経営戦略を策定するためには、外部分析による市場機会と脅威の発見と、内部分析による自社の強みと弱みの発見が重要です。
ここでは、具体的な外部分析のためのフレームワークについて解説します。
外部分析
外部分析のツールはいくつかありますが、代表的なものとして、マイケル・ポーターの「5つの力」のフレームワークと、ボスコン・コンサルティング・グループのアドバンテージ・マトリクスを紹介します。
5つの力
5つの力とは、①業界内の競合企業、②新規参入の脅威、③代替品の脅威、④売り手の交渉力、⑤買い手の交渉力、をいいます。
このフレームワークは、あらゆるプレーヤーにとっての業界の魅力度を表すとともに、先発企業の優位が持続しやすいか否か、あるいは新規参入者にもチャンスがあるかといった知見を与えてくれるため、個別企業の戦略策定に有益です。
①業界内の競合企業
競争環境をいい、次のような場合は競争が激化します・
・同程度の規模の企業がひしめいている場合
・装置型産業で固定費が多いにもかかわらず供給過剰な場合
・撤退障壁が高い場合(いったん投資した設備を他に転用できない装置型産業など)
他方、寡占化が進んでいれば競争は穏やかになります。
②新規参入の脅威
収益性があたったとしても、新規参入が容易であれば、すぐに参入者が増加するため収益は下がります。参入障壁には、技術、設備投資、法規制など様々な要素があります。
③代替品の脅威
代替品とは、ユーザーのニーズを満たす、新製品(サービス)です。
ある業界の製品が、より費用対効果の高い代替品に押されている場合、収益性は下がります。
例えば、8ミリ映写機にとってかわったビデオカメラなどです。
④売り手の交渉力
売り手とは、例えば、部品や原材料などを仕入れている供給業者です。
売り手が強い交渉力を持つ場合、収益性が低くなります。売り手が強い交渉力を持つのは、売り手側の業界が寡占業界であったり、特許などの独占技術を保っていたりする場合です。
⑤買い手の交渉力
買い手(顧客・ユーザー)の力が強いと、売り手はぎりぎりの値引きを要求され、収益が上がりません。
アドバンテージ・マトリクス
アドバンテージ・マトリクスは、業界により、競合企業間の格差がどのように表れるかという点に着目したものであり、「優位性構築の可能性」の大小と、そのための「競争上の変数」の大小で、世の中の業界を次の4つのタイプに分類したものです。
②特化難事業
③分散型事業
④手詰まり型事業
①規模難事業
このタイプの事業は、規模(シェア)をあげれば優位性を容易に構築できます。
製品が単純で差別化要因が少なく、開発面、生産面、マーケティング面で規模の経済が効く場合にこの傾向が顕著となります。
例えば、鉄鋼業などの素材産業が該当します。
②特化難事業
規模の効果が大きくても、市場のセグメンテーションを通じて異なる戦略をとることが可能な場合がこのタイプとなります。
分野ごとに強いメーカーがいる医薬品業界などです。
自動車業界でも、ドイツのメーカーは、ブルーカラー(フォルクスワーゲン)、ホワイトカラー(アウディ)、富裕層(在来富裕層はベンツ、新興若手はBMW)など、マーケットセグメントをすみわけることで特化しています。
③分散型事業
事実上、大企業がいない業界です。
うどん屋や寿司屋などの飲食業界や零細小売業界が該当します。
このような業界では、店舗経営者の現場での資質が成功のカギを握ることが多く、企業全体としての優位性の確立が困難です。革新的な手法を導入しないと規模の経済が効きにくいという特徴もあります。
④手詰まり型事業
小規模企業がすべて淘汰され、大企業も決定的な優位性を作れなくなった状態です。