顧問弁護士として、日常、多くの企業の方と接していますが、やはり、経営戦略を明確に打ち出している企業と、そうではない企業とでは、前者の方が成長スピードが格段に早いと感じます。
ここでは、「戦略」の意義、その策定方法について、ご紹介します。
戦略の定義
戦略とは、“事業の目的を達成するために、持続的な競争優位性を確立すべく構造化された施策の集合”である。
これは、戦略の意義を教科書的に説明したものです。
確かに、そのとおりではありますが、模範解答すぎて、逆にピンとこないのではないでしょうか。
他方、戦略について、次のような説明があります。
戦略とは“捨てること”
戦略とは“違いをつくること”
これは戦略の本質をついており、教科書的な説明よりはしっくりときます。
しかし、戦略をそれだけで説明できるかというと、そうとはいえない気がします。
戦略とは“アートだ”
しかし、もし、戦略がアートだとすると、戦略を立てるには特殊な才能が必要となり、通常の人間は努力しても意味が無いことになります。
このように、戦略には様々な定義があります。
決して、どれか一つが正しいというわけではありません。ビジネスパーソンは、自らが「これだ!」と思う戦略を定義づければよいと考えます。
大切なことは、企業は、自らが定義付けした戦略について、それを「明確に打ち出すべきである」ということです。企業が保有する経営資源には限りがあり、選択と集中について考えなければなりません。
戦略を策定することにより、何を行い何を行わないか、どのような強みを磨いていくのかが明らかとなります。また、企業の方向性を示すことで、ステークホルダーの共感を得たり、従業員の能力を十分に引き出すことが可能となります。
戦略策定プロセス
優れた戦略とはどのようなものでしょうか。
優れた戦略の要件としては、教科書的には次のようなものがあげられます。
・ 環境変化や競合の動きに対して、自社に最も有利となり、かつ競争優位を持続できる道筋であること
・ 単発の対応ではなく、仕組みとして機能すること
・ 実行可能な施策であること
優れた戦略を策定するためのプロセスは、次のように考えられています。
① 経営理念
企業の存在意義や使命を普遍的な形で表した基本価値をいいます。
② ビジョン
経営理念に基づき、ある時点までに「こうなっていたい」と考える到達点を指します。企業が目指す中期的なイメージを従業員等に向けて示したものです。
③ 環境分析
自社を取り巻く内外の環境を分析します。
外部分析:自社が直接コントロール出来ない社外環境であり、市場における機会や脅威を分析します。
内部分析:自社がコントロール可能なものであり、自社の強み、弱みを分析します。
外部分析の方法はこちらをごらんください。
内部分析の方法はこちらをごらんください。
④ 成功要因(KSF:Key Successes Factor)の抽出
環境分析の結果を踏まえて、当該事業を成功させるための要件を抽出します。
⑤ 戦略オプションの立案
KSFを実現するために何をすべきかの戦略オプションを何通りか考え出します。
⑥ 戦略の選択
戦略オプションから、経営資源、難易度等を踏まえて実行すべき戦略を絞り込みます。
⑦ 戦略の実行
戦略を実行します。
⑧ 戦略のレビュー
戦略はあくまで仮説であり、それが期待された効果を上げたかを確認します。効果を挙げなかったときはその原因を解明し、改善していきます。

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
所属/福岡県弁護士会・九州北部税理士会
保有資格/弁護士・税理士・MBA
専門領域/法人分野:労務問題、ベンチャー法務、海外進出 個人分野:離婚事件
実績紹介/福岡県屈指の弁護士数を誇るデイライト法律事務所の代表弁護士。労働問題を中心に、多くの企業の顧問弁護士としてビジネスのサポートを行なっている。『働き方改革実現の労務管理』「Q&Aユニオン・合同労組への法的対応の実務」など執筆多数。