契約とは?契約の種類・成立条件とその影響をわかりやすく

監修者:弁護士 西村裕一
弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

契約とは

契約とは、「当事者同士の意思表示が合致することによって成立する、法的拘束力を伴う約束」のことです。

契約が成立すると当事者の間には、「権利(債権)」と「義務(債務)」が発生し、もし一方がその義務を果たさない(債務不履行)場合、他方は裁判所を通じて強制執行を行ったり、損害賠償を請求したりすることができます。

民法には「契約自由の原則」があり、内容や方式は基本的に自由ですが、公序良俗に反するものや一部の要式契約には例外があります。

そこで、この記事では、契約の意味や契約に関する民法の原則、契約の成立条件、契約が成立する効果、民法上の契約の種類などについて、弁護士がわかりやすく解説していきます。

契約とは?

契約の意味

契約については、「相対立する2つ以上の意思表示の合致により成立する法律行為」と定義されます。

これを、もう少し嚙み砕いて説明すると、「当事者同士の意思表示が一致することによって成立する、法的拘束力を伴う約束」と言うことができます。

契約は、「申込み」と「承諾」の内容が一致した場合に成立します。

たとえば、「これを売ります」という申込みと、「それを買います」という承諾が行われた瞬間に、契約が成立することになります。

契約が「単なる約束」と異なる点は、そこに法的拘束力が生じることです。

契約が成立すると、当事者にはそれぞれ「権利」と「義務」が発生します。

もし一方がその義務を果たさない(債務不履行)場合、他方は裁判所を通じて強制執行を行ったり、損害賠償を請求したりすることが可能になります。

 

契約を簡単に

契約とは、「当事者同士の意思表示が合致することによって成立する、法的拘束力を伴う約束」です。

身近な契約の例として、コンビニでの買い物を挙げることができます。

  • あなた:「このおにぎりをください(買いたいという意思表示)」
  • 店員さん:「ありがとうございます(売りたいという意思表示の合致)」

レジでお金を払って商品を受け取るとき、実はあなたとお店の間には、法的に「売買契約」が成立しています。

このような「契約」は、ただの「約束」とは異なります。

たとえば、あなたが友達と「明日、一緒に遊びに行くという約束」をしたとします。

もし当日、友達が来なかったとしても、悲しい気持ちにはなりますが、「約束破りだ。裁判所に訴えてやる。損害賠償を支払え!」と言うことはできません。

このような約束については、約束として守られるべきではありますが、何らかの法的な責任を追及することはできません。

これは、あなたが受けた損害が小さいからではありません。

どんなに些細な損害(精神的損害も含めて)であっても、損害であることには変わりありません。

むしろ、単なる約束に法的拘束力が認められないのは、裁判所や国家権力が当事者の間に入って判断すべき事柄ではないと考えられているからです。

これに対して、「契約」とは、「もし守らなかったら、法律の力を使ってでも解決しますよ」という、法的拘束力を伴う約束のことを指します。

私たちは、電車に乗る(旅客運送契約)、スマホを使う(通信契約)、友達からプレゼントをもらう(贈与契約)など、意識しないうちにさまざまな「契約」を結び、社会生活を営んでいます。

 

契約を英語で言うと

国際的なビジネスや英文契約書において、契約は主に以下の単語で表現されます。

 

Contract(コントラクト)

「Contract(コントラクト)」は、もっとも一般的な語で、法的な拘束力を持つ合意を指します。

ビジネスにおける「売買契約書」や「雇用契約書」などはすべてこれに当たります。

 

Agreement(アグリーメント)

次に、「Agreement(アグリーメント)」は、広い意味での「合意」や「合致」を指します。

Contractよりも広い概念であり、法的な拘束力がない「合意」を含むこともありますが、実務上の契約書タイトル(例:Sales Agreement)としても頻繁に使われます。

 

Covenant(カバナント)

そして、「Covenant(カバナント)」は、契約条項の中の「誓約事項」を指します。

特に金融取引や不動産取引において、特定の行為を「する」または「しない」ことを約束する際に用いられる、より厳格なニュアンスの言葉です。

日本の民法上の「契約」を英語で説明する場合には、基本的には「Contract」を用いるのが適切でしょう。

 

 

契約に関する民法の原則

契約自由の原則

契約自由の原則とは、「契約の内容や方法を当事者が自由に決められる」という原則のことを指します。

これには大きく分けて、後述のとおり「締結の自由」や「相手方選択の自由」、「内容決定の自由」、「方式の自由」の4つが含まれます。

民法第521条第1項では「何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる」と定められており、誰からも契約を強制されない権利が保障されています。

そして、同条第2項では、「契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる」とあります。

そのため、契約自由の原則には、法令の制限によって、例外が存在しています。

 

相手方選択の自由

「相手方選択の自由」とは、自らが契約を結ぶ相手を、自分の意思で自由に選べるという権利です。

特定の企業や個人と取引を強制されることはなく、信頼できるパートナーを主体的に判断して選ぶことができます。

ビジネスにおいては、与信管理(相手の支払い能力などの調査)を行った上で、どの企業と取引を開始するかを自由に決定できるのがこの原則の具体例です。

しかし、電気・ガス・水道といった公共性の高いインフラ事業や、タクシーなどの公共交通機関は、正当な理由なくサービスの提供(契約)を拒否することができない「応諾義務」を負っているケースがあります。

また、現代社会においては、不当な差別に基づく契約拒絶も制限の対象となり得ます。

 

内容決定の自由

「内容決定の自由」とは、契約の具体的な条件(価格、納期、品質、支払い方法など)を、当事者間の合意によって自由に決定できることを指します。

これにより、画一的なルールに縛られず、個別の取引実態に合わせた柔軟なビジネススキームを構築することが可能となっています。

ただし、この自由の範囲は「法令の制限内」に限られます。

たとえば、社会一般の道徳に反する「公序良俗(民法90条)」に抵触する契約や、犯罪に該当・助長するような内容は認められません。

また、利息制限法を超える高い金利の設定や、下請法に抵触する不当な買いたたきなどは、法律により禁止されています。

さらに、一方的に消費者の利益を害するような不当な免責条項などは、消費者契約法によって無効とされることがあります。

 

方式の自由

「方式の自由」とは、契約の成立にあたって、書面や押印といった特定の形式を整える必要はないという原則です。

民法第522条第2項には、「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」と規定されています。

つまり、法律上は「口頭(口約束)」だけであっても、お互いの意思が合致すれば有効な契約として成立します。

日常の買い物で契約書を交わさないのは、この原則があるからです。

ただし、例外的に「方式の自由」が認められない契約も存在します。

例えば、保証契約や定期借地権設定契約などは、書面(または電磁的記録)で行わなければ効力が生じないと法律で定められています。

契約の形式が自由であるからこそ、後々ご自身が不利な立場に陥らないようにするために、あえて契約書面を作成しておくことをおすすめします。

 

 

契約の成立条件

当事者が取り交わした契約が法的拘束力を持つためには、「契約が成立していること(成立要件)」「成立した契約が有効であること(有効要件)」の2つを満たしている必要があります。

以下では、それぞれについて詳しく解説していきます。

 

契約の成立要件

契約の成立要件とは、契約が法的に有効に成立するために必要となる条件のことです。

民法第522条第1項は、「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する」と規定しています。

したがって、契約は「申込み」と「承諾」という2つの意思表示が合致した瞬間に成立します。

  • 申込み: 「この商品を10万円で売りたい」というように、契約の内容を示して締結を求める意思表示です。
  • 承諾: 申込みに対して「その内容で買います」と同意する意思表示です。

また、前述した「方式の自由」により、原則として書面は不要であり、口頭での合意だけでも成立要件を満たします。

ただし、実務上は「申込みの内容」が不明確な場合、それは申込みではなく、単に相手を誘うだけの「申込みの誘引」とみなされ、契約が成立していないと判断されるリスクがあります。

そのため、「いつ・誰が・どのような条件」で合意したかを証明するために契約書を作成することが重要です。

 

契約の有効要件

たとえ「申込み」と「承諾」が合致して契約が成立したとしても、その内容やプロセスに問題があれば、契約は無効(最初からなかったことになる)や、取り消し(後からなかったことにできる)の対象となります。

これを有効要件と呼び、大きく「契約の客体に関する有効要件(内容の妥当性)」と「契約の主体に関する有効要件(当事者の能力・意思)」に分けて考えることができます。

 

契約の客体に関する有効要件(内容の妥当性)

まず、「契約の客体に関する有効要件(内容の妥当性)」として、以下の4つの要件を満たす必要があります。

契約の客体に関する有効要件

まず、「確定性」とは、権利・義務の内容が明確であることを指します。

たとえば、パソコンを売買する契約の場合、パソコンの種類や型番、個数、値段などが不明確である場合、そのような売買契約は確定性を欠くことから無効となる可能性があります。

次に、「実現可能性」とは、契約内容が契約締結時に物理的・法律的に実行可能であることを指します。

たとえば、契約をした時点ですでに存在しないものを売買したり、「100年先(前)の未来(過去)に連れて行く」など物理的に不可能な約束をした場合には、契約自体が無効となります。

また、「適法性」とは、「強行規定(きょうこうきてい)」に違反しないことを指します。

強行規定とは、公の秩序に関わる法律の規定で、当事者の意思(合意や特約)にかかわらず強制的に適用されるルールのことです。

具体的には、労働基準法の最低労働条件や差別禁止、利息制限法の上限金利、消費者契約法の事業者の一方的な責任免除条項などがあり、これに反する合意をしたとしても無効となります。

さらに、「社会的妥当性」とは、契約の内容が、公の秩序又は善良の風俗(公序良俗)に反しないことを指します。

たとえば、犯罪の請負や倫理に反する愛人契約など、社会のルールに反する内容は民法90条により無効となります。

 

契約の主体に関する有効要件(当事者の能力・意思)

契約の主体である「当事者の意思能力・行為能力が制限されている場合」や、「意思表示に瑕疵がある場合」には、契約が無効・取り消しになる可能性があります。

 

意思能力・行為能力が制限されている場合

意思能力がない状態でなされた法律行為(契約)は、無効となります(民法第3条の2)。

そのため、泥酔者や乳幼児、重度の精神障害者などが行った契約は無効です。

また、未成年者などの「制限行為能力者」が単独で行った契約は、後から取り消すことができます。

 

意思表示に瑕疵(かし)がある場合

内心と異なる意思表示を自覚的にした場合(心裡留保)で相手方に悪意または有過失があるときや、相手方と共謀して内心と異なる意思表示をした場合(虚偽表示)には、その意思表示は無効となります。

また、内心と異なる意思表示を本人が自覚していない場合(錯誤)で、それが重大な事項であるときや、詐欺または強迫による意思表示については取り消すことができます。

 

 

契約が成立したらどうなる?

契約が成立したらどうなる?

 

権利と義務が発生する

契約が成立すると、当事者間に「債権」と「債務」が発生することになります。

「債権」とは相手に特定の行為を請求できる権利のことを指します。

これに対して、「債務」とは、相手のために特定の行為をすべき義務を指します。

例えば、売買契約では売主が「代金を受け取る権利(債権)」と「商品を引き渡す義務(債務)」を負い、買主はその逆の立場になります。

このように双方が対価的な義務を負うものを「双務契約」と呼びます。

一方、贈与契約のように一方のみが義務を負う契約を「片務契約」と呼びます。

 

債務不履行があると賠償請求や契約解除される

契約当事者が契約上の義務を果たさない場合、このような状態を「債務不履行」と呼びます。

債務不履行には、期限に遅れる「履行遅滞」、物理的・法的に履行ができなくなる「履行不能」、相手が明確に拒む「履行拒絶」などの種類があります。

債務不履行が発生した場合、被害を受けた側は相手に対して、不履行によって生じた損害の賠償を請求できます。

また、相当な期間を定めて催告(督促)しても履行されない場合や、そもそも履行が不可能な場合には、契約自体を「解除」して白紙に戻すことが可能です。

解除すれば、すでに支払った代金の返還などを求める「原状回復義務」が生じます。

これらは、契約の拘束力を実効的なものにするための強力な法的手段です。

 

契約不適合責任について

「契約不適合責任」とは、引き渡された目的物の「種類」、「品質」、「数量」が契約内容と一致しない場合に、売主や請負人が負う責任です。

以前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、2020年の民法改正により、「契約不適合責任」という呼び名に改められました。

不適合があった場合、買主は主に4つの請求ができます。

まずは、修理や不足分の引き渡しを求める「履行の追完請求」です。

これに応じない場合は「代金減額請求」が可能となります。

さらに、これらと並行して「損害賠償請求」や「契約の解除」を行うことも認められています。

ビジネスにおいては、どの程度の不適合まで責任を負うか、または制限するかを契約書で明確に定めておくことが、将来の紛争を予防する鍵となります。

 

 

民法上の契約の種類

契約の一覧表

民法では、社会生活において頻繁に利用される典型的な契約パターンを13種類規定しています。

これらは、「典型契約(有名契約)」と呼ばれ、以下の一覧表のとおりです。

契約の内容 契約の種類
財産の移転 贈与
あわせて読みたい
贈与関連書式集

売買
交換
物の貸し借り 消費貸借
使用貸借
賃貸借
労務の提供 雇用
請負
委任
その他 寄託
組合
終身定期金
和解
贈与

贈与契約とは、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思表示をし、相手方がこれを受諾することで成立する契約です(民法549条)。

「あげる」・「もらう」というシンプルな合意で成立しますが、無償であるため、売買などに比べると贈与者の責任は軽く設定されています。

「書面によらない贈与」は、実際に履行(引き渡しなど)が終わるまでは、各当事者がいつでも撤回できます(民法550条)。

 

売買

売買契約は、売主が特定の財産権を買主に移転することを約束し、買主がその対価として代金を支払うことを約束する契約です(民法555条)。

数ある契約の中でも基本的な契約類型であり、他の有償契約(対価が発生する契約)にも売買の規定が準用されることが多くあります。

売買の際に手付金の授受がある場合、相手方が履行に着手するまでは、買主は手付放棄、売主は倍額償還によって契約を解除できる権利があることも、不動産売買等では欠かせない知識です。

 

交換

交換契約とは、当事者が互いに金銭以外の財産権を移転し合うことを約束する契約です(民法586条)。

いわゆる「物々交換」がこれに当たります。

対価として金銭を支払う「売買」とは、支払われる対象が「物や権利」であるという点で異なります。

実務上、交換契約そのものが単独で結ばれるケースは稀ですが、土地の境界線を整理するために互いの土地の一部を交換する「交換分合」や、会社同士での「株式交換」などが挙げられます。

 

消費貸借

消費貸借契約とは、借主が貸主から金銭その他の物を受け取り、後日これと同種・同品質・同数量の物を返還することを約束する契約です(民法587条)。

特徴として、借りた物そのものを返すのではなく、一度消費して「同じ価値の別の物」を返す点にあります。

金融機関からの借金(金銭消費貸借)は、消費貸借の代表例です。

利息を付ける場合は特約が必要であり、利息制限法などの強行法規による上限規制を受けることになります。

ビジネスでの資金調達から個人間の貸し借りまで、非常に厳格な返還義務が伴う契約です。

 

使用貸借

使用貸借契約とは、貸主が物を借主に引き渡し、借主がそれを「無償」で使用した後に、契約終了時にその物自体を返還することを約束する契約です(民法593条)。

「無償」である点が賃貸借と異なり、「借りた物そのものを返す」点が消費貸借と異なります。

親が子に土地を無料で貸して家を建てさせる、あるいは友人に車を数日間無料で貸すといった、親密な関係間で行われるのが一般的です。

無償であるため貸主の権利が強く守られており、返還時期を定めなかった場合は、貸主は借主が使用収益を終えた時などに返還を請求できます。

また、借主が死亡した場合には、原則として契約が終了する(相続されない)ことも、賃貸借との大きな違いとして覚えておくべきポイントです。

 

賃貸借

賃貸借契約とは、賃貸人が相手方に物の使用・収益をさせることを約束し、賃借人がこれに対して「賃料」を支払うことを約束する契約です(民法601条)。

アパートの賃貸やレンタカー、オフィスのリースなどがこれに当たります。

「有償(有料)」であることが、前述の使用貸借との違いです。

賃貸人は、目的物を使える状態に保つ義務(修繕義務)を負い、賃借人は、賃料を支払う義務と、終了時に原状に回復して返還する義務を負います。

特に不動産の賃貸借については、民法だけでなく「借地借家法」という特別法が適用され、賃借人の居住権を守るために解約が制限されるなど、賃貸人に厳しい規制が課されている点に注意が必要です。

 

雇用

雇用契約とは、労働者が使用者(会社等)に対して労働に従事することを約束し、使用者がその対価として報酬(賃金)を支払うことを約束する契約です(民法623条)。

契約の目的は、仕事の完成ではなく「労務の提供そのもの」にあります。

使用者は労働者に対して指揮命令権を持ちますが、同時に安全配慮義務や残業代の支払い、不当解雇の禁止といった重い責任を負います。

民法に規定はありますが、実務上は「労働基準法」や「労働契約法」といった特別法の適用が優先され、使用者よりも弱い立場である労働者の保護が図られているのが特徴です。

 

請負

請負契約とは、当事者の一方(請負人)がある仕事を「完成」させることを約束し、注文者がその仕事の「結果」に対して報酬を支払う契約です(民法632条)。

建物の建築、システム開発、スーツの仕立てなどが典型例です。

雇用契約との違いは、発注者に指揮命令権がなく、請負人が自分の裁量で仕事を遂行する点にあります。

また、委任契約との違いは、単に業務を行うだけでなく「完成」という結果を出さなければ報酬が発生しないのが原則です。

仕事の結果に欠陥があれば、契約不適合責任として修補や損害賠償を求められるため、請負人は結果に対して重い責任を負うことになります。

 

委任

委任契約とは、当事者の一方(委任者)が「法律行為」をすることを相手方に委託し、相手方(受任者)がこれを承諾することで成立する契約です(民法643条)。

弁護士への訴訟依頼などが典型です。

なお、法律行為以外の事務(コンサルティングや医師の診療など)を頼む場合は、「準委任契約」と呼ばれ、委任の規定が準用されます。

受任者は、高度な注意義務である「善管注意義務」を負いますが、請負と異なり、必ずしも「結果の完成」までは保証しません。

基本的には信頼関係に基づく契約であるため、いつでも各当事者が解除できるという柔軟性があります。

 

寄託

寄託契約とは、当事者の一方が相手方のために物を「保管」することを委託し、相手方がこれを承諾することで成立する契約です(民法657条)。

倉庫に荷物を預ける、ホテルのクロークにバッグを預けるといった行為がこれに当たります。

受寄者(預かる側)は、善良な管理者の注意(善管注意義務)を持って保管する義務を負います(無償の場合は自分の物と同じ程度の注意で足ります)。

他人の財産を占有するため、滅失や毀損に対する賠償責任がしばしば問題となります。

 

組合

組合契約とは、複数の当事者が出資をして、共同の事業を営むことを約束する契約です(民法667条)。

法人格(会社など)を持たずに、個人や法人が対等な立場で利益を目的とした活動を行う際に利用されます。

例えば、映画の製作委員会や、建設業界における共同企業体(JV)がこれに該当します。

組合員は出資義務を負うだけでなく、組合の債務について自分の全財産で責任を負う「無限責任」を原則としています。

この点は、出資した額までしか責任を負わない株式会社(有限責任)との大きな違いです。

業務執行は組合員の過半数で決めるのが原則であり、全員が共同経営者として強い結びつきを持つため、脱退や解散についても民法に詳細なルールが定められています。

 

終身定期金

終身定期金契約とは、当事者の一方が、自己や相手方、あるいは第三者が死亡するまでの間、定期的に金銭その他の物を給付することを約束する契約です(民法689条)。

「生きている限り、毎月10万円支払う」といった約束がこれに当たります。

かつては老後の生活保障などを目的として利用されていましたが、現代では公的年金制度や生命保険、私的年金商品が普及したため、個人間でこの契約が結ばれるケースは減少傾向にあります。

 

和解

和解契約とは、当事者が互いに「譲歩」をして、その間に存在する争いをやめることを約束する契約です(民法695条)。

裁判所を通さずに行う「示談」も、法律上はこの和解契約に該当します。

和解が成立すると、それまでの主張や事実に間違いがあったとしても、後から蒸し返すことは原則としてできなくなる強力な効力(確定効)があります。

例えば、事故の損害賠償で一度示談書を交わすと、後から「やはりもっと高額だった」と主張することは極めて困難です。

紛争を早期かつ最終的に解決するための手段として、ビジネスから日常トラブルまで幅広く活用されています。

 

 

ビジネスでよく使う契約の種類

ビジネスでよく使う契約の種類

 

契約更改

「契約更改(こうかい)」とは、「既存の契約を消滅させ、新しい契約を成立させる」ことを指します(民法513条)。

旧契約の内容を単に修正するのではなく、一度リセットして作り直すという手続きです。

プロ野球選手の年俸交渉や契約期間の交渉を連想する方が多いと思いますが、法的には、「契約の更新」に近い運用がなされています。

更改を行うと旧契約に紐付いていた担保や保証も原則として消滅してしまうため、一般的な企業間取引では、安易な更改よりも「変更契約」や「更新」という形をとるのが主流です。

 

業務委託契約

業務委託契約は、自社の業務を外部の企業や個人(フリーランス)に任せる際に締結される、契約のことです。

この契約の特徴は、受託者が委託者の直接的な指揮命令を受けず、自らの裁量で業務を遂行する「対等な立場」である点です。

業務委託契約は、典型契約のうち「請負」または「(準)委任」に分類されるのが一般的です。

「成果物の完成」を目的とするなら請負、「一定の事務処理」を目的とするなら準委任となります。

雇用契約とは異なり労働基準法などの労働法が適用されないため、受託者の自己管理能力が問われる一方で、委託側にとっては柔軟なリソース活用が可能になるというメリットがあります。

 

秘密保持契約

「秘密保持契約(NDA)」は、取引の検討段階やプロジェクト開始前に、自社のノウハウや顧客情報が外部に漏れるのを防ぐために締結される契約です。

この契約のメリットは、万が一情報が流出した際に「契約違反(債務不履行)」として損害賠償請求や差し止め請求ができるようになる点です。

法律による保護よりも広い範囲を「秘密」として指定できるため、技術提携やM&A、新規事業の立ち上げなど、重要情報を扱う場面では欠かせないステップとなります。

情報は「一度漏れたら取り返しがつかない」ため、必ず開示前に締結するのがポイントとなります。

 

随意契約

「随意契約」とは、主に国や地方公共団体などの公共機関が、競争入札を行わずに特定の事業者を選んで直接締結する方式です。

公共機関の発注は、透明性を確保するために「一般競争入札」が原則ですが、緊急時や特筆すべき技術を持つ企業が1社しかない場合などに例外として認められます。

この方式のメリットは、入札の手続きを省略できるため、契約締結までが非常にスピーディである点です。

一方で、特定の企業との癒着を招く恐れがあるため、選定プロセスには厳格な客観性が求められます。

独自のノウハウや実績を持つ企業にとっては、公共機関から直接指名を受ける形となるため、信頼性の証とも言える契約形態です。

 

 

契約書について

契約の成立に契約書は原則必要ではない

民法では、一方が内容を提示して申し込み、相手がそれを承諾した時点で契約が成立すると定めています。

これを「契約自由の原則」と呼び、法的には口約束だけでも契約は有効です。

 

契約書が必要となるもの

原則として契約書は不要ですが、例外的に法律で書面化が義務付けられている「要式契約」が存在します。

例えば、保証契約や建設工事請負契約、事業用定期借地権設定契約、貸金業者の金銭消費貸借契約などは、書面による契約が法律で義務付けられています。

 

契約書を作成する意味

契約書を作成する意味は、将来の紛争を防ぐことにあります。

口頭のみでは時間が経つと「言った・言わない」の争いになりがちですが、書面があれば合意内容を客観的に証明できます。

また、トラブル発生時の解決ルールをあらかじめ決めておくことで、無用な対立を避け、取引をスムーズに進めるガイドラインとしての役割も果たします。

 

契約書の収入印紙について

紙の契約書を作成する場合、その内容が印紙税法で定められた「課税文書」に該当すれば、収入印紙を貼る義務が生じます。

不動産売買や金銭の貸借(1号文書)、工事請負(2号文書)、継続的な取引の基本契約(7号文書)などが対象です。

印紙額は契約金額によって異なりますが、電子契約の場合は紙の文書を発行しないため、印紙税はかかりません。

 

契約書に印鑑は必要?

法的には、署名(自筆のサイン)があれば印鑑がなくても契約の効力に影響はありません。

しかし、ビジネス慣習として「記名押印」が一般的です。

印鑑を押すことで、「本人の意思に基づいて作成された」という事実をより強力に推定させます。

 

契約書に契印や割印は必要?

複数ページにわたる契約書や、同じものを2部作る場合には、不正を防ぐための押印が推奨されます。

「契印(けいいん)」とは、ページの継ぎ目に押す印です。

ページの抜き取りや差し替えを防ぎ、ひと続きの文書であることを証明します。

「割印(わりいん)」とは、2冊の契約書を少しずらして重ね、両方にまたがるように押す印です。

それらが同一内容の対になる文書であることを証明します。

どちらも法律上の必須要件ではありませんが、改ざん防止というセキュリティの観点から、実務では欠かせないプロセスとなっています。

 

 

契約の注意点

弁護士に相談する

契約を交わす際には、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

インターネット上の雛形や書式集は便利ですが、それらはあくまで一般的な内容であり、個別の取引における力関係や特殊な事情までは反映されていません。

自社の状況にそぐわない条項をそのまま使用すると、将来的に思わぬ不利益を被るリスクがあります。

弁護士に依頼するメリットは、潜在的な法的リスクを事前に回避できる点です。

プロの視点から条項を精査することで、曖昧な表現による解釈の不一致を防ぎ、トラブルを未然に回避できます。

また、相手方から提示された契約書のレビュー(内容チェック)を依頼すれば、自社に不利な条件を修正し、有利な構成にするための戦略的な助言が得られます。

さらに、万が一トラブルが発生した際も、契約の経緯を把握している弁護士がいれば迅速な対応が可能です。

特に複雑な権利関係が絡む場合や、日常的に多くの契約が発生する場合には、信頼できる弁護士との顧問契約を検討してください。

業界の慣例や自社の内情を深く理解したパートナーがいれば、より精度の高いアドバイスを受けることができ、企業の安定した経営基盤を築くことに直結します。

 

 

契約についてのQ&A

契約社員とは何ですか?

契約社員とは、働く期間があらかじめ決まっている労働者のことで、法律上は「有期労働契約」と呼ばれます。

定年まで働くことが前提の正社員とは異なり、契約期間(原則3年以内)が終了した時点で労働契約が切れるのが最大の特徴です。

ただし、双方が合意すれば契約の更新が可能で、通算5年を超えて勤務した場合には、期間の定めのない「無期雇用」への転換を申し込む権利が得られます。

企業にとっては、専門スキルの活用や雇用調整がしやすいメリットがある一方、労働者にとっては正社員に比べて昇進や福利厚生などの待遇面に差が生じやすいという側面もあります。

 

 

まとめ

契約とは、当事者間の意思表示の合致(申込みと承諾)によって成立する、法的拘束力を伴う約束です。

当事者間に契約が成立すると当事者には「権利(債権)」と「義務(債務)」が発生し、守られない場合は法的な強制力や損害賠償の対象となります。

民法には「契約自由の原則」があり、内容や方式は基本的に自由ですが、公序良俗に反するものや一部の要式契約には例外があります。

実務ではトラブル防止のため、自社のビジネスに対応した契約書(業務委託契約書やNDAなど)の作成が不可欠です。

書面化により、合意内容の客観的証明が可能となり、円滑な取引とリスク回避が実現します。

契約書を作成する際には、法律の専門家である弁護士に相談すれば、適切なリーガルチェックにより、トラブルを未然に防止することができます。

デイライトでは、企業法務に注力する弁護士が企業法務部に所属するチームで、多くの会社の顧問弁護士、相談対応、アドバイスを行っております。契約に関するご相談、契約書の作成、リーガルチェック、トラブルのご相談など、お気軽にお問い合わせください。

あわせて読みたい
ご相談の流れ

 

 

「ガバナンス」についてよくある相談

企業の方のご相談

初回相談60分無料


0120-783-645

24時間予約受付
年中無休

オンライン相談・電話相談可