景品表示法とは?弁護士がわかりやすく解説

  
監修者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家

景品表示法とは?

「景品表示法(けいひんひょうじほう)」とは、正式には「不当景品類及び不当表示防止法」という名前の法律のことです。

正式名称が長いので、略して「景品表示法」と呼ばれたり、もっと短く「景表法(けいひょうほう)」と呼ばれたりします。

この記事では、景品表示法がどのような法律なのか、その概要を弁護士がわかりやすく解説します。

景品表示法の2つの顔ーひとつの法律で2種類の規制を定めている!「不当表示規制」と「景品規制」

景品表示法は、ひとことでいうと、消費者を守るために企業の不当な活動を規制する法律です。

景品表示法によって規制される企業の活動には、2つのカテゴリがあります。

①不当表示規制と、②景品規制です。

つまり、景品表示法は、ひとつの法律で「表示」と「景品」の2つの領域を規制しているのです。

このように、景品表示法は2つの顔を持っているのです。

①不当表示規制とは

不当表示規制とは、「不当な表示」を禁止するルールです。

「表示」とは、「消費者に対して商品を売るための広告など」のことです(あとで詳しく説明します)。

つまり、テレビCM、インターネット通販の商品紹介ページ、新聞の折り込みチラシ、街角の看板、電車内の吊り広告など、一般消費者に対して商品を売るための広告はすべて「表示」にあたります。

企業が消費者向けに不当な表示(つまり誤解を招くような広告や虚偽の広告など)を出すと、消費者はその広告を見て正しくない情報を信じてしまい、必要のない商品を買ってしまうかもしれません。

そこで、景品表示法の「不当表示規制」によって、このような不当な表示が禁止されています。

 

②景品規制とは

景品規制とは、「過大な景品」を禁止するルールです。

「景品」とは、「商品を売るために、消費者に対して商品に付随してモノやサービスを与えること」です(あとで詳しく説明します)。

例えば、「ご来店者全員にキーホルダーをプレゼント」とか、「お買い上げいただいた方の中から抽選でハワイ旅行をプレゼント」というものが「景品」にあたります。

もし企業が、度を越えて価値の大きい豪華な景品を消費者(=お客さん)あげることにした場合、消費者は、景品ほしさのために必要のない商品を買ってしまうかもしれません。

景品表示法の景品規制は、このような過大な景品を禁止するルールです。

 

-ワンポイント-
不当表示規制と景品規制はなぜひとつの法律の中にまとめられているの?

上記で解説しましたように、景品表示法は、「不当表示規制」と「景品規制」の2つの規制を定めています。

つまり、対象の異なる2種類の規制がひとつの法律によって定められているのです。

法律になじみのない方にとっては、このように2つの異なる規制がひとつの法律に定められていることが不思議に感じられるかもしれません。

このようなことが起きているのは、じつは、「不当表示規制」も「景品規制」も、消費者を守るという同じ目的のための規制だからです。

消費者は、本来、自分自身の自由な意思によって、自主的に、そして合理的に、どのような物を買うか、あるいは買わないかを決めることができます。

しかし、企業の不当な活動によって、消費者自身が知らないうちに、その自由な意思が影響を受けることがあります。

例えば、Aさんという人が、カメラの性能の優れたスマホを買いたいと考えてお店に行ったとします。

そのお店の店内に「このスマホは最高級のカメラを搭載!」というポップ広告が貼ってあった場合、Aさんはそのスマホを買いたくなるでしょう。

しかし、じつはそのスマホのカメラは最高級のものではなく、標準的な性能しか持たないものであったらどうでしょうか。

つまり、お店の広告(=「表示」)に嘘があったのです。

このような場合、Aさんは、「カメラの性能の優れたスマホを買いたい」と思っていたにもかかわらず、標準的なカメラ性能のスマホを買うことになってしまいます。

これでは、消費者が自主的な意思で本当に欲しいものを買えていないことになります。

そこで、消費者を守るため、「不当表示規制」によってそのような広告(「表示」)を規制しなければなりません。

また、そのお店で「カメラ性能の低い旧型スマホを買った人の中から抽選で1名様に1億円をプレゼント」というキャンペーンがされていた場合はどうでしょうか。

Aさんは、1億円というあまりに大きい「景品」につられて、本来はほしくなかったカメラ性能の低いスマホを買ってしまうかもしれません。

このような場合も、Aさんは本当は「カメラの性能の優れたスマホを買いたい」と思っていたにもかかわらず、標準的なカメラ性能のスマホを買うことになってしまいます。

つまり、消費者の自主的な決定が悪影響を受けています。

そこで、消費者を守るために、「景品規制」によってそのような過大な(=度を越えて大きい)「景品」を規制しなければなりません。

このように考えると、「不当表示規制」も「景品規制」も、消費者が企業の不当な活動に惑わされることなく、自主的に合理的に選択した買いたいと思ったものを、きちんと買えるようにするための法規制であることがわかります。

つまり、「不当表示規制」も「景品規制」も、消費者の自主的で合理的な選択を守るという、究極的には同じ目的を持った規制なのです

このような理由で、「不当表示規制」と「景品規制」は、景品表示法というひとつの法律にまとめられているのです。

 

まとめ

区分 不当表示規制 景品規制
目的 消費者を守る
内容 広告(「表示」)を規制 過大な景品を規制

それでは以下、詳しく解説しましょう。

 

 

景品表示法の「不当表示規制」とは?

まず、景品表示法のひとつめの顔である「不当表示規制」について、概要を解説いたします。(「景品規制」についてはこの記事の後の部分で解説いたします。)

景品表示法の「不当表示規制」は、企業が「不当な表示(不当表示)」を行うことを禁止するルールです。

もし企業がこのルールに違反して「不当表示」を行ってしまったときは、その企業は、処分を受けることがあります。

景品表示法の「不当表示規制」を理解するには、次の2つのステップで考えるのがよいでしょう。

「表示」とは何か
「表示」の中でも「不当表示」になるものは何か

 

まず、Step 1として、「表示」とは何かを考えます。

次に、「表示」にあてはまるものの中でも、「不当表示」になるものとならないものがあります。

Step 2として、「表示」のうち、どんなものが「不当表示」にあたるかを考えます。

この図のとおり、景品表示法の「不当表示規制」は、「表示」の中でも「不当表示」にあてはまるものを禁止するルールということになります。

Step 1「表示」とは何か

景品表示法における「表示」とは、次のような性質をすべて満たすものをいいます[※1]。

  • 企業がお客さんを呼び込むために行う
  • 自社の商品・サービスの内容や値段などに関する
  • 広告など

※1  景品表示法第2条第4項の規定をもとにわかりやすい言葉に改めたものです。「表示」の正確な定義を調べたい場合は、景品表示法第2条第4項をご確認ください。

引用元:景品表示法|e−GOV法令検索

具体的にどのようなものが「表示」にあたるかなど、より詳しい説明はこちらにまとめています。ぜひ参考になさってください。

Step 2「不当表示」とは何か

景品表示法における「不当表示」とは、「表示」の中でも、
①「優良誤認表示」にあたるもの、または
②「有利誤認表示」にあたるもの、
のいずれかをいいます[※2]。

つまり、Step 2では、企業が行っている「表示」が、「優良誤認表示」か「有利誤認表示」のどちらかに該当するかどうかをチェックすることになります。

※2 不当表示の代表的なものは「優良誤認」と「有利誤認」の2つですが、じつはこの2つ以外の不当表示もあります。下記の「ワンポイント」をご参照ください。

①優良誤認表示

①の「優良誤認表示」とは、商品やサービスの性能や性質に関する表示(≒広告)で、その表示(≒広告)の中に表されているその商品・サービスのクオリティが、その商品・サービスの本当のクオリティよりも非常に優れたものであるように見えるため、消費者がその商品・サービスの品質がよいものだと誤解するようなものをいいます[※3]。

※3 景品表示法第5条第1号の規定をもとに、わかりやすさを優先して表現を改めています。正確な要件は景品表示法第5条第1号をご確認ください。

引用元:景品表示法|e−GOV法令検索

少しわかりにくいので、具体例で説明します。

例えば、英会話教室を運営するA社という企業があったとします。

A社は、お客さんを獲得するため、インターネットのウェブサイトに「当社の英会話教室の生徒の80%は3か月でTOEIC700点を突破!」のような表示をしました。

ところが、実際には、その英会話教室の生徒で3か月以内にTOEIC700点を突破した人は50%しかいなかったとしたらどうでしょうか。

A社の「生徒の80%が3か月以内にTOEIC700突破」という表示は、英会話教室の実際のクオリティ(3か月以内でのTOEIC700突破は50%)よりもかなりよいクオリティであるかのような表示になっています。

このようなインターネットページをみた消費者は、A社の英会話教室がとても優れたものであると誤解して、英会話教室に申し込んでしまうかもしれません。

「優良誤認表示」とは、このように、商品・サービスの本当のクオリティよりも高く見せるような表示のことをいいます。

「優良誤認表示」は「不当表示」のひとつですから、企業が「優良誤認表示」を行うことは、景品表示法の「不当表示規制」のルールで禁止されています。

「優良誤認」のより詳しい説明や具体例はこちらの記事にまとめています。ぜひご参考になさってください。

合わせて読みたい
優良誤認表示について

 

②有利誤認表示

②の「有利誤認表示」とは、商品やサービスの性能や性質に関する表示(≒広告)で、その表示(≒広告)の中に表されている値段、割引の内容、配送日など、消費者がその商品・サービスを買うときの条件が、本当の条件よりも非常に有利なものであるように見えるため、消費者がその商品・サービスの品質がよいものだと誤解するようなものをいいます[※4]。

※4 景品表示法第5条第2号の規定をもとに、わかりやすさを優先して表現を改めています。正確な要件は景品表示法第5条第2号をご確認ください。

引用元:景品表示法|e−GOV法令検索

こちらも少し難しいので、具体例を見てみましょう。

先ほどと同様に、英会話教室を運営しているA社という企業があったとしましょう。

A社は、お客さんを獲得するため、インターネットのウェブサイトに「今月中に英会話教室に申し込んだ人だけ、通常2万円の入会金を50%オフ!」という表示をしました。

しかし、実際には、A社の英会話教室の入会金は、申し込みの時期に関係なくいつでも1万円だったとしたらどうでしょうか。

A社の「今月中に英会話教室に申し込んだ人だけ、通常2万円の入会金を50%オフ!」という表示は、消費者がA社の英会話教室というサービスを買う際の条件に関する表示だといえます。

そして、A社の表示は、消費者にとってみれば、今月中に申し込めば2万円の入会金が50%オフで1万円になって得する(=有利になる)ように読めますので、この表示を見た消費者は、A社の英会話教室に申し込んでしまうかもしれません。

「有利誤認表示」とは、このように、消費者が物やサービスを購入する際の条件が、実際の条件よりもとても有利なように見える表示のことをいいます。

「有利誤認表示」も「不当表示」のひとつです。

したがって、企業が「有利誤認表示」を行うことは、景品表示法の「不当表示規制」のルールによって禁止されています。

「有利誤認表示」の具体例やさらに詳しい説明は、こちらの記事にあります。ぜひご一読ください。

合わせて読みたい
有利誤認表示について

 

-ワンポイント-
優良誤認表示と有利誤認表示以外の不当表示

上記で解説しましたように、「不当表示」には、大きくわけて「優良誤認表示」と「有利誤認表示」があります。

「優良誤認表示」と「有利誤認表示」は、業種や商品・サービスの種類に関係なく、一律に禁止されています。

つまり、消費者を相手にビジネスをする企業は、売っている商品や提供しているサービスがどんな種類のものであるかに関係なく、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」をすることが一律に禁止されているのです。

しかし、景品表示法の「不当表示」のルールは、これだけではありません。

じつは、景品表示法には、ある特定の業種や商品だけを対象とする特別なルールも定められています。

例えば、次のようなものです(一部の例をご紹介します)。

  • 清涼飲料水(いわゆるソフトドリンク)に関する不当表示を禁止するルール
  • 商品の原産国の表示に関する特別ルール
  • おとり広告を禁止するルール
  • 有料老人ホームに関する不当表示を禁止するルール など

もし、あなたの会社がこのような特別ルールの対象にもなる場合は、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」だけでなく、これらの特別ルールで禁止される表示をすることのないように留意しなければなりません。

詳しい情報はこちらの記事にまとめましたので、よろしければご覧ください。

 

まとめ

優良誤認表示 商品・サービスの本当のクオリティよりも高く見せる表示
有利誤認表示 本当の条件よりも非常に有利なものに見せる表示
上記以外 特別ルールが適用される場合がある

具体的にどのような広告が上記に該当するかは判断が難しい場合があります。

景表法に詳しい弁護士であれば、助言をしてくれると思われますので、まずは相談されて見られると良いでしょう。

 

 

景品規制とは?

次に、景品表示法のふたつめの顔である「景品規制」について解説いたします。

景品表示法の「景品規制」は、企業に対して「過大な景品」を禁止するルールです。

「過大」とは、多すぎることです。

景品表示法の「景品規制」は、企業が消費者に対して景品を渡す際の上限値を定めています。

たとえば、「このような場合は、企業が消費者に渡してよい景品の上限値は〇〇円である」というような形のルールになっています。

企業は、お客さん対し、景品表示法の定める上限値を超えた「景品」を渡してはいけません。

「景品」の価値が上限値を超えてしまった場合には、「過大な景品」ということになって、景品表示法の「景品規制」の違反となります。

「景品規制」に違反した企業は、処分を受けることがあります。

景品表示法の「景品規制」についても、次の2つのステップで考えるのがよいでしょう。

「景品」とは何か
「景品」の上限値はいくらか

 

Step 1「景品」とは何か

では、景品表示法の「景品規制」の対象となる「景品」とはどのようなものでしょうか。

「景品」(※5)とは、おおまかにいえば、次の要件のすべてにあてはまるものをいいます(※6)。

  • 企業がお客さんを引き寄せるために
  • 自社が売る商品やサービスに付随して
  • 消費者に提供するモノ、お金、サービスなど何らかの価値のあるもの

※5 景品表示法の正しい用語では「景品類」といいます(景品表示法第2条第3項)。この記事では、わかりやすさを優先して「景品」という言葉を使って解説しています。

※6 景品表示法第2条第3項の規定をもとに、一部を割愛したうえでわかりやすい言葉に改めたものです。「景品類」の正確な定義は、景品表示法第2条第3項をご確認ください。

引用元:景品表示法|e−GOV法令検索

具体例
「景品」の具体例を考えてみましょう。家電販売店を営んでいるA社は、夏のエアコン商戦に向けて、キャンペーンをすることにしました。いろいろとキャンペーンのアイデアを考えた結果、エアコン2台をまとめて買ってくれたお客さんに、お米2キロをプレゼントすることにしました。


この「お米2キロをプレゼント」は、景品表示法の「景品規制」における「景品」にあたります。

なぜならば、

  • 企業がお客さんを引き寄せるために → A社がエアコン商戦でお客さんにきてもらうために
  • 自社が売る商品やサービスの販売に付随して → 自社が売るエアコンという商品の販売に付随して
  • 何らかの価値のあるもの → お米2キロは価値がある

このように、「景品」の要件にすべてあてはまっているからです。

「景品」に関するより詳しい解説や具体例は、こちらの記事にまとめました。ぜひご覧になってください。

合わせて読みたい
景品規制への違反とは

 

Step 2「景品」の上限値はいくら?

次に、景品表示法の「景品規制」で定められている「景品」の上限値を見てみましょう。

「景品」の上限値は、企業が「景品」をどのような方式でお客さんに渡すかによって異なります。

景品表示法では、大きくわけて次の2種類の方式が定められています。

① 懸賞(けんしょう)
② 総付景品(そうづけけいひん)

①懸賞

①の「懸賞」とは、誰にどのような景品を渡すかを決めるにあたり、

  • くじなどのように偶然性を利用したり、
  • 「じゃんけんで勝ち抜いた人」のように優劣で決めたり、
  • 「この問題に正解した方」のように正誤で決めたり

する方法のことです。

例えば、「ご来店者の中から抽選で1名の方にハワイ旅行をプレゼント」とか、「エアコンを購入の方先着10名様に記念品をプレゼント」のようなものです。

景品をお客さんに対して「懸賞」の方法でわたす場合、その景品の上限値は、次のとおりとなっています(※7)。

取引価額(企業が売る商品の金額など) 景品類限度額(景品の上限値)
最高額(景品1個の上限値) 総額(景品全部をあわせた総額の上限値)
1円~4999円(5000円未満) 取引価額(企業が売る商品の金額)の20倍 懸賞をすることによって生じる売上予定額の2%
5000円以上 10万円

※7 より正確には、「懸賞」には「一般懸賞」と「共同懸賞」の2種類があります。ここでは、「一般懸賞」の金額を示しています。

企業がお客さんに対して「懸賞」の方法で景品を渡す場合には、その景品の価値は、上記の表の上限値の範囲内でなければなりません。

具体例
たとえば、ある家電量販店(B電器)が、1台5万円のエアコンを対象として「エアコンをお買い上げのお客様の中から抽選で1名様に20万円分の旅行券をプレゼント」するキャンペーンを計画したとしましょう。


まず、このキャンペーンの「景品」は、20万円の旅行券です。

そして、このキャンペーンは「抽選1名様」へのプレゼントですから、景品をわたすお客さんを選ぶために「偶然性を利用」しています。したがって「懸賞」にあたります

このキャンペーンでお店と客が取引する商品は1台5万円のエアコンですから、上記の表でいえば、取引価額(商品の金額)が「5000円以上」の枠になります。

上記の表の「5000円以上」の枠をみますと、景品1個の上限値は10万円となっています。

つまり、このキャンペーンでは1個あたり10万円を超える「景品」を渡してはいけない、ということです。

したがって、B電器が20万円の旅行券を「景品」とすることは、「景品規制」の上限値を超えた、違法な景品であるということになります。(※8)

※8 表にありますように、景品1個あたりの価値だけでなく、景品全体の総額についても上限値の範囲内である必要があります。

「懸賞」に関してより詳しい説明はこちらの記事にまとめています。ぜひご参考になさってください。

合わせて読みたい
懸賞について

②総付(そうづけ)景品

②の「総付(そうづけ)景品」とは、懸賞の方式を使わないでお客さんに景品を渡すことをいいます。

「懸賞の方式を使わない」ということは、つまり、すべてのお客さんにもれなく同じ景品をわたすということになります。

そのため、「総付景品」は、「ベタ付け景品」と呼ばれることもあります。

景品をお客さんに対して「総付景品」の方法でわたす場合、その景品の上限値は、次のとおりとなっています。

取引価額(企業が売る商品の金額など) 景品類の最高額(景品1個の上限値)
1円~999円(1000円未満) 200円
1000円以上 取引価額(商品の金額)の20%

したがって、企業がお客さんに対して「総付け景品」の方法で景品を渡す場合には、「景品」の価値は、上記の表の上限値の範囲内に収まるようにする必要があります。

具体例

たとえば、C亭というレストランが1食500円のワンコインランチを提供しているとしましょう。

C亭は、ランチを食べに来てくれた人全員にポケットティッシュを配っていたとします。

ポケットティッシュの価値は、1個30円です。


この場合、「景品」はポケットティッシュです。

C亭は、「懸賞」の方法を使わず、お店にランチを食べに来てくれた人全員にポケットティッシュを配っていますから、「総付景品」の方法で景品を配っています。

したがって、C亭が配る「景品」は、上記の表の上限値の範囲内でなければなりません。

C亭が売っているワンコインランチの金額は500円ですから、上記の表の取引価額は「1円~999円(1000円未満)」の枠になります。

そうすると、C亭が総付景品として配ってよい景品の金額は、1個あたり200円が上限値です。

C亭が配っているのは1個30円のポケットティッシュですから、200円の上限値の範囲内に収まっています。

したがって、C亭がお客さんにポケットティッシュを配っているのは、景品表示法の「景品規制」に違反しておらず、合法であるといえます。

「総付景品」に関してより詳しい説明はこちらの記事にまとめています。ぜひご参考になさってください。

合わせて読みたい
総付景品について

 

 

景品表示法の2つの顔についてのまとめ!消費者向けビジネスをする場合には気を付けよう!

これまで解説してきましたように、景品表示法という法律は、1個の法律の中で「不当表示規制」と「景品規制」という、異なる2つの顔(法規制)を定めている法律だといえます。

不当表示規制 企業による「不当な表示」を禁止するルール
景品規制 企業による「過大な景品」を禁止するルール

景品表示法という同じ法律に含まれているにもかかわらず、「不当表示規制」と「景品規制」とは、その対象や内容がまったく異なっていますので注意が必要です。

「不当表示規制」は、消費者向けのビジネスをしている企業にとって普段から常に意識すべき問題です。

「不当表示規制」の対象となる「表示」はとても範囲の広い言葉であり、店頭でのPOP広告やインターネットでの商品の紹介などもすべて「表示」にあたるからです。

そのため、消費者向けのビジネスをしている企業は常に「不当表示規制」のことを考慮しなければならないのです。

「景品規制」も消費者向けのビジネスをしている企業にとって重要な規制ですが、必ずしも常に注意が必要なわけではなく、企業がキャンペーンを行うなど「景品」をお客さんに渡す場合にだけ気を付ければよいといえます。

とはいえ、いざキャンペーンを行おうとする場合に、「景品規制」のことをうっかり忘れてしまいがちです。

うっかりして「過大な景品」を提供してしまっても法令違反になりますから、やはり「景品規制」も軽視できません

「不当表示規制」や「景品規制」は複雑な制度ですから、不安なことがある場合には、景品表示法に強い弁護士に早めに相談することもお勧めです。

景品表示法に違反するとどうなる?

企業が景品表示法に違反してしまった場合、その企業は、行政による処分や刑事罰などを受けることがあります。

景品表示法に違反した企業が受ける可能性のある処分や罰則は、おもに次の3種類です。

① 措置命令(景品表示法7条1項)
② 課徴金納付命令(景品表示法8条1項)
③ 刑事罰(景品表示法36条など)

①「措置命令」

①の「措置命令」とは、消費者庁や都道府県などの行政庁が、景品表示法に違反した企業に対し、「景品表示法に違反する行為をやめよ」という差止めの命令や、「これ以上景品表示法に違反しないようにするためこういうことをせよ」という命令を出すことです。

措置命令は、「不当表示規制」に違反した場合も「景品規制」に違反した場合も、どちらの場合でも課されることがあります。

措置命令を受けた企業の名前は、消費者庁のウェブサイトで、違反の内容とともに公表されます。

参考:景品表示法関連報道発表資料|消費者庁

②「課徴金納付命令」

②の「課徴金納付命令」とは、内閣総理大臣が、景品表示法に違反した企業に対し、「景品表示法違反によってもうけた利益の一部を国に納めよ」という命令を出すことです。

企業が不当な行為によってもうけた利益を国が取り上げるというイメージです。

課徴金納付命令は、「不当表示規制」の違反だけが対象です。

「景品規制」の違反には、課徴金納付命令が課されることはありません。

③「刑事罰」

③の「刑事罰」とは、犯罪として処罰されることをいいます。

①の「措置命令」や②の「課徴金納付命令」は、行政庁による処分であり、正式な刑事裁判が開かれることもなく、犯罪までにはなりません。

これに対し、「刑事罰」は、検事によって起訴され、刑事裁判を経て、裁判所が有罪判決を下せば、犯罪として処罰されるものです。

景品表示法では、景品表示法に違反した企業が①の「措置命令」や②の「課徴金納付命令」にしたがわなかった場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金という刑事罰を受けることがあります(景品表示法36条)。

 

景表法違反の場合のまとめ

措置命令 違反行為を行わないことなどの命令
課徴金納付命令 もうけた金銭の一部を徴収
刑事罰 犯罪の処罰:2年以下の懲役または300万円以下の罰金

このように、企業が景品表示法に違反することによってもたらされる不利益は大きいといえます。

普段から、自社が行う広告(=「表示」)や、お客さんに配る「景品」について、景品表示法に違反していないか気を付けておきましょう。

特に、キャンペーンやセールを行うときは要注意です。

キャンペーンやセールの企画をつくるときは、景品表示法の規制に違反しないように最新の注意を払いましょう。

もし心配なときは、景品表示法に詳しい弁護士のアドバイスを求めることも有効です。

景品表示法の違反については、こちらの記事にも詳しい解説があります。ぜひご覧になってください。

 

 

景品表示法違反の事例

近年、企業が景品表示法に違反して措置命令を受ける例が増えています。

中には、マスメディアで大きく報道され、社会の注目を集めた事案もありました。

不当表示規制への違反

不当表示規制への違反は、毎年数多く発生しています。

2019年(令和元年)には、不当表示規制への違反によって措置命令を受けた企業の数は40に上りました(※9)。

※9 消費者庁「景品表示法に基づく法的措置件数の推移及び措置事件の概要の公表(令和3年1月31日現在)」による

これまでに措置命令を受けた企業の中には、有名な大企業もありますし、中小企業や個人事業主も含まれています。

不当表示規制への違反事例はこちらの記事に詳しくまとめました。ぜひご参考になさってください。

 

景品規制への違反

景品規制への違反によって企業が措置命令などを受けた事例は、現在のところそれほど多くありません。

しかし、2012年には、いわゆる「コンプガチャ」が景品規制に違反すると判断され、社会的に大きな話題になりました。(コンプガチャは全面禁止となりました。)

このように、景品表示法違反(特に不当表示規制の違反)で措置命令を受けることは、珍しいことではありません。

上記のとおり、2019年には40社(平均すると1か月あたり3社以上)が措置命令を受けています。

消費者を相手とするビジネスを行っている企業は、もういちど自社の広告や景品のあり方が景品表示法に違反していないか、点検してみることもよいでしょう。

不明なことがあれば、景品表示法に詳しい弁護士に相談することもよい方法です。

 

 

景品表示法のまとめ

  • 景品表示法は、2つの異なる規制を定めているー「不当表示規制」と「景品規制」
  • どちらも、消費者を対象にビジネスをする企業にはとても重要なルール
  • 「不当表示規制」は、「表示(≒広告)」を対象とした規制。企業による「不当な表示」は禁止
  • 「不当な表示」には、大きくわけて「優良誤認表示」と「有利誤認表示」がある
  • 「景品規制」は、「景品」を対象とした規制。企業による「過大な景品」は禁止
  • 景品の価値が、景品表示法が定める上限値を超えている場合は違反。上限値は「懸賞」か「総付景品」かによって変わる
  • 景品表示法に違反した場合には行政による処分や刑事罰がある。違反した企業名の公表もある
  • 景品表示法違反の事例(特に表示規制違反)は多く発生している。措置命令を受けた会社も多い
  • 不安なことやわからないことは景品表示法に詳しい弁護士のアドバイスも有効

以上、景品表示法について解説しました。

企業のみなさまのお役に立てますと幸いです。

 

 

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