プロフェッショナル型サービスとは
サービス業には様々なビジネスがあります。
例えば、ホテル業、航空輸送、郵便サービス、金融、飲食、オンライン通販などあげるときりがありません。
人材戦略を立てる上では、サービス業と一括りにせず、自社のサービスの特徴を踏まえて検討する必要があります。
サービス業の中で、プロフェッショナル型サービスとは、高度な専門知識やノウハウを提供するビジネスをいいます。
例えば、弁護士、会計士、建築士などのいわゆる士業です。
また、士業以外では、コンサルティングファーム、病院、高級料亭なども含まれます。
なお、弁護士の中には、自分の仕事をサービス業とは考えていない方がおり、異論はあるかもしれませんが、そのような不毛な議論はナンセンスだと考えています。
プロフェッショナル型サービスの特徴
我々弁護士などのプロフェッショナルは、販売時点(依頼を受ける時点)において、サービス内容や提供プロセスが明確に定義されていないという特徴があります。
そのため、顧客の要望や状況に応じつつ、提供する弁護士側に、サービスの設計が委ねられています。
また、規模を有する法律事務所(ロー・ファーム)は、事務所自体にブランド価値がありますが、サービスの良し悪しを決める大きな要因は、弁護士個人の能力です。
そのため、「人財」こそが法律事務所の競争力の源泉と言えるでしょう。
人材マネジメント
一般に、人材マネジメントは大きく、下記に分類されます。
採用 ⇒ 育成 ⇒ 評価 ⇒ 報酬
これを弁護士等のプロフェッショナル人材に当てはめて考えてみます。
①採用
プロフェッショナル人材の採用における特徴は、「人財の厳選」です。
ある程度の規模の法律事務所や企業でも、プロフェッショナル型サービスでは、採用こそが最重要課題となります。
スターバックス・コーヒーを創業した、シュルツは、「どうして笑顔が素敵なスタッフを育成できるのか?」という質問に対して、次のように答えたそうです。
「育成していない。」「笑顔が素敵な人しか採用しない。」
スターバックスは、プロフェッショナル型サービス業には分類されませんが、このエピソードは採用の大切さを物語っています。
プロフェッショナル型サービスでは、個人の力量が採用時に完全に見抜けません。
そのため、優秀な成績や学歴がある人材を採用し、育成に時間やコストをかけても、プロフェッショナルに育ってくれるかわかりません。
結局は、人財そのもののポテンシャルに依拠しているため、採用の成功が極めて重要となります。
プロフェッショナル型サービス業の契約形態については、業務委託契約が一般的であり、一部、雇用契約の形態が見られます。
一長一短がありますが、プロフェッショナル人材であることを重視すれば、業務委託契約が望ましく、サラリーマンに近い職務内容であれば雇用契約が望ましいと考えます。
②育成
いくらポテンシャルが高い人財だとしても、最初からプロフェッショナル・サービスを提供することはできません。
プロフェッショナル型サービスの育成のポイントは、「徒弟制」と「プロ意識の共有」です。
暗黙知の部分が多いため、あまり言葉でとやかく指導するよりは、上司等が「背中を見せ」指導するのが効果的です。
弁護士の場合、主体的に事件を担当させ、フォローすることで、プロフェッショナルとしての自信を早期に備えさせるのが効果的でしょう。
弁護士などの士業の場合、担当事件について細かい処理は指示しない方が良いでしょう。
大切なのは、顧客重視の価値観など、「プロ意識を共有する」ことです。
③評価
弁護士などプロフェッショナル職業の評価は、定性的な評価よりも、定量的な評価を重視すべきです。
定量面よりも定量面、すなわち、結果を重視することで、プロ意識が醸成されます。
また、売上げ、利益、受任件数、終了件数、受任率などの数値での評価を重視すると、納得感が得やすく適切な評価となるでしょう。
④報酬
評価の結果、貢献度が高いプロフェッショナル人材については、昇進、報酬アップなどがあります。
報酬については、固定給だけではなく、貢献度に応じて変動するインセンティブ報酬を付与することがポイントです。
反対に、コンサルティングファームや法律事務所などでは、低パフォーマンスの人材については、外部に出す不文律も見受けられます。
強制的に外部に出す場合は、解雇、又は、業務委託契約の解除となりますが、トラブル防止のために、契約内容(達成基準)などを明記しておくとよいでしょう。
もっとも、プロフェッショナル人材は、もともとプライドが高い人達です。
優秀な後輩が先輩よりも上のポジションに就いたり、高い売上を達成していると、しだいに組織にいづらくなって自ら離脱する傾向があります。