要なのは、リスクを理解した上で判断することです。

不動産の場合でも、免責特約がついていること自体が、「その物件が悪い」と直結するわけではありません。特に、個人の売主による中古住宅の売買では、売主の将来リスクを回避するために、免責特約が付いていることの方が、むしろ一般的です。

修理費用を万一負担するとしても買いたいと考えるケース、あるいは、専門家による調査を行って不具合がないことを確認したうえで買うケースなど、前向きに購入を検討すべきケースもありますので、取引に応じて柔軟に考えましょう。

 

免責特約がある場合、損害賠償請求はできない?

免責特約があっても、損害賠償請求などができる場合があります。

免責特約は万能ではなく、法律によってその効力が制限されるケースがあることは、ご説明のとおりです。

たとえ契約書に「一切の責任を負わない」と書かれていても、売主が不適合(欠陥)を「知りながら告げなかった」場合や、消費者契約法や宅建業法によって免責特約が無効とされる場合であれば、買主は売主に対して契約不適合責任(損害賠償請求や追完請求など)を追及できる可能性があります。

免責特約があるからと言って、すぐに諦める必要はありません。お困りの場合は、まずは弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。

 

 

まとめ

今回は、契約不適合責任の免責の基本的な意味、理由、認められるケース・認められないケース、売主・買主双方の注意点など、幅広い視点で解説しました。

契約不適合責任の免責特約は、特に中古品の売買において、売主の不安を解消し取引を円滑にするために利用されますが、買主にとっては大きなリスクを伴うものです。

また、売主が宅建業者である場合や、欠陥を知りながら告げなかった場合など、法律によって免責特約が無効になるケースもあり、決して万能なものではありません。

ぜひ、この記事が、読者の方のご理解に役立って、今後のビジネスや生活において、無用なトラブルを避けるための一助となれば幸いです。

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